2018年01月10日更新

株式会社和える代表の矢島里佳さんが語る、「自分的職業」と「社会的職業」の違い-仕事は人びとを幸福にするかvol.6-

仕事を通じて幸せな人生を歩むためのヒントを探る連載企画「仕事は人びとを幸福にできるか」。

第6回となる今回インタビューしたのは、株式会社和える(あえる) 代表取締役、矢島里佳さんだ。矢島さんは、「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年生のときに株式会社和えるを創業。翌年“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の伝統産業の職人の技を活かした、生まれた時から大人になってもずっと使える、引き継げるオリジナル商品を提供している。

そんな矢島さんは、2017年に著書『やりがいから考える 自分らしい働き方』を出版した。「自分らしい働き方」を実現することは、幸福に働くうえで重要になってくるはずだ。では、「自分らしい働き方」はどうしたら実現できるのか。矢島さんに話を聞いた。


自分的職業と社会的職業


--ご著書『やりがいから考える 自分らしい働き方』の中で、「社会的職業と自分的職業」のお話が印象的でした。社会的職業と自分的職業について、詳しく伺ってもいいでしょうか。

矢島:社会的職業は、社会から見た肩書きのことです。それに対して自分的職業は、社会からどう見られているかではなく、自分のなかでぴったりとくる肩書きだと私は考えています。

たとえば、社会的職業が「ジャーナリスト」でも、「その記事を書くことで社会を変革させたい」という人もいる。だとすると、その方の自分的職業は「革命家」かもしれません。ですから、仕事というのは、社会的職業から選ぶのではなく、自分的職業を実現できる、社会的職業を探せば良いと思うのです。

--自分が本当にやりたい仕事と、肩書きとしての仕事は、必ずしも一致しないということですね。

矢島:そうです。むしろ自分が本当にやりたい仕事を実現するためには、別の肩書きを持った方がよい場合もあると考えています。



『やりがいから考える 自分らしい働き方』キノブックス

--矢島さんの、社会的職業と自分的職業は何でしょうか?

矢島:私の社会的職業は「起業家、和えるの代表取締役」ですが、自分的職業は「ジャーナリスト」だと思っています。私にとって、社会的職業が和えるの代表取締役のほうが、より自分らしいジャーナリストになれている感覚があるのです。決して既存のジャーナリストという仕事が合わないという意味ではなく、あくまで私にとって、そのほうが自分らしいジャーナリズムを実現できる、ということです。

--一般的には、自分のやりたい仕事がジャーナリストであれば、ジャーナリストという肩書きの仕事に就こうと考えると思いますが、矢島さんにとってはそうではなかったと。

矢島:私は、ジャーナリストとして何を伝えたいのかと考えたときに、日本の伝統を次世代に伝えたいと思ったのです。そこで、誰に伝えるところから始めると日本の伝統が次世代に自然とつながるのかを考えたときに、今日生まれた赤ちゃんに伝えるところから始めようと思いました。では、赤ちゃんに最も伝わる方法はなにか、ということを考えたときに、言葉で伝えるより「もの」を通して伝えたほうが、より本質的だと考えました。周りを見渡してもそういう仕事をされている企業は見つけられなかったので、“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げたのです。

--あくまでも「伝える」ということが、矢島さんにとってやりたいことだということですね。

矢島さん:そうなのです。例えば、“0から6歳の伝統ブランドaeru”に関しては「小売業ではなく、ジャーナリズムだ」ということは、社員にも伝えていますし、社員もそれを自覚しています。売ることがゴールなのではなく、伝わることがゴールだということ。お客さまに伝わった結果としてお選びいただけるのだと考えています。


--そうした社会的職業と自分的職業という考え方はすごくおもしろいですね。社会的職業を探すよりも、まずは自分的職業が何なのかを考え、その上でその自分的職業が一番実現できる社会的職業を考える。そうすると、それまで見えてこなかった選択肢が見えてくるかもしれません。


自己対話はいつでもできる


--多くの方が悩むのが、「自分らしい働き方がわからない」、言い換えれば「自分的職業がわからない」ということだと思います。自分的職業はどうしたら見つけることができるのでしょうか。

矢島:自己対話が大切だと思います。自分と対話することが得意ではない方は、内なる声に気付くことが難しいので、こうありたいという自分と、現実の自分が乖離してしまいがちです。そのような状態にある方のお話を伺っていると、なんだか心の引っ掛かりを感じ、違和感を覚えるのです。一方で、自己対話ができている方のお話は、心にすっと染み込んでくるのです。

--なるほど。ですが、忙しいと自己対話をする時間がないこともあると思います。矢島さんはいつ自己対話をしているのですか?

