2016年02月05日更新

猫型の“働き方”とは? を考えてみた—プロフェッショナル、猫の流儀【後編】

猫ブームの正体


先週の猫型ワークの話の続きです(前篇はこちら)。「①猫を見てると意外と働いてる? その活動には何らか学べることもありそうだ」→「②そういえば、いまは空前の猫ブームらしいね」→「③なぜ猫人気? ニャンで?」というところまで話は進んでました。

「③ニャンで?」に関してはネット等で色々調べたり、自分でも考えたりしたのですが、ひとつ明快に「コレ!」という理由はわかりません。

とはいえ、この猫ブームは、やはり「超デジタル化(ロボット化)・少子高齢化・格差社会化」、それに伴う「社会構造や価値観の変化」といった21世紀の地殻変動と「どこかでつながっているのでは?」と私はにらんでいます。私だけでなく多くの人がそう感じているようです。

前回ご紹介した読売新聞の記事では、「人間関係のストレスなどが自由に生きる猫への憧れを生み、働き方や家族のあり方の多様化も、猫の気ままな生き方に重なるのでは?」といった識者の分析コメントが載ってました。

それはもちろんのこと、もう少し包括的かつラディカル(根源的)な理由があるようにも思います。

仮説として述べると、世の中は「犬型の価値観・ライフスタイル圧勝」の状態から、ジワジワと「猫型の価値観・ライフスタイルっていいよね!」にシフトしていってるのではないかと考えられます。

この場合の「犬型」「猫型」というのは、あくまで人間が勝手にイメージする“それ”です(人間との比較で言えば「犬」も「猫」に近いですから。あくまで犬をディスってるわけではありません。筆者にも犬な要素はたぶんにあります)。

それはともかく、いま生じているのは、一過性の「猫ブーム」というより、社会全体を巻き込んでの「猫型社会化ムーブメントかも?」ということですね。

「ドラえもん」の予言は的中した


さて、ここからがちょっと重要です。とはいえ少々込み入った内容でもあり、私の講義の場合でも、それまではスマホいじりに熱中しながらも辛うじて話に耳を傾けていた学生たちが、一人また一人とスリープモードにおちていく魔境となります。

なので背景説明など面倒くさい方は、ここからは猫ジャンプして最後の結論チャプター(プロフェッショナル、猫の流儀)のみお目通しいただけましたら。

「いやいや、根拠もないのに猫型社会などと言われましても」というロジックフェチな方は、セミナー等で私がよく使用している以下の図(変わりゆく社会構造と価値観―読み解きの際の参考ワード集)をご覧ください。

いわゆる「20世紀的価値観(社会構造)」から「21世紀的価値観(社会構造)」への変化に関しては、世界中のビジョナリーやリサーチャーらが巧みに分析・キーワード化しています。

ビジネス書の中でも“売れ線”とされる「○○シフト」系、あるいは「生き方変えなきゃ!」系の本で論じられているようなアレやコレですね。

この図は私のほうで、その中でも重要そうなものをピックアップしてアレンジ、自分で言葉を整えたりしながら編集したもの。スマホではやや読みにくいかもしれませんが、左側が20世紀型の価値観、右側が今世紀のそれです。

本来ひと項目ごとに解説が必要ですが、この記事に関してはざっくりと。

この図を眺めると、「働き方」から「ライフスタイル」「経済」「カルチャー」、「組織のあり方」etc——

つまり世の中の動き全体が総じて、どちらかと言うと「犬イメージのそれ」から、どちらかと言うと「猫イメージのそれ」に移り変わりつつあることが見て取れます。

たとえば、犬は「お上(人間/組織)に対して忠実」で「集団行動」も得意。庭に穴を掘って集めたものをがっつり「ストック」しておく習性もあり、与えられたミッションに対しては勇猛に「チャレンジ」します。

ところが猫はそんなことは不得手。一カ所にじっとしておらず、一人でそのへん「ウロウロ」して、腹いっぱい食ったらまたどっかへ行ってしまい、飼い主に忠誠を誓うどころか「自分が飼ってやってるんじゃ!」と言わんばかりの態度を取る。

自由で「フラット」な関係が好きみたいですね。試練にチャレンジするというより、日だまりのような「居心地のよさ(コンフォート)」を好むのはご存知の通り。

ちなみに「20世紀はチャレンジ(挑戦)の時代であり、21世紀はコンフォート(快適)の時代である」というのは数年前、建築家のレム・クールハース氏があるセミナーで語っていて「なるほど!」と思った言葉です。

この方は新国立競技場の揉めごとで日本でも著名になったザハ・ハディド氏の“師匠”にあたる人物です。20世紀の建築フィールドの最前線で、数々のありえない「チャレンジ」に挑んできた巨匠が「21世紀社会のコンフォート化」と「ゆるい化」、つまりこの記事で言うところの「猫型化」を根拠を挙げながらきっぱり言い切ったので、その場に居合わせた私は鳥肌立ちました。

そう考えると、「ドラえもん」という漫画は予言の書としてなかなかスゴい気も。来るべき未来の「猫型化とロボット化」の両方を一体のキャラの中に凝縮させたところが興味深い。

21世紀の人々は“ニャンゲン”を夢見る?


