2017年10月09日更新

夏目漱石が100年前に語った"自分らしい働き方"の真実ートーク書きおこし『道楽と職業』を読むー

夏目漱石の講演を文字起こしした『道楽と職業』という文章を読んだことありますか?(リンクは「青空文庫」)100年以上前のトークであるにもかかわらず(1911年)、いまに通じる働き方の話がいっぱい。

「好きを仕事に」することの難しさとその大切さも語られていますが、昔の話なのでわかりにくいところも。そこで編集部K口さんが、K尻編集長に質問や疑問を投げかけました。

夏目漱石もガチで考えた。はたして「好き」は仕事になるか?


編集部K口(以下、口):すみません! すみません! 

K尻編集長(以下、尻):なんやの? そんなでっかい声でいきなり謝られても。怒られそうな空気を感じたら「とりあえず謝っとこ!」みたいな?

:いや、謝ってるわけではなくて。あのう…編集部で課題図書になっていた夏目漱石の「道楽と職業」ってエッセイ読んだんですけど…

:どうやった?

:あんまり意味わかりませんでしたっ!

:そうかあ、仕事や働き方を考える上での不朽のテキストやけどね。しかも講演の書き起こしなのでわかりやすいはずなんですけど。じゃ、読んでもしゃーない。向いてないということや。ご苦労さん。無駄仕事やったな。

:いやいやいや! わかったところもあるんです。それと同時に疑問も。その辺ちょっと聞いてみたくて。

:ふーん。ええよ、知ってることなら。

:「道楽」っていうのは遊びですよね? 趣味というか。夏目漱石は自分のためにする面白い仕事が"道楽"で、他人や社会にこき使われる仕事が"職業"だと、なんとなく分けているように感じました。

:大きくはそんな感じかな? で、いまで言う「ブラック」な働き方をするサラリーマンをディスってますね。たとえばこんな感じで。

「いわゆる家業に精を出す感心な人というのは取とりも直なおさず真黒になって働いている一般的の知識の欠乏した人間に過ぎないのだから面白い。露骨に云えば自ら進んで不具になるような人間を世の中では賞めているのです」
(「道楽と職業」青空文庫よりコピペ)


:あー、これってやっぱりディスってるんですね? こんな難しい言葉で…。しかも頑張って働いてる人を「一般的知識の欠乏した人間」と決めつけた上で、それが「面白い」なんて…。それ面白がるところか?

いまなら炎上モノですよ。でも「真っ黒になって働く」とか、当時からあったんですね。ブラックイメージって。

:まあ、これ、実際のトークでは、会場ウケてたと思うよ。「先生、またディスり出したぞ(笑)」みたいな感じで。漱石は結構笑いの好きな人ですよ。『坊ちゃんの時代』 っていう漫画とか読んでもわかるけど。この漫画は『孤独のグルメ』の故・谷口ジローさんが描いてる名作(原作:関川夏央氏)です。

ちなみに『道楽と職業』は『私の個人主義』っていう漱石の有名な講演集に入ってるんだけど、こうやって活字にすると、なんとなくこ難しいこと言ってそうな雰囲気になっちゃう。こういうの読むときは、時代とその場を想像しながら読まないとわかんないんすよね、リアルな空気が。

:でも、ぶっちゃけひねくれてますね(笑)。夏目漱石って性格悪いんですか?

:悪いに決まってるよ、物書きですから。だいたいね、作家とか編集者とか記者とかロクな人間いないっす。

:知ってます!

:いろんな人がいますけどね。当時でも「行き場のない、このオレの心の叫び聞いてくれ!」みたいな暑苦しい系の作家とか、自分の生活赤裸々に書いて明らかに炎上狙ってしょ? タイプの人が人気者だったりしたんだけど、漱石とその弟子たちはちょっと違うのね。やや引いたところから世の中見てて。うん、その頃は「漱石軍団」みたいなのがあったのよ。いまで言うたけし軍団みたいな感じ?

:マジすか? テキトーに言ってません?

:マジすよ。で、「なんでも斜め上から目線で語ろうとする人たち」ということで、"余裕派"と呼ばれたりしておりました。「みんな生活苦しくて大変なこの時期に余裕ぶっこいてんじゃねーよ!」ってことで批判されたりね。

そういえば、今年は夏目漱石生誕150週年ということで色々イベントやってるね。新宿にも「漱石山房記念館」っていう資料館オープンして、近所の酒屋で漱石ビール(早稲田ビール)も売ってるよ。速攻飲んだけど。



文豪も職業的ポジションと心は「フリーランス」?


:あー、そこまだ行けてないんですよね。面白いですか?

:まあ、普通。もともと漱石の家があったところに、キレイ建物作ってたね。仕事場再現したり(冒頭写真)。直筆の手紙がいくつか展示されてて超達筆なんだけど、中身読んだら生活費やギャラの心配とかモロに書いてて吹いた。

:なんと。夏目漱石クラスの人気作家でも、お金の不安があるんですね? 

:そりゃそうっしょ? フリーみたいなもんやもん。一応、新聞社社員とは言っても、東大の先生やめて作家になったわけやから。ようは契約社員みたいなもんで。ところでフリーな働き方と言えば読んだ? 浅生鴨さんの「働かない働き方」シリーズ by 仕事旅行。

:もちろんです! 大ファンです!!

:あれはね、『道楽と職業』の現代版ですね。「働かない働き方」というのは道楽をなんとか職業にしようとしたときの話。ただ、彼は作家だからあれでええねんけど、堅気の人はうかつにマネしちゃダメよ。身を滅ぼしかねない。道楽を・混ぜるな危険・あ、そうかも!

