2017年11月08日更新

未来のモノサシをデザインするスキルー未来予報コラム|10年後、あたらしくできる仕事を見に行くvol.3(曽我浩太郎)

前回までは私たちが出会った数々の起業家やアーティスト、またはその出会いの場であるSXSW<サウス・バイ・サウスウエスト>とXOXO Festivalについてお話しさせていただきました。

★SXSWに集まる未来の予兆ー未来予報コラムvol.1(宮川麻衣子)→https://www.shigoto-ryokou.com/article/detail/303
★ポートランドに学ぶ未来の働き方ー未来予報コラムvol.2(曽我浩太郎)→https://www.shigoto-ryokou.com/article/detail/304

今回は、著書の中には描けなかった、新たなタイプのデザイナーのお話しから、未来の仕事・働き方を考えていきたいと思います。

スマホ見すぎて「やっちまった!もうこんな時間...」という経験ないですか?


人がスマホをチェックする回数は1日150回とも言われ、1回30秒なら1日75分も使うことになります。

洗濯物しなきゃいけないけど / 明日仕事あるけど / ちょっと時間あるから、ついついNetflixやYoutubeを見続けてしまうことはありませんか? 私はしょっちゅうです(笑)。

次の動画がオススメ表示されて数秒経つと自動的に再生されるようになってから、より観る時間は長くなりました。NetflixのCEOは講演の中で「Netflixの最大の競合のうちの一つが”睡眠”である」とも話したそうです。

家のTVやPC、そしてスマートフォンで常日頃映像を連続的に見てしまう人たちは増えています。Youtubeは1日当たりの動画の合計視聴時間が10億時間を超えたと2017年2月27日に発表しました。映像コンテンツでもなくても、写真やテキストを使ったソーシャルメディアも同様です。Instagramは大手メディアbloombergの取材に対し、25歳未満のユーザーは1日32分もinstagramを見ていると答えていました。


アプリ「moment」は、自分がどれくらいスマートフォンを使っているかを可視化してくれる。試してみては?

これは便利で楽しい時間ですが、本当にこのような体験は私たちの生活を豊かにしているのか?と疑問を投げかけるのが、新しいタイプのデザイナー「Tristan Harris(トリスタン・ハリス)」です。彼は来年3月のSXSWでもスピーカーとして登壇が決定しています。

設計のあるべき姿を見直す新職業「デザイン倫理家」の誕生


Tristan氏は、もともとGoogleでDesign Ethicist(デザイン倫理家)として働いていました。現在はTIME WELL SPENT(訳:より良い時間の使い方)という団体を結成し、これからの時代における「時間の使い方」をより良いものにデザインしようと挑戦しています。

彼は自身のTEDの中でこう話しています。
(メールの受信画面やSNSのタイムラインを下にスワイプして更新しながら...)
分かっているのにまた同じことをしてしまいます。私はこんな状況に陥り、メールをチェックし、プルダウンメニューを出して更新し、でも実際60秒後に、またプルダウンメニューを出して更新するんです...。

言ってみれば、私の電話がスロットマシーンのようなものなのです。電話やメール、ニュース配信をチェックする度に、私はスロットマシーンを見るように、何が出るかな? 何が出るかな? と唱えます。(中略)この心理がどう作用するか、何が怒っているのかを私はまさに熟知してるのに、 だからと言ってやめる術がなく、ハマっているだけなのです。(トリスタン・ハリスTEDスピーチ:「注意散漫を防ぐより良い技術」)




ついついメールやTwitterでもタイムラインを下にスワイプして更新をかけ、次に何が出てくるかな? と無駄にチェックしてしまうことがあります。しかし、実際そういう時に「キター!」と、良い情報に出会えることは稀でほとんどが無駄に終わりますよね。あとは投稿し終わった後の反応が気になり、ついついアプリを開いてしまうこともあります。

その確認作業が終わった後に「何やってんだろ...」と気持ちが少しゲンナリすることもしばしばあるという人の意見も時々聞きます。このような無駄な行為は癖となって1日のうち何回も行ってしまいますので、実は生活の中でもけっこうな時間を占めています。おそらく1ヶ月で数十分/数時間は無駄にしていると言えるでしょう

TIME WELL SPENDの調査によると、同じアプリを利用していて「幸せな時間」と「不幸せな時間」をはかると「幸せな時間の2.4倍の時間が不幸せな時間が長い」という結果が出たそうです。