社会構造や価値観がこのように変化するにともない、猫人気になるのは当然とも言えます。おそらくこういった変化を察知して(時代の空気を感じて)、犬的な生き方・働き方は「イケてない」と感じる人も増えているのだと推察されます。

もちろん、働くという行いにおいては生産性が大切ですから、そこは犬猫のバランスが必要とも言えますが、これまでは世の中、犬型ワークに偏りすぎていたのかもしれません。

その反動で、働き方に対しても「猫」を志向するトライアルが出て来る。いま流行りの「複業」「パラレルワーク」というのも「一カ所に定住しない、ある種の猫型ワークなのでは?」あるいは「『好きなことも仕事にすることで、犬猫のバランスを取りたい』という気持ちの表れなのでは?」というふうに私は見ています。

つまりニンゲンは“ワンゲン”から“ニャンゲン”にシフトしたがっているのでは? 猫の飼育頭数の増加(歴史的逆転)は、その事実の裏付けかもしれないと私は読みました。

これは「望む・望まない」「好む・好まない」の話ではなく、社会は猫型化していかざるをえないとも言えます。暮らしや働き方もニャンコ度合いの高いものとなっていくことが予想されます。

この15〜20年来、社会は犬(左)と猫(右)が綱引きを繰り広げてきました。それはトラディショナルな社会の仕組みとインターネットなそれとのバトルとして捉えることもできます。

最初は弱小だった「猫」が、徐々に力をつけ自分のほうへとズルズル綱を引っ張って行っている。昨今「犬型労働」に対して不満の声が大きくなるのも当然の流れかもしれません。暮らしや感性が猫側に寄っているのに、働き方が犬のままだと「もう限界だー!」というふうに感じてしまう人も増えるのだと思われます。

私は経済の専門家ではないので以下はたんなる推察ですが、次々と繰り出される経済政策が、思うほど庶民のお台所に対して効きが弱いのも、このあたりの動きと実は関わっているのかもしれません。犬寄りの社会構造を想定して実施されるため、成長分野である「ネコノミクス」が刺激されにくいのでは? と。

しかし、あまり悠長なことを言ってられないのも現実です。これまで人間が担って来た仕事のある部分は、ロボットに置き換わっていく可能性も大きくなってきました。忠実・勤勉な作業(生産性)という意味では、人間はロボにかないませんから、犬型ワークに期待しすぎるのは不安もないわけではありません。

そこで逆算的に、「猫が得意とする働き方ってなんだろう?」を一度考えてみるのもよいのでは? というのが本稿の趣旨でありました。

「猫型社会」に関しては留意すべきことも何点かあり、大きくは「①猫型はもうかりにくい」「②現在はまだ綱引きの最中である(2020年にかけて犬型への揺り戻しが起きつつある?)」「③最終的には犬と猫は棲み分ける?」「④一度は犬型を経験しといたほうが、猫型ライフもより深く楽しめる」といったポイントが挙げられますが、これはまた別の機会にでも。

プロフェッショナル、猫の流儀


さて、やっと〆です。最後に私が勝手に考えた「The CAT WORK—21世紀のエモい働き方—」5か条の流儀を開陳して終わります。

① シンプルに考える

私が観察した限り、猫は余計なことは考えないしムダなことは実はあまりやりません。「食べたい」「寝たい」「遊びたい」といった欲求を満たすために、「何が最短距離か? 効果的か?」を考え実行します。周囲への過剰な気配りや根回しといった複雑なプロセスは、仕事のパフォーマンスを減じることもあります。「顧客からのオーダー」や「ビジネス上の課題解決」に集中するためには、猫的なシンプル思考は不可欠です。

② スピーディに行動する

とはいえ何もないときはムダにダラダラしていましょう。昼間から寝ててもOKです。ですが、「働いてるフリ」「忙しそうオーラ」は猫社会では通用しません。獲物が接近して来たときなど、動くべきときにはスピードと行動力が命となります。一発で相手をしとめるために、スキルという名の“爪”や“ジャンプ力”は生涯磨き続ける必要があります。ゆるーく思えて意外と能力・成果主義なのが猫の社会です。定年や引退も基本的にはありません。

