2019年08月19日更新

「ウケる」は最強のビジネススキル!? 元お笑い芸人・中北朋宏さんに聞く

今、”笑い”を学ぶ研修を行う一般企業が増えているのをご存知でしたか?その研修の名は『コメディケーション』。お笑いのメカニズムを活用して組織のコミュニケーション課題の解決を目指す企業研修で、全国200社以上で実施されています。『コメディケーション』のエッセンスをストーリー形式でまとめたのが、2019年7月に発売された書籍『「ウケる」は最強のビジネススキルである。』(日本経済新聞出版社)。

コメディケーションの研修講師であり著者でもある中北朋宏さんは、6年間の芸人活動ののちに人事コンサルティングの会社でナンバーワン営業となり、自分の会社を立ち上げたという珍しい経歴の持ち主です。中北さんによると、お笑いのスキルは誰もが筋トレのように訓練し、身につけることができるそう。本当に誰でも面白くなれるの? 著者の中北さんを直撃しました。



主人公はかつての自分。マナーにとらわれ仕事でスベる

ー元お笑い芸人の中北朋宏さん初の著書『「ウケる」は最強のビジネススキルである。』が3刷達成と好調です。出版のきっかけは何だったのでしょうか?

僕は浅井企画という会社で6年間お笑い芸人をしていたのですが、組んでいたコンビが解散してしまって。就職しなければならない状況になり、人事コンサル会社に入りました。27歳のときです。

新卒で入社していれば5年目の年なのに、僕は27歳にしてビジネス経験はゼロ。スーツなんてコントでしか着たことありませんでしたからね。そこで、一般的なマナーから、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、交渉術などのあらゆるビジネススキルを必死に学び始めました。

ところが、その学んだことを使おうとすると、どうしてもギクシャクしてしまう。借りた言葉になってしまうんです。当時僕は営業だったのですが、そんなチグハグな内面をお客さんにも見透かされていたのか、思うように成果は出ませんでした。

そこで考えたのは、「人に言われたことをその通りにやるのではなく、自分の経験を活かして成果を出すことはできないか?」ということでした。

「こういう言葉が刺さるな」とか、「フリとオチの法則が当てはめられる」とか。お笑い芸人の発想で考えたことを実践してみると、自分でもびっくりするぐらい成果が出始め、最終的にはトップセールスになりました。この経験から、元お笑い芸人の僕だから伝えられるビジネススキルがあるのではないか?と思ったことが執筆のきっかけです。

ーこの本には深田くんという冴えない若手社員が登場します。学校では人を笑わせる人気者だったのに、会社では成果が出ず思考停止状態…。深田君には、ご自身のキャラクターを重ねたのでしょうか?

そうです。主人公の深田くんは僕がモデルです。ただ、一応言わせてもらうと、深田くんは会社でかなりすべってますけど、僕はもうちょっとウケてましたからね(笑)。

深田くんは、営業先の相手の名刺の肩書きを見て、ガチガチに固まってしまっていますよね。僕もそういうところがありました。お客様に会うときでも、自分らしくしようというよりは、「ビジネスマンらしくしないと」と思い込んでいたんです。型にはまったやり方にとらわれていて、自分なりの良さが発揮できていませんでした。



ー本を読んでいると、深田君が笑いのスキルを身につけながら、仕事の悩みをブレイクスルーしていく様子はとても読み応えがありました。ご自身もそのような経験があったのでしょうか?

たくさんありましたよ。

最初のきっかけは、ある日、二日酔いの状態でお客様のところに訪問に行ったときのことです。そのとき僕は普段より少しラフな感じになってしまったんですね。まだちょっと酔っていたので(笑)。でもそのおかげで、普段は遠慮して聞かないようなことも、臆せず突っ込んだりして。

するとお客様との関係性がよくなって、最終的に受注できたんです。そういった体験を重ねるにつれ、世間一般で言われているビジネスマン像っていうのは、自分の目指す姿ではないんじゃないかな?と思い始めました。「相手を不快にしないために、マナーを守らないといけない」ということを教わっていたのですが、そうじゃないんじゃないかと。

本当に大事なのは、「もう一度自分に会いたい」と思ってもらうこと。かたくなにマナーを守りすぎて、相手との距離が開いてしまっては本末転倒じゃないですか?

