評価が高まるにつれて、プレッシャーを感じるように
深澤さんが女将を継いだのは26歳の時。「湯河原リトリート」の前身である「料亭小宿ふかざわ」の頃。ちょうど団体客をメインにする宿から、個人をターゲットとしたおもてなしの宿へと方針転換を目指していた時代でした。
そこで、深澤さんがこだわったのは理念経営。従業員の意識を高めることで、接客のレベルを引き上げることを狙いました。紆余曲折はあったものの、結果を見てみればリピート率は30%、部屋稼働率も90%以上と温泉宿として超優良経営を実現。ミシュランガイドにも数回紹介されるほどの温泉宿に成長させました。
一方で、周囲からの評価が高まるにつれて、従業員たちがそれを重荷に感じるようになって行ったそうです。プレッシャーからミスが増えたり、接客がこわばっていくのを感じるようになったのです。
新たな宿の方針を模索する中、深澤さんは個人的な興味から野菜中心の食生活や瞑想といった今でいうマインドフルネス的な活動を取り入れるようになります。
すると不思議。今までの不安が薄れ、気持ちが楽になり、進みたい方向が明確になっていくのを感じました。
その効果に驚いた深澤さん。従業員にも勧めてみたところ、彼らにも同様の変化が起こりました。これまでのこわばりが無くなり、リラックスした状態で仕事に向き合うようになっていったのです。
ミスが減ったという効果だけでなく、従業員に自然な笑顔が戻ったことでお客様からの評価も高まっていきました。
この変化に自信をつけた深澤さん。お客さんにも同様の変化を提供したいと考えた結果、たどり着いたのが「ご縁の杜 Goen no Mori ~人生に変化が起る宿~」への業態転換でした。
マインドフルネス経営の効能
これほどまでの大きな変更にも関わらず、深澤さんも驚くほど従業員たちからの反発は少なかったそうです。むしろ、いよいよかとその変化を楽しんでいた雰囲気すらあったとか。
マインドフルネスとは、心を今に向けること。
その時の感情に素直に耳を傾けることです。
変化を恐れるのではなく、楽しむことができるように変わった従業員たちこそが、まさにマインドフルネスが宿の経営全体に浸透した証拠。屋号にもある通り「人生に変化が起る宿」が実現した瞬間でした。
他にもマインドフルネスが浸透したことを物語るエピソードは推挙にいとまがありません。例えば、雑談の中で、深澤さんがキッチンに立つというアイディアを口にしたことがありました。
現在は「湯河原リトリート」としてヴィーガン料理に変更となっていますが、「料亭小宿ふかざわ」時代は和風懐石が顧客に高く評価されていました。いわば料理にこだわることが、この宿の昔からの暗黙知。そこに一般的な主婦レベルの料理経験しかない深澤さんが立つというのです。
「野菜の声を聞くことで、料理の方法を決めるのが一番。私が野菜の声を聞いて、料理してみようかな」
笑って一蹴されると思いきや、従業員たちは意外な反応を示しました。
「面白そうですね!いいじゃないですか」
しかも賛同するだけでなく、各自がそれぞれアイディアを膨らませ始めたのです。
この案は現在も進行中なので、結果がどうなるかは未定ですが、雑談の中から従業員たちが反応し、主体的にサービスを確立していく姿が印象的だったと深澤さんは語ります。
現在、宿の新しい試みはほぼ全てこのような雑談から生まれます。そのため温泉宿時代に頻繁に行なっていた上意下達式のミーティングは一切行なっていないそうです。
この旅では、マインドフルネスの概念を経営に持ち込むことによって起こる効果や、実際にそれをどのように生かすのかを体感することができます。
社員や部下に主体性を持って欲しい、柔軟性を持って欲しいと嘆く管理職や人事に出かけてもらいたい旅になりました。
旅のスケジュール
【1日目】
時間 | 行程 | 体験内容 |
14:00 | 集合 | ・湯河原リトリートご縁の杜 集合 |
14:05 | オリエンテーション | ・自己紹介(参加した理由/持ち帰りたいこと)
・本日のスケジュール
|
14:30 | 講義 | ・代表の理念講座 |
16:00 | 休憩 | |
17:00 | 夕飯作り | ・夕飯作り体験
・片付け |
20:00 | 賄いご飯 | ・賄いご飯 |
21:00 | 解散 | ・湯河原リトリートご縁の杜 解散 |
※希望者は、1万円(税別)で湯河原リトリートご縁の杜への宿泊が可能です。別途予約が必要です。
【2日目】
時間 | 行程 | 体験内容 |
7:30 | 朝食作り | ・朝食作り体験
・片付け |
9:30 | 接客 | ・チェックアウト業務体験
・接客 |
10:10 | 賄いご飯 | ・賄いご飯
・休憩(施設を楽しむ時間) |
17:00 | 夕食作り | ・夕食作り体験
・片付け |
19:00 | 賄いご飯 | ・賄いご飯
|
20:00 | 旅の振り返り | ・感想と気づき
・今後の自分への活かし方を考える
・ホストからのフィードバック |
21:00 | 解散 | ・湯河原リトリートご縁の杜 解散 |
※2日目の終わりの時間は、希望によって早めに終了することができます。
※2日目の朝は希望により「日の出ツアー」にも参加できます(自由参加・予約制・無料)
その時期の日の出の時間〜約90分のツアー
※スケジュールや学びたいことに合わせて、時間や内容をアレンジすることができます。
※平日開催をご希望の場合は、仕事旅行社までお問い合わせください。