現役モデルであり、自身の敏感肌と向き合うことで新しい概念のスキンケアアイテム"Neut-soap"(ニュートソープ)を開発した手島荘子さん。
『PLANT neut (プラントニュート)』というブランドを立ち上げ、これまで10年以上をかけて"Neut-soap"をより理想のアイテムにすべく、日々自らの手で制作と改良を続けています。
お話を聞いていて驚いたのは、透明感のある「肌」に対する荘子さんのあくなき探究心。"Neut-soap"はいかに改良されていったのか? 荘子さんの仕事にかける思いとは?
前編に続き、彼女のシゴト道をたどってみましょう。
前編はコチラ→
モデルと研究者の二つの顔を持つ手島荘子さん。スキンケアアイテム「Neut-soap」は敏感肌との対話から生まれた【わたしのシゴト道】
美味しい潤い「Neut-soap」。真に肌と身体の求める感触を理想として、この世にないからこそ作る
荘子さんの”Neut-soap"は、肌が弱くクレンジングや化粧水・乳液といった市販の化粧品が使えない人のために作られています。「食べても格別においしい材料を使っている」という製品の製造過程は見惚れるほどおいしそう。
「抜群の鮮度と品質、肌馴染みを考慮して自然といきついた素材」とのこと。 "Neut-soap"を持ち帰った友人宅では、愛犬がお風呂から出てこないと思ったら半分食べてしまっていたというエピソードも。
現在主役となる原料:RAVIDA(ラヴィダ)というシチリアの最高級エキストラヴァージンオリーブオイルも、他とは一線をひく鮮度・ポリフェノールの豊かさと伝統ある有機栽培が特徴で、もとは「とても良いオリーブオイルを仕入れたよ」と頂いたものでした。
「美味しいから食べて。石鹸にはしないでよ!(笑)」と渡されたものを、荘子さんはしっかり"Neut-soap"に使いました。そこから生まれたのが代表作の "RAVIDA Series" です。「極上のオリーブオイルも食べたら一瞬ですが、"Neut-soap" にしたらもっと長く使えるでしょう」とにっこり。
「食材を丸ごといただくことで心身のバランスが保たれるという『一物全体』の考えにも通じます。最初から全てが備わった良い素材そのものを活かせば、きちんと肌にも取り込むことができる、そうneutでは考えます。後から足し引きしても体感として残らない、だから最初から満ちたものを選ぶのです」
「その鮮度を保つために、"neutらしい製法" も確立してゆきました」
"RAVIDA Series”について書かれた文章を
PLANT neutのFacebook からひとつ抜粋して紹介します。
「Neut-soapでいちばん材料種類の多いRAVIDA-29++++ それでも(材料は)たったこれだけ。配合率は秘密。これらを低温で鹸化反応させ約1.5ヶ月かけて仕上げます。質の良い原料を使い、丁寧に時間と手間をかけて作れば、安定剤や保存料・香料など何ら必要ない。
それだけでなく、この上なく新鮮で贅沢な潤い成分が豊かに生まれ、一緒に固められるのだから、こんなに肌にとって良いことはない。最初の2~3日間は付きっきりで反応を追い、配合や流し込みのタイミングを図り作業しています。neutでは、中身や働き・概念が市販の石鹸とは全く違う、真に肌と身体の求める感触を理想とし、それに添えるよう努力し創り上げています」
実はどの肌の悩みにも根底には共通の問題? こんなに違うのにどうして?