それに気づいてからは、例えば打ち合わせでは「〜様」ではなく「〜さん」と呼ぶようにしたり、自分から誘って飲みに行くようにしました。今まで踏み込めなかったお客さんのふところにまで踏み込めるようになったんです。その中で、自分のお笑いの経験から得た学びが、互いの距離をグッと縮めることを身をもって感じました。

ー笑いのスキルを使うことで「ビジネスで相手の懐に飛び込めない」という悩みをクリアすることができたのですね。かつての中北さんのように、取引先との関係などで悩みを持つ方は多い気がします。

多いですね。特に若手の方は「社会人たるもの、こうあるべき」という思い込みを持ってしまいがちです。しっかりしないといけない、ミスを侵してはいけない、人に頼ってはいけない、失礼があってはいけない、とか。それは上司や先輩から刷り込まれるものもあれば、自分で勝手に作り上げてしまう場合もあると思います。

でも、その呪縛から逃れられないのはもったいないですね。例えばお客様に質問するときも、「同じ質問をしたら怒られる」という感覚があって聞けなかったり。本当はそんなことないんですよ。仲が良ければ大丈夫なんですから。ビジネスで一番大切なのは、いかに信頼関係を築くかということなんです。そのためには”笑い”のスキルが役立つことを、僕は伝えたいんです。



本の中で特に注目したいのは、「すべらない話の構造」として紹介されている「フリ・オチ」の法則(上図)。「枕詞」「ディテール(フリ)」「オチ」「2度目のオチ」という4つのステップにエピソードを詰め合わせれば、笑いを倍増させられるそう。さらに、「フリ」から「ボケ」を考えるためのトレーニングも収録されており、内容はかなり実践的。中北さんは、ビジネスで必要なのは「自分からどのようなフリ(=共通認識)が出ているかを知ること」と言います。


笑いは筋トレと同じ。PDCAで改善できる

ー少し意地悪な質問かもしれませんが…。本当に、誰でも練習すれば面白くなるんでしょうか?

なりますよ。笑いは筋トレと同じです。PDCAを繰り返すことで必ず伸びます。

ーでも、お笑い芸人になれる訳ではないですよね?(笑)

この本に書いてあることを実践すれば面白くはなれますけど、芸能界で売れるわけではないですね。事実、僕が売れてないですから(笑)。テレビで見るような芸人さんたちは、トップオブトップ、つまり天才なんです。サッカーも練習すれば上手くなりますけど、普通の人は本田圭佑にはなれないですよね? それと同じです。ビジネスの現場で役立つレベルの面白さならば、誰もが練習で身につけることができます。

ー今ビジネスの現場で「面白さ」を磨いている人はほとんどいないと思うので、少しの努力で差をつけられそうですね。

その通りです。ただ、面白くなりにくい人はいます。それは、自己認知ができていない人。自分から出ている無意識のフリ(=共通認識)を理解していない人です。自分は周りの人からどう思われているかを正確に把握していないと、笑いを生み出すことはできません。この必要性に気づいていない人はものすごく多いんです。

何も、自分が生まれ持ったフリだけで勝負する必要はありません。フリは自分で作ってしまえばいいんです。いわゆる自己プロデュースですね。なぜその服を着ていて、なぜそのメガネをかけていて、なぜその髪型をしているんですか?という質問に、答えることができるかどうか。自己プロデュースをするときに大切なのは、「誰に、どう思って欲しいのか?」をはっきりと決めることです。

そして自分の演出が自分の思い通りになっているかを知るには、周りの人に聞いてみることです。多少の勇気はいるかもしれませんが、訪問に同行してくれる先輩がいれば、帰り際に聞いてみてもいいですし。普段聞きづらければ飲み会の席でもいいです。フィードバックを受けて、改善する。PDCAを回して自分のフリを調整することで、”ウケる”スキルは確実に向上していきますよ。



ー今後の中北さんのビジョンについて教えてください!

「世の中を今よりも面白おかしくしたい」。僕はいつもそう考えています。研修講師をしていて思うことですが、想像以上にたくさんの人がビジネスでのコミュニケーションに課題を感じています。笑いのスキルを身につけた人が増えれば、職場の雰囲気はよくなるし、仕事を楽しいと感じる人も増える。そして生産性が上がり、日本全体の競争力が向上する。僕はそう信じています。この本や僕の研修を通じて、そのことに一人でも多くの人が気づいてくれたら嬉しいです。

それから、僕はお笑い芸人を辞めた人の転職をサポートする仕事もしているのですが、芸人という仕事がちゃんと職業として認められるような世の中にしたいと思っています。彼らはコミュニケーションの達人です。最強のビジネススキルを持っているんです。夢を諦めた後の彼らが、きちんと受け入れてもらえる社会を作りたい。これは、僕の一つの使命だと考えています。

■中北朋宏さん プロフィール

1984年生まれ。NSC東京・吉本総合芸能学院に入学し、浅井企画へ転籍する。年間約100舞台を経験した。6年間の芸人生活後、株式会社シェイクに転職。5年間人事コンサルティング業務、研修講師に携わり、500社以上の人事・経営者に会う。新商品の販売実績では2年連続MVP、中小企業コンサルティング実績はNO.1を獲得。その後、株式会社Huber.にて人事責任者を経てコンコードエグゼクティブグループに出資を受けて、2018年株式会社俺を設立。

Twitter:@CEO10941147
日経電子版 NIKKEI STYLE連載『お笑い芸人に学ぶ「愛され対話術」』:
https://style.nikkei.com/career/DF250920184402

書籍『「ウケる」は最強のビジネススキルである。』Amazon













(取材・文:一本麻衣)
ロングインタビュー: 2019年08月19日更新

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