2018年02月09日更新

営業日が少なくても本気のカフェ「ON AND ON」。続けられるペースで慎重に、そして最高のおもてなしを

営業するのは月に3日だけという、おとぎ話のようなカフェが千葉県の浦安にあります。おいしさとおもてなしが評判で予約枠はいつもいっぱい。人気のお店なのに数日しか開かないのはなぜ? 店主夫妻の妻で調理を担当する貴子さんに伺いました。

“僕が作ったテーブルに、君が作った料理を並べたらお店になるじゃん”

夫の靖広さんが、同じ飲食店でのアルバイトで知り合った貴子さんにそんなことを言ったのは、2人がまだ大学生の頃。それ以来、カフェを開くことがのちに結婚する2人の目標になった。それから約10年、2人のカフェはオープンした。でもそのお店が開くのは月に数回だけ。



カフェを始めるにあたって夫妻が考えたこと


店舗兼自宅のある場所は、貴子さんが育った家の跡地。子供のころ、貴子さんに料理を通して、ものを作る姿勢を示したのは、グルメなお父さんだった。

「父は外で食べた料理を家で再現していました。家族が飽きても、納得行くまで同じ料理を作って、レシピを完成させます。お陰で作れないものってないんだ!と知りました」

大学でファッションを専攻した貴子さんは、流行に敏感な友人たちと訪れたカフェに惹かれ、卒業後は料理教室で講師として働きながら、カフェの調理スタッフとしても活動していた。目指すカフェの開業に向けてコツコツと貯金もしていた。

「私の実家のあった場所に、家を建てることになったとき、いつかお店にできるように設計しておけばいいねと話していました。そうしたら主人が、寝かせておく必要はない、お店はすぐに始めようって言い出したんです。そう言われた瞬間は、『えーっ!!』って」

それは貴子さんが年子で第2子を出産してから2年ほどした2015年のはじめだった。第一子の長男はその年の4月から幼稚園に入ったばかり。第二子の長女はママにべったり。子育てに家事。一緒にやろうと言ってくれる夫には本業がある。これにお店の仕事が加わったら?

「主人に『できる』と言われて、私もだんだんそうだ、やろうと。でも、私がいっぱいいっぱいになって、家のことができなくなったら続かない。じゃあ、どのぐらいのペースなら続けられるかな」

月末の週末2日間なら毎月お店が開ける。2人が出したスタートの条件だった。

お店の名前はON AND ON。オノという夫妻の姓と、好きなアーティストのアルバムにちなんでいる。オープンの日は、貴子さんの誕生日、2015年12月29日だ。



利益よりおいしさと信頼とこだわりが大事でしょ?


いよいよオープンの日。幼い子供たちは近くに住む貴子さんの母に預けることになっていた。しかし3歳と2歳の兄妹は、事態がうまく理解できなかったのか大泣き。

「結局、おんぶしながら営業しました。背中に子供を背負って、この先どうなっちゃうんだろうと私もその時ばかりは不安になりました」

しかしそんな心配は今となっては笑い話。子供たちはママのお店がある日を彼らなりに楽しみにするようになったという。

「お店の日はばぁばのお家に行くと理解しているようです。今度のケーキはなぁに?と聞いてくることもあリます」

オープンからしばらくして月に2日の営業に加えて、ケーキ類がメインの営業日を1日追加することもできた。



「僕が作ったテーブル」という言葉の通り、現在は内装業が本業の靖広さんが店内のインテリアを担当し、テーブルも作った。家具の一部は大阪の有名店から取り寄せ、なんと食器は陶芸家に特注するというこだわりぶり。経営という観点でみれば、過剰ともいえる投資は回収できないことも覚悟しているという。

「家具や食器も自分たちの好きなもので最高のおもてなしをしよう。お金を使ってもやりたいことをやり抜く。そこは曲げませんでした」

貴子さんの本気のこだわりは、食材選びにも現れている。自分たちが安心して食べられる食材の料理を味わって欲しいと、野菜は自然栽培の野菜を扱う青果店から、肉と魚とパンは地元浦安の信頼できる店から仕入れている。それぞれのお店が夫妻の気持ちに答えて材料を用意してくれるが、材料費がかさむ。

「務めていたカフェで仕入れを担当していたときは、利益優先で少しでも安い材料を選ぶように言われていましたし、残った料理をざーっとゴミ箱に入れる悲しさも味わいました。今は、旬の食材でメニューを考え、残ったら家族で食べる。赤字にさえならなければOKです」

料理を食べた常連客が魚のおいしさに驚くと、仕入れ先の鮮魚店を紹介することもある。月にたった数回開くお店は地域の盛り上げに一役買っていて、お店を通して利益以外の大切なことが生まれるというわけだ。

仕事というより料理そのものが楽しい


その中でも貴子さんの地元愛を象徴するメニューがのり弁だ。いまでは浦安といえばテーマパークだが、海が埋め立てられるまではのり漁が盛んな土地だったことはあまり知られていない。

「私の幼なじみの実家ものり屋さん。馴染み深いお店なのに、閉めてしまうかもと聞きました。浦安のおいしいのりを知ってもらうためにできることはあるかな、と考えたのがのり弁です」



のり弁はひとつ780円。コンビニエンスストアののり弁の倍の値段だが、貴子さんがコンビニでは買えないのり弁を、とアイデアを凝らしたお弁当は毎回売り切れ。のり弁は冬季限定で、月に1度、販売は地元のお店にお願いしている。

2年間でランチとカフェタイム営業2日から、ケーキの日、のり弁と一歩一歩活動を増やして来た貴子さん。今ではアルバイトスタッフもいる。いずれ一般のお店のように、毎日お店を開ける日がくるのだろうか?

「仕事だ、スイッチオン!というより、私が楽しく作った料理をおいしいと食べてくれるお客さんがいる。その幸せがモチベーションです。ただ、月に数回の営業で、表現できる回数が少ないことにはジレンマを感じていますね。あの料理もこのお菓子も、と、やりたいことはつきません」

時折「趣味でお店をやっているんですよね?」と聞かれることがあり、「本気ですよ」と店主夫妻は答えるという。

「自分でもつまらないと思うほど私って慎重派なんです」とインタビュー中に話してくれた貴子さん。イレギュラーな形での店舗経営を2年も続けていられるのは、慎重なペースで店舗運営を進めていることが大きな理由かもしれない。

記事:野崎さおり

ON AND ON HP:http://www.onandon.work
写真提供:ON AND ON
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