知る人ぞ知るカレーの名店、もうやんカレー。玉ねぎや人参、リンゴにバナナなど、8種類の野菜・果物の旨味が濃縮され、仕込みから完成まで約2週間かかるというこだわりのカレーは、1997年に西新宿で第1号店がオープンして以来、多くのカレー好きたちを虜にしてきました。
「シゴト着」を通して気になるあの仕事について知る「シゴト着、シゴト気」、第3回でご紹介するのは、そんな「もうやんカレーのスタッフ」の仕事着です!
熱狂的なファンを持つもうやんカレーの生みの親は、代表の辻智太郎さん(通称もうやん)。ランチ後の渋谷店に訪れた取材班を、もうやんさんはフィーバーのポーズで迎えてくれました。(そもそもなぜカレー屋にミラーボールがあるのかは謎。)
そんなもうやんさんが語る、シゴト着に秘められたこだわりの数々をご覧あれ。
そして、「も」の字に隠された衝撃の真実が明らかに!?
なぜカレー屋でアロハシャツなのか
カレーといえばインド。そんな我々の常識を軽々と超えていくのがもうやんカレーという店です。
見てください。このシゴト着。
ランチ後の片付け中の店員さんに無理を言って、シゴト着をパシャリ。
アロハです。
もうやんフリークにとっては何の違和感もないらしいこの姿。恥ずかしながらもうやん歴が浅い僕などは疑問が拭えません。「なぜカレー屋でアロハ?」って。
でも、決して話題作りのために着ているのではないみたい。アロハにはちゃーんと意味があると、もうやんさんは言います。
「カレー作ってると、はねて服につくでしょ。それが乾いたら結構汚く見えるんですよ。でも、アロハだと汚れが目立たない。ほら、お腹の部分とか汚れてるけど、わからないでしょ。あとは襟がついててハワイでは正装だからユニホームとしてぴったりだし、ポケットあって使いやすく、動きやすいんです」
なるほど、よく見るとアロハにはシミが。でも言われるまで気づかないほど目立たない。なんと、アロハにカレーのシミ隠しの効果があったのです!
衝撃の事実! 「も」には2種類ある
店内の壁に貼られたメニューや、もうやんカレーのウェブページで目を引くのが、味わいのある書体。うまいのか下手なのか、絶妙なラインを