矢島:私は意識して自己対話の時間を取りません。「よし、今から自己対話をしよう!」と思って、時計で30分計って…という必要はないのです。たとえば歯を磨いているときや、電車に乗っているとき、お風呂に入っているとき、食事をつくっているとき…1日の中で、頭の中が空いているときはありませんか? 自己対話をするのは、そういった時間。私にとって自己対話は子どもの頃からの習慣になっています。毎日ごはんを食べて寝るのと同じような感覚ですね。

--隙間時間に自己対話をしているのですね。でも、いつも自己対話をしているとストレスになりませんか?

矢島:自己対話という言葉が良くないのかもしれませんね。真面目にやりすぎる必要はなくて、もうちょっと気軽に考えてください。自分の素直な気持ちに耳を傾けるという感覚です。これは、仕事にもとても活きています。何事も、まずは己を知ることから始める必要があるのだと思います。自分の素直な気持ちに耳を傾けて、自分という人間を真に知るととても生きやすくなります。まずは、自分の感情や思いがわからないと、他人や社会のこともわからないですよね。和えるでは入社すると、まずは自分と改めて出会うところからはじまるのです。

自分的職業を見つけるためには、知識ではなく智慧が大切


--なにかわからないことがあったとき、時間をかけて自己対話をするのではなく、インターネットで検索してすぐ答えを見つけようとすることが一般的だと思います。矢島さんはネット検索はしますか?

矢島:ほとんどしませんね。なぜかというと、ネットから得られる情報は「知識」で、体感を伴う「智慧」ではないからです。和えるでは、この「智慧」を大切にしています。特にネットが普及した今、顕著だと思うのですが、知識に頼りすぎてしまい、ついつい智慧を使わなくなってしまうのです。

--知識と智慧の違いはどういうところにあるのでしょう。

矢島:知識は、調べれば得ることができること。なにかわからないことがあったとき、WEBで検索して答えが載っていれば、すぐその場で解決しますよね。それが知識です。でも知識に頼ると、WEBなどに載っていなかったら、わからないままおしまいになってしまいます。

一方智慧は、調べるのではなく、自分で考えることを通して得られること。智慧は行動を伴うので少し時間はかかることもありますが、なにかしらの答えを導き出すことができるのです。

実は、知識で解決ができることは限られているのです。特に、自らの生き方・働き方については、WEBで検索しても正解は載っていません。そういったわからないことに出会ったときに、智慧があると、自分なりに考えて行動して答えを導き出すことができますよね。とはいえ、智慧もすべて0から考える必要はなく、日本には多くの先人の智慧が残っています。先人の智慧を体感で学び、自分なりに考え昇華して、新たな自分なりの智慧に変えていくことができます。いつも「なんで、なんで?」と問い続けることが智慧を鍛えることにつながるのではないでしょうか。

矢島里佳さんのプロフィール

株式会社和える 代表取締役 
1988年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。大学4年時の2011年3月、「日本の伝統を次世代につなぐ」株式会社和えるを創業。日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げ、東京・京都に直営店を出店。その他、日本の伝統を暮らしの中で活かしながら次世代につなぐ様々な事業を展開。

2013年、世界経済フォーラム(ダボス会議)「World Economic Forum - Global Shapers Community」メンバーに選出される。
2015年、第4回 日本政策投資銀行(DBJ)「女性新ビジネスプランコンペティション」にて、女性起業大賞受賞。 
2017年 第2回 APEC「APEC BEST AWARD」にて、APEC best award大賞、Best social impact賞をダブル受賞。

2014年、書籍『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』(早川書房)
2017年、書籍『やりがいから考える 自分らしい働き方』(キノブックス)
その他3冊あり

和えるWEB
オンライン直営店
東京直営店「aeru meguro」
京都直営店「aeru gojo」

インタビューアー・プロフィール

山中康司(やまなか・こうじ)
働きかた編集者。「キャリアの物語をつむぐ」をテーマに、編集・ライティング、イベント企画運営、ファシリテーション、カウンセリングなどを行う。

当連載のバックナンバー
1:夢があったほうが人は幸せ?キャリア教育学者・児美川孝一郎さんに聞いた-仕事は人びとを幸福にするかvol.1-
2:幸福度ランキングは鵜呑みにしない方がいい?青山学院大学経営学部教授亀坂安紀子さんに聞いた-仕事は人びとを幸福にできるかvol.2-
3:働き方改革からすっぽり抜け落ちているものとは?慶應大学前野隆司教授に聞いた-仕事は人びとを幸福にするかvol.3-
4:「幸福を”Be→Have→Do”で考える。」成瀬まゆみさんが語る、働き方に悩んだ時にすべきこと-仕事は人びとを幸福にするかvol.4-5:「より“土くさく”生きたい」髙坂勝さんがそう語る理由とは?-仕事は人びとを幸福にするかvol.5-
読みもの&連載もの: 2018年01月10日更新

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