「最初の2~3日間は付きっきりで反応を追い」の一節からも、どれだけ丁寧に作られているかがうかがい知れます。友人のあいだで話題となり、Neutの存在は口コミで広がってユーザーも増えるにつれ、リクエストを受ける形でアイテムの数も増えていきます。その経緯について荘子さんは次のように話します。
「Neutには早い時期から共感し期待下さるお客様がついてきて下さいました。市販の化粧品では落ち着かない敏感肌の人は、思いのほか多かったのです。
ニキビ肌へは? アンチエイジング向けって作れない? 毛穴の開き・シミが気になるの。美白は? など。それらの要望に、より効果的な配合や製法(メソッド)を考えその都度設計する中で、自身の乾燥アトピーとは違う肌の悩みも知るようになりました。
そしてわかったのが、実はどの悩みにも根底には共通の問題点があり、同じセオリーで解決に向かうこと。
つまり、とりあえず基本のNeut-soapで洗えば改善していくのです。『潤いと馴染んで十分に・また肌に負担なく汚れや刺激を手放し、同時に皮脂より新鮮に・みずみずしく置き換わって洗い上がる』。この基本が出来れば、肌は平穏な呼吸と美しさを取り戻します。」
なぜ、同じセオリーで肌の調子がよくなるのか? 荘子さんによると、
「私の解釈ですが、肌に溜まったストレス、例えば合わない化粧品や乾燥・不要な角質、酸化した過剰皮脂などに対して、人(肌)それぞれの対処をしているのではないかと。でも肌が頑張っても問題の根底は消えないので具合が悪くて、
例えば乾燥に対して、どうにかしなきゃと肌は無理矢理皮脂を出します。刺激に対しても肌は皮脂で守ろうとする。肌は水分ではなく皮脂しか分泌しにくいんです。ところがストレスで出た皮脂は酸化しやすい。酸化した皮脂が自身の肌を刺激して肌バリアを崩してしまうと脂漏性湿疹に。毛穴に詰まるとブラックヘッド、化膿するとニキビ。油脂の酸化はくすみの原因でもあります。
→でも、みずみずしく潤えば、肌は必要以上に皮脂を出す必要がなくなり、分泌量も治まってきます。必要なのは清潔さと水分補給。皮脂を無理に取りすぎるのは逆効果です。
私のような乾燥性の敏感肌の場合、皮脂も十分に出せず乾きにも刺激にも対処しきれず、もうダメとキャパオーバーになってしまう。そんなバリア機能の壊れた状態になると、何を塗っても刺激です。また、潤い不足で代謝能力が落ちたまま放っておいたら、肌はたるんでしまうでしょう。
→ バリア機能を保ちつつ清潔に、何より水分も油分も補うことができて、ぷりっとハリのある状態になれば、表情までも明るくなります。
また、合わない化粧品の刺激や内蔵で処理しきれない老廃物を肌から捨てようとすると、毛穴が広がります。肌は排泄器官の一つ、毛穴からも問題を捨てようとする。毛穴の大きなお肌は実は頑張りやさんなのです。→不快感を残さないケアをしてあげれば、清潔感あるキメの細かな状態に戻れます」
「より肌の要求に沿ったNeut-soapを設計、時間をかけて淘汰され、今はテクスチャーとクオリティ別に3軸に分かれています。油分量を調整したり、得意分野を持つオイルや素材を併せることで、肌に対する役割が特徴づけられていきました。肌の保護膜代わりのホホバオイル、水分補給や美白を司るハチミツや黒糖・オリゴ糖も、古くから各国でスキンケアに使われてきたもの。勿論なるべく生きた素材を活かします」
必要なのは肌にとっての「安心」。シンプルに「太陽と風」の物語のように
Neutをより良いものにしてゆく判断は、自身だけではなくお客様からの意見が基準になると伺いました。ここでお客様とのコミュニケーションが理解を育んだエピソードを少しご紹介しましょう。
「肌の持つ法則性でしょうか? 私が感じることとお客様の感覚はほとんどが合致します。それで自分の感性に確信を持てる。現在neutでは二度洗いを推奨していますが、これもお客様の報告から。二度洗いをすることで、よりツルっとキメ細かな卵肌になれるし、肌が呼吸し、潤いとエネルギーで満たされる実感が上がるのです。言わずと多くのお客様が感覚で二度洗いをされていました(笑)。
お風呂で泡パックをする人も。お肌がざらつく時、私もやっています。また軽いメークも落とせると気がついたのも同様でした。Neutには油分も水分補給成分も含まれるので、理屈からもクレンジングの役割を果しますね。いわゆる石鹸では出来ないこと。
『今回のは良いわ。うまく言えないけど、作る貴方の状態が良いのかしら?』なんて言われたことも。
…?! 、いつもと同じ方法で作ったはず、でもそれは確かに心身満ちていた時。驚いたことに何人もの方が同じことを言います。肌とはどこまで繊細に感じ取れる器官なのか、その可能性に驚きました」
お話をうかがっていて私も驚きました。
荘子さんによれば、スキンケアの基本はあくまで「刺激なく清潔にして潤すこと」。それが肌本来の能力・理想的な新陳代謝を導く鍵なのでしょうか。それこそが肌の透明感?
