2018年02月21日更新

モデルと研究者の二つの顔を持つ手島荘子さん。スキンケアアイテム「Neut-soap」は敏感肌との対話から生まれた【わたしのシゴト道】

現役モデルであり、自身の敏感肌と向き合うことで新しい概念のスキンケアアイテム"Neut-soap"(ニュートソープ)を開発した手島荘子さん。

『PLANT neut (プラントニュート)』というブランドを立ち上げ、これまで10年以上をかけて"Neut-soap"をより理想のアイテムにすべく、日々自らの手で制作と改良を続けています。

ここまでの道のりがどのようなものだったのかインタビューしました。

モデルの手島荘子さんは"本格肌"の研究者でもある


スカウトされたことがきっかけとなり、東京コレクションでモデルデビューした手島荘子さん。美大卒業後、想像もしなかったモデルの道へと歩きはじめました。しかしその後、モデルを続けるためにはアトピーで幼少から人一倍弱かった肌と”真剣に”向き合わなければならない現実に直面します。

試行錯誤の末いきついたのは、自らの手でスキンケアアイテムを”作る”という解決策。太古からの石鹸作りにヒントを得たそのアイテムは、「汚れと新鮮な潤いを肌に負担なく置き換えて整える」というものでした。自宅のキッチンで研究開発したのです。

荘子さんの"シゴト道"が興味深いのは、最初からモデルになろうとしていたのではないところ。美大を志しながらもバイオテクノロジーの世界に魅せられ、卒業後は大学院に進んで真菌類の研究をしたり、解剖と標本製作の仕事に携わった経験もお持ちです。



純粋培養された菌類は本当に美しい。デザインと科学的思考を学んだ日々


インタビュー当日。出かける直前に彼女が語る YouTube のインタビュー動画をチェックしました。緊張しながらも懸命に話しをするその姿にキラキラと耀く表情と透明なオーラを感じ、思わず着てゆく服を着替えたほど。その「透明感」はどこから来るものなのでしょう? 

お会いした荘子さんは長身でほっそりと絵にかいたような八頭身。職業をあててといわれたら真っ先にモデルさんでしょう、と答えられそうです。

CFなどにも出演されている荘子さん。モデルというと選ばれた人の素敵なシゴト、シンデレラストーリーのようにも映りそうですが、その厳しさはおそらく想像以上。常に自己管理を行い、選ばれ続けなければならない世界です。

荘子さんは美大出身。人前に出る仕事をするとは夢にも思わず、美しいものを作る仕事に携わりたいという思いから、選んだ専攻はグラフィックデザイン科でした。しかし、美大をめざした受験シーズン真只中、図書館で「バイオテクノロジー」の本に魅せられ衝撃を受けます。

「進路の選択をまちがえたかも…」

その気づきに忠実に、4年後、生きた微生物を使った作品で卒業制作を行い、「muon(ミューオン)」のユニット名でアーティスト活動をスタート。生命の法則性を表現する創作を追求すると同時に、バイオテクノロジーの基礎を学びたいとの思いから筑波大大学院のデザイン科に進み、農林学系の研究室で真菌類(カビ)の培養を学び始めます。

「菌のコロニーは混ざるから汚く見えるけれど、たった一種類を無菌から純粋培養すると本当に美しい…。菌糸や胞子をより鮮やかに際立たせて見せるには、どのようなメソッド(=培地の配合や生育の条件)で培養すればいいのか。菌類の特性は興味深く、研究室ではそういった実験に夢中になりました」

「鮮やかなピンクや蛍光のような黄色 … 黄緑のようで紫であり様々な色を含んだ透明感あふれる耀き。それが研ぎすまされた自然界の美しさなのだと思います」

ゆったりとした口調で楽しそうに話します。

自然な色とは、一般的には生成りやグリーンなどを連想しますが、彼女の脳裏にあるのはもっと光り輝く透明感。生命を持つ細胞レベルの耀きでしょうか。荘子さんに感じた「透明感」にも一歩近づいた気がしました。



そしてもう一つ。

荘子さんは真菌類の培養に取り組むのと同時期に、透明で美しい骨二重染色標本にも魅せられます。その作り方を教るためアルバイトで東京大学医学部標本室技官補佐となり、解剖と標本製作・管理に4年間携わりました。