自分で無駄にこのマークを出しておきながら、イライラしちゃうことありますよね。ガラケー時代の「センター問い合わせ」を思い出させます。

Tristan氏は、このような不幸せな時間が多いライフスタイルを作り上げてるデザインには問題があり、「倫理」と「より良いデザインの目標設定」が必要だと話します。

具体的には「サービスを使う時間を増やす」という発想から、「より良い時間の使い方とは何か?」を考えてデザインするようという考え方の切り替えを推奨しています。

WEBサービスを運営する際の目標設定は「WEBサイトの滞在時間」や「生涯を通してサービスに関わる時間」を軸に目標を設定されることが多いです。しかし彼が提唱するより良い目標設定とは、「そのサービスがもたらした幸せな時間」といったように、目標の考えるレベルを一段階上げて考えようというもの。

例えば民泊のWEBサービスならば、泊まった顧客が「良かったなぁ」と思った時間から、そのWEBサービスの利用時間を”引き算”した時間がそれにあたるとTristan氏はおっしゃっています。どんどん便利なWEBサービスが増えると同時に、多くの人が使うようになるからこそ、必要なデザインの倫理 /考え方だと思いました。

「社会に良いこと」から「あなたの未来に良いこと」に未来の企業はシフトする


昨今、日本でも海外でも「社会的に良いことしながら稼ぎを得られる会社」が非常に認められてきています。仕事旅行に興味がある皆さんも、おそらくそういう会社で働いてみたい! という人は多いのではないでしょうか?

Googleが掲げるミッション「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」というのは非常に納得感がありますし、Facebookが新たに掲げた「世界のつながりをより密に」というのも非常に魅力的で人々に勇気を与えてくれます。何よりそこで働くことに対して非常にやりがいとワクワクを感じてしまうのです。

特に若い人の方がそのような目的意識が明確な職場で働きたいという傾向が強いというのはよく聞くことです。これは俗に「Purpose-Driven(パーパス・ドリブン=目的手動) Design」とも呼ばれ、非常にこれからの会社やプロダクト/サービスに求められている思想だとされています。

しかし、私はTristan氏のTEDを見て、もう少し細かい部分まで思想が必要なのだと感じました。

「どう社会に貢献できているか」を越えて、「先々の人々が求めている”より良いライフスタイル”を作るためには?」というお題自体を常に問いながら、サービスに細かく反映する姿勢が数年後には求めれてくると私たちは考えています。


世界中から社会的企業や社会起業家が集まって、Social Goodな未来をどう作れるかを議論するSXSW ECO。昨年まで10月に独自で行われていたが、来年3月のSXSWにあわせて「CITY SUMMIT」として規模を拡大し生まれ変わる。異分野のPurpose Deriven Designの実践者の多くに会うことができる貴重なイベントだ。

未来の仕事を支えていくだろう「予報力」を養おう


「人々が先々求めているもの」を考えるのは難しいです。なぜなら人々が求めているものには、<(無意識に)気づいているもの> と <まだ気づいていないもの>があり、前者は人々を観察して見つけることができますが、後者は自ら未来像を描いて発掘するしかないからです。

未来像を描くには単なる「思いつきのアイデア」では意味がありません。数々のSF作家や映画監督も、科学者や起業家・研究者と話しながら未来の兆候を感じ取って未来にあるであろう出来事を俯瞰し、その時代の空気感から兆候をあぶり出して設定を作った上で、ストーリーを作り上げていきます。

私たちの会社ではこの力を「予報力」と名付け、日々大量の未来のインプットを行い鍛錬しています。そのインプットをもとに、現在の常識を問い直すスキルや未来のフィクションを構想するスキルが、今後必要となってくるでしょう。その「予報力」を掴んでいただく第一歩になるのが、私たちの著書「10年後の働き方」です。


未来予報著『10年後の働き方「こんな仕事、聞いたことない!」からイノベーションの予兆をつかむ』→https://www.amazon.co.jp/dp/4295001929

あらゆる領域の未来の大量インプットから兆しを読み取っていただき、是非皆さんも未来を予報してみてください! 

記事:曽我浩太郎(未来予報)

※未来予報さんも参加するトーク&交流会が開催されます。この記事でも紹介されているSXSWの話だけでなく、世界最大のクリエイティブ祭「カンヌライオンズ」もテーマに。デジタル領域やクリエイティブを仕事とする人たちの未来の働き方を考えます。

詳細・お申し込みはコチラ→【トーク&交流会】カンヌ・ライオンズとサウス・バイ・サウスウエストの"あいだ"を旅するー海外の先端プロジェクトに見る未来

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