追記ですが→ひとつひとつの仕事を丁寧にこなす、ということは言うまでもありません。猫が時間をかけて毛繕いをするように。

③ 365日休みはない

猫には学校も試験も査定もなんにもないですが、その替わり休日もありません。早朝も深夜も関係ありません。ネット社会では、仕事がある日にガーッと頑張って土日は休むというライフスタイルより、必要に応じて毎日必要なだけ働き、「行けそう」なときに休むリズムのほうが消耗が少ない気がします(職種にもよりますが)。仕事というものは基本面白いコトですから、休む理由もあまりありません。もしかするとこれは明治時代以前の働き方に近いのかもしれません。

こう書いていくと、なかなか大変なようにも思えますが、「自由に好きを仕事にする」とはそういうことでもあると私は思います。

④ インディペンデントなマインドを持つ(自由を手にする)

組織で働いていても、起業家、フリーランスであっても“自分の存在”を自分で確保しましょう。それは与えられるものではなく、みずから獲得するものと言えます。猫にはスペシャルなご褒美はありませんし、毎日定時に散歩に連れて行ってくれるご主人様もいません。自由ではありつつ、「言われたことをやるのが好き」というタイプの方は、CAT WORKは向いていないかもしれません。

しかし、周囲からは「?」に思える猫のプライドのようなもの、つまりインディペンデントなマインドがないと、ロボット化の激流の中で、その人は「機械で代替可能な存在」と思われかねません。それはストレス溜りそうです。その意味で21世紀において「猫的である」ということは、実は「人間的である」ということなのかもしれません。

上司・同僚・部下などから「コイツは自分勝手で、もうどうしようもねーなー。でもカワイイところもある。やることは一応ちゃんとやってるし、思いがけない発想力で突破できたりもする」みたいに思われるようになると職場での“猫ワーカー化”も成功でしょう。

“飼い主”があまりに非道な場合は、こちらからとっとと見切りをつけるのも、現代ではひとつの手段です。「犬は人につく、猫は家につく」と昔からよく言われますが、猫は気に食わなければ家出することもあります。自分で“家”を作るといったことも、場合によっては必要となるでしょう。ゆえに「その人だからこそ」のスキルは必須です。その際のマインドは「挑戦」というより「勇気」だと思われます。

インディペンデントなマインドは、別のインディペンデントなマインドに対して、それが自分と異なるものであっても理解と共感を示します。猫を見ていると、他者に対する距離の取り方が絶妙にうまい。

シカトしているようでいて、実は思いやっているようにも思える「ズルさ」がある。しかし「多様性」というのは、そういうことなのでは? と私は考えます。「他者」に寛容であるためには、やはりまずは「自分の縄張り」をガッチリ確保する必要があるのかもしれません。

⑤ クリエイトしよう

ロボットが現状ほぼ唯一苦手なことは「クリエイト(価値創造)」です。なぜなら表現はロジックでは説明できない行いだからです。写真や映像を撮る、デザインする、絵を描く、踊る、音を奏でる、文章を書く、面白いトークをするetc——仕事でも趣味でも、それが好きな人はすでに強みを持っていると思います。スポーツや事業創りも大きな意味ではクリエイトです。

先にも書きましたが、これまで多くの表現者たち、仕事のプロフェッショナルたちが猫の面白さ、不思議さにインスパイアされ、猫に関する名言を多く遺してきました。ネットで拾って来たいくつかをご紹介しましょう。

★芸術家は猫を愛し、兵士は犬を愛する。(デズモンド・モリス/動物学者)

★惨めさから抜け出す慰めは2つある。音楽とネコだ。(アルベルト・シュバイツァー/医学博士)

★私は多くの哲学者達、多くの猫達に学びました。猫達の叡智の方が比べ物にならないほど上でした
(イポリット・テーヌ /批評家)

★食いたければ食い、寝たければ寝る、怒るときは一生懸命に怒り、泣く時は絶体絶命に泣く(夏目漱石/作家)

★もし道に迷ったら、一番いいのは猫についていくことだ。猫は道に迷わない(チャールズ・M・シュルツ/スヌーピーの原作者)

文:河尻亨一(銀河ライター/東北芸工大客員教授/仕事旅行社キュレーター)
絵:ぼんち(ペーパードライバー)
読みもの&流行りもの: 2016年02月05日更新

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