本来は見学者のアテンドや資料整理要員としての採用でしたが、手先の器用さから「小動物の解剖」や「猿の脳と視神経の接続部分の標本製作」という専門的な作業にも携わるようになりました。標本室での仕事を心底楽しみながら、ここで得られたものは大きかったようです。

「何より学んだのは科学的な思考でしょうか。一方で解剖と芸術はどこか通じるものがあるとも感じました。ベテラン先生の解剖は余計な出血もなくただただ美しく芸術的。まるで神業・・・。

私は養老先生が解剖をしていらっしゃるのを見て、まるでナイフとフォークですすっと切るような無駄のない動きに、そのままうっかり口に運んでしまうのではないかという錯覚を感じた記憶があります」

荘子さんが根っからの表現者であり研究者だということが伝わってきます。科学的方法論に基づき、表現を志した研究づけの学生時代。その後偶然モデルというシゴトに出会うのです。

弱点も向かい合えば長所に変わる。敏感な肌との対話のなかで気づいたこと


モデルのシゴトは新鮮でした。コンプレックスだった体形が利点となり、モデルとしての知識は無かったものの「雰囲気をとらえ、印象的に歩くことだけはできていたらしい」といいます。


そんなある日、撮影時の化粧品でかぶれることも多かった彼女は、肌荒れのためにある仕事を途中で降ろされてしまいます。

「もう帰っていいよ」。いただいた仕事を全うできなかった申し訳なさとショックは大きく、そこから肌と対話する長い奮闘期が始まります。

肌との対話期間。良いといわれるスキンケア化粧品、皮膚科に漢方、菜食、あらゆるものを試しては諦めた後、石鹸をオイルから作り出す方法に一筋の可能性を見出し、まだ日本の市場にはなかった石鹸作りの本を米国から取り寄せて勉強します。そして、先人のレシピを"独自の観点"で見つめ直したのです。

それは「すべては美しい肌のために」という、シンプルでありながらも実現へのハードルが高い気づきでした。

「スキンケアの基本は『清潔にして潤すこと』。そう頭では理解しても、例えばアロマテラピーのレシピのように石鹸や化粧水などを市販原料から混ぜ合わせても肌に合わないんです。

安全性から汚れを落とすには石鹸が良いと聞くけれど、実際はカサカサになるだけ。敏感な肌に使っていて心地よく、きめ細かで潤いのある透明肌を導くにはどんなアイテムが必要か?

そんな試行錯誤の中、初めてオリーブオイルから自作した"Neut-soapの原型"で身体を洗い、『お水ってこんなに気持ちいいの?』と驚きました。今までの人生は何だったの? 癒えてゆく肌を通じて、ある感性が目覚めたのでしょうか。これまで体験したことのない開放感でした。

その心地よさはどこから来るのか…、これが『汚れからも刺激からも乾燥からも解放された状態』だったのですね。何より私自身、肌が変わることで意識すら変わってゆきました。常に萎縮していた自分が、ふわっと解けていくような感覚」

「neutは自身との"コミュニケーションツール"」と語る荘子さん。それも独自の視点というもの。

しかし、開発を始めてすぐに、現在のNeut-soapが完成したわけではありません。最初のNeutを作った後も、より理想の状態を目指して荘子さんは肌との対話を続けます。そのモチベーションはどこから湧いてくるのでしょう?

インタビュー中繰り返し耳にしたのは「弱点を長所に変えていきたい」というメッセージ。「無理な努力をしても強く丈夫にはなりません。それより敏感さを美点として昇華させる方が、どれほどに素敵でしょう?」

「肌が弱いことで自分を責めていたとき、その繊細な皮膚の薄さゆえに透明感のある肌になれるという利点に気づかせてくれた人がいました」

自分の薄い肌、解剖経験で接した生きた内臓、これまでの経験がうまくブレンドされたのか、そう気がついた瞬間先人の石鹸レシピを脇に避け、自らのレシピを研究する道がスタートします。