「Neutの作法は、『太陽と風』のお話の太陽に似ています。反対の力でむりやり "引き剥がす" のではなく、自ら安心して "手放して" いくように。ーー 潤うからこそ手放せる、手放すからこそ潤う。何だか生命としてのエネルギーの流れみたい(笑)」
美しい肌がその人の自信に繋がれば嬉しい
先にも触れたように、荘子さんの肌のために生まれた"Neut-soap"は、彼女の肌の変化に気づいた友人知人が欲しがり、お裾分けしているうちに次第に周囲から愛されるようになりました。
彼女と同じように、生まれ変わる肌と心を感じる人は多かったのです。「毎回ちょうだいって言いにくいから売ってほしい」と言われるようになり、同時期に雑誌で取りあげられたことを機にwebsite*を作り販売を始めました。
そして、同じように繊細な肌を持つ方々に「この気持ちのよさ」や「誰もが本来のきめ細かな美しいお肌になれる」(="neut"ralに)ということを届けていきたいという想いが芽生え、今なお創り続ける原動力になっています。
「もちろん自分の肌のためにも」
そういえば今の荘子さんを見て、アトピーだと気づく人はいませんね。
『PLANT neut (プラントニュート)』の次なる課題は、頭髪用シャンプーと日焼け止め。なによりNeutで洗った後のアディショナルには、多くのリクエストが寄せられているとか。
「Neut-soapで洗っても、添加物だらけのクリームや鉱物油をつけて塞いでは、せっかくの肌呼吸が台無しです。みずみずしく繊細なNeut感覚のまま潤いを足せるようなお化粧水やオイルを、Neutと共に提供できるようにしたいのです。」
また、"Neut-soap"は現在、規模の関係で法的には化粧品ではなく雑貨品としての扱いです。広めていくなら化粧品販売許可を取るべきなのですが、荘子さんは今は、お客様の声を聞きながらつきっきりで丁寧に作れる側を選んでいます。
ウォーキング研修の講師をして面白かったとの話も伺いました。その人の自信に繋げたいという思いが、どこか荘子さんの中にはあるようです。
こうしてどこまでもナチュラルに、そしてしっかりした足取りで自分の道を進んでいる荘子さんは、ほかの仕事においても、不自然な足したり引いたりを行わず、"ニュート"なスタンスで取り組んでいるように見受けられました。彼女の醸し出す透明感もそこから生まれているのでは?
現在は"PLANT neut”を荘子さんの一部として応援してくれる事務所(**modeling office AMA)に出会い、さらに成長していく道半ば。この先も予測不能なシゴトの化学反応の中から、美を届け続けてくれるでしょう。
*PLANT neut (プラント・ニュート) / website:
http://www.plant-neut.com/
Facebook / PLANT neut :
https://www.facebook.com/PLANT-neut-1559559624265552/?ref=profile
Instagram / neut_shoko :
https://www.instagram.com/neut_shoko/
**modeling office AMA :
http://www.officeama.com/shoko.html
Neut-soap取り扱い店 iBeautystore :
https://www.ibeautystore.com/brands/293.plantneut
取材・文:あつこ+銀河ライター
写真:Ken Dozono・Eckepunkt・Shoko
手島荘子_プロフィール:
モデル(荘子)。自身の敏感肌に向き合い生まれた、ケアアイテム 「ニュートソープ」の開発、製作者。
横浜市生まれ、多摩美術大学 デザイン科 グラフィックデザイン専攻 卒業、筑波大学大学院 美術学部 デザイン科 総合造形分野にて修士号。
在学中より`muon`のユニット名でアーティスト活動。生きた微生物や成長する結晶などを用い、生命と非生命の曖昧な境界を表す。ICC (NTT: Inter Communication)などへの執筆・写真提供も。筑波大学では、農業学系の研究室にて真菌類(カビ)の純粋培養を学び、菌類の特徴を美しく際立たせる為の培養方法を研究しアート作品に表す。科学論文への資料提供も。透明な骨二重染色の標本に魅了され、東京大学医学部の技官補佐として解剖と標本作りに携わり思考と技術を学ぶ。
モデルとしての経歴はスカウトをきっかけとした東京コレクションより。ショーから始まり、雑誌、広告、TV CFと仕事の幅を広げる。
仕事が増えると共に幼少からの肌の弱さが顕著になり、試行錯誤の末「ニュートソープ」を開発。雑誌に取りあげられたのを機に「プラントニュート」としてwebでの販売を始める。「汚れと馴染み、あらたな潤いと置き換えるように洗い上がる」という肌に負担の少ない独自のメソッドを築く。本人による小規模生産。
読みもの&流行りもの: 2018年02月23日更新
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