:なんです? それ。突然一句みたいなこと言われましても。

:うまいよねー、作家というのは。自分にしかできないことを「みんなもできるお!」みたいに書くのが。プロの仕事だわ。

:でも、勇気もらえます。

:うんうん。まあいずれにせよ、世の中には「自己本位」の仕事(道楽)と「他人本位」の仕事(職業)があって、他人本位の仕事はようは人や社会にこき使われるわけだから、多少頑張ったところで味気ないのは仕方ない。だから少々のことは我慢せざるをえない。100年前も現代もその根っこはなんら変わってないということが、『道楽と職業』を読むとよくわかります。

そして、せっかく"道楽"として趣味的に始めた仕事も、「ためにする」うちに結局"職業"になってしまうので、やっぱり面白くなくなると。漱石先生はその辺のことも見抜いてました。だって『草枕』って小説でも書いてるやん?

:何をですか?

:冒頭の有名なフレーズ。「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」 って。オレも新橋のサラリーマンの雑踏を歩きながらいつもシミジミそう感じてるよ。つまり、ひと言で言うと、世の中そんなに甘くない! 

以上。講義終わり。もうええよね? 質問は。ほんじゃ仕事に戻る! と見せかけてタバコでも吸いに行こ。

住みにくい人の世を住みやすくするために


:あ、ちょっと待ってください。ワンモア! 『道楽と職業』で、夏目漱石が「最近では世の中に新しい仕事がいっぱい出来すぎて意味わからん!」みたいに嘆いているところがありますよね? 「明治時代からそうだったのかあ」と思ったんですけど。

:意外とちゃんと読んでるやん。

:読んで記事にしないとクビって言うんだもんで…。あと、そんなに職種が増えていたにもかかわらず、理想の仕事に出会えない若者たちがいっぱいいるみたいな話も出てきます。

秀才が夢中に奔走して、汗をダラダラ垂らしながら捜しているにもかかわらず、いわゆる職業というものがあまり無いようです。あまりどころかなかなか無い。今言う通り天下に職業の種類が何百種何千種あるか分らないくらい分布配列されているにかかわらず、どこへでも融通が利くべきはずの秀才が懸命に馳け廻っているにもかかわらず、自分の生命を託すべき職業がなかなか無い。
(『道楽と職業』青空文庫よりコピペ)


これ、なんでなんですかね? 秀才というか意識高い系でさえ自分らしく働けないというのは。

:知らん、そんなこと。もう若者でもないから興味もない。そういうのはオレみたいなその辺のおっさんではなくって、政治家とかに考えてもらい給へ。「希望がなんとか!」みたいに言ってるような人らに。

:えーっ!? ヒントだけでも。

:職業のマッチングサービスなかったんじゃないの? 仕事旅行みたいな。あと、景気悪かったとか。

:投げやり、かつ宣伝狙いのこじつけコメント…。

:いや、実はそうなんすよ。”仕事旅行”っていうのは「職業と道楽」ってことですから。オレたちは漱石先生でさえ悩んだこの問題に、ネット×リアルなサービスでなんとか答えを出そうとしてるのよ。

:ほう。言われてみればそんな気もしてきた。でも、難しいんですね、仕事と趣味の両立って。フワフワしたゆる〜い気持ちでできることではないなと。『道楽と職業』読んでそのへんよくわかりました。

:それで課題図書にしたんやん? でも夏目漱石は、そのハードルというか壁突破するヒントみたいなことも言ってるよ。

:え? ほんとですか!? 全然気づかなかった。教えてください、先生!

:うーん、ネタバレなるからね。あと、自分で発見せんと意味ないっしょ? なんでも人が教えてくれるなんて甘いわな。肝心なことは人に話さない。そういうのがオレの個人主義? あるいは守秘義務ってやつ?

:ですね! いつも一番大事なことはすべてが終わってから言ってます。後出しじゃんけん的な?

:当たり前やん、そんなん。まあ、さっき言った『草枕』の冒頭フレーズの次にも、同じような結論書いてあるけどね。次の課題図書は『草枕』かな? これも「青空文庫」でタダで読めるから試しに読んでみ? ここで「詩人」とか「絵」とか言ってるのは、ようは”クリエイティブ”ってことやね。↓ 

住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。(中略)
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、くつろげて、つかのまの命を、つかのまでも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命がくだる。あらゆる芸術の士は人の世をのどかにし、人の心を豊かにするがゆえに尊い。
(『草枕』青空文庫よりコピペ)


:うーん、アーティストでなくとも人の心をのどかにしたり、豊かにする仕事をしていきたいですね。そういう仕事もあるんでしょうか?

:ないわけでもない。よっしゃ。というわけで宣伝や。編集部では現在、人材募集中。やり方によっては道楽が職業になる! かもしれません。

(仕事旅行社からのお知らせ)
★SOS! 仕事旅行社のコンテンツをつくる"編集職人"募集。ノルマ・出社・空気読みの必要ナシ。もちろん給与はアリ!【業務委託】

記事・写真:銀河ライター
読みもの&連載もの: 2017年10月09日更新

メルマガ登録いただくといち早く更新情報をお伝えします。

メルマガも読む

LINE@はじめました!

友だち追加
このページを気に入ったらいいね!しよう
見たことない仕事、見に行こう。

あわせて読みたい

【仕事旅行社の転職サポート】
まずは職場を体験。じっくり"天職"見つけたいなら「おとなのインターン」へ

Follow Me!


PAGE TOP