「石鹸の本にはオリーブオイルを使うなら、エキストラヴァージンではなく『ピュアや搾りかすを使いましょう』と書いてあります。でもお肌は内臓の続きでもあります。あの虹のように耀く器官からつながる繊細な肌に与えるのは、新鮮で研ぎすまされたものであるべき。工夫すれば繊細で極上の潤いをお肌に届けられる… 」



まるで胎内回帰… その感触までの道のり。作る⇄感じる⇄考察する、肌の声を聞いて



Neut-soapが現在の姿になるまでの道のりを、荘子さんに伺いました。

「Neut-soapは売るための商品として開発したものではありません。肌感性が育てた結果こそが今の姿です。まず安全な石鹸を作ろうとしたら、予期せず肌に残せる潤いまで出来てしまった。それで、落とす足すを別々に繰り返す従来のスキンケア方程式とも少し勝手が違ってきました。

肌の声を聞くことが大切、そしてそれが主観だけでは進めなかった。自分が良いと感じるものを共に使って下さる方々のフィードバックから確かめ、その気持ちよさの理由を検証し、それを際立たせるにはどうしたら良いか考えて実行。その繰り返し。思えば菌類の研究時と通じる部分があるかもしれません。

日々洗ううちこちらの肌感性も上がります。最初の感動から、よりキメ細かな感触の今のNeut-soapの品質まではおよそ3年間と早く、それから10年以上たち今なおゆっくり進化しています。『感度を高めたい』という欲求は、人間の本能として尽きないのだとか(それが生命の進化?)。 実際、肌の感性が上がると、肌や身体への善し悪しが区別できるようになる感覚もありました。

Neutを初めて使った方から送られて来たお手紙に、その安堵感を『まるで胎内回帰』と表現されていたことがあります。私も、肌と心はとても近い関係にある気がしています」

人の感性とはどこまでも深い。"胎内回帰"とはどんな感覚?

製品の完成度を上げたり、「弱点を長所に変える」には並々ならぬ日々の積み重ねがあるのもまた事実。それは簡単に言葉で言い表せるものではありませんが、試作1作目で得た感触を荘子さんがいかにブラッシュアップしていったのか? 

続編では、開発のエピソードをより深く話していただこうと思います。荘子さんのラジオでのお話に触れたい方は、以下のインタビュー動画もご覧ください。

◆ ラジオ①・Neut-soapの誕生まで



◆ラジオ②・ Neut-soapってどんなもの?



(後編に続く)

PLANT neut (プラント・ニュート) / website:http://www.plant-neut.com/

Facebook / PLANT neut : https://www.facebook.com/PLANT-neut-1559559624265552/?ref=profile

modeling office AMA :http://www.officeama.com/shoko.html

Neut-soap取り扱い店 iBeautystore :https://www.ibeautystore.com/brands/293.plantneut

取材・文:あつこ+銀河ライター
写真:Medaca Crew (Ken Kosaka)・Shoko

手島荘子_プロフィール:

モデル(荘子)。自身の敏感肌に向き合い生まれた、ケアアイテム 「ニュートソープ」の開発、制作者。

横浜市生まれ、多摩美術大学 デザイン科 グラフィックデザイン専攻 卒業、筑波大学大学院 美術学部 デザイン科 総合造形分野にて修士号。

在学中より`muon`のユニット名でアーティスト活動。生きた微生物や成長する結晶などを用い、生命と非生命の曖昧な境界を表す。ICC (NTT: Inter Communication)などへの執筆・写真提供も。筑波大学では、農業学系の研究室にて真菌類(カビ)の純粋培養を学び、菌類の特徴を美しく際立たせる為の培養方法を研究しアート作品に表す。科学論文への資料提供も。透明な骨二重染色の標本に魅了され、東京大学医学部の技官補佐として解剖と標本作りに携わり思考と技術を学ぶ。

モデルとしての経歴はスカウトをきっかけとした東京コレクションより。ショーから始まり、雑誌、広告、TV CFと仕事の幅を広げる。

仕事が増えると共に幼少からの肌の弱さが顕著になり、試行錯誤の末「ニュートソープ」を開発。雑誌に取りあげられたのを機に「プラントニュート」としてwebでの販売を始める。「汚れと馴染み、あらたな潤いと置き換えるように洗い上がる」という肌に負担の少ない独自のメソッドを築く。本人による小規模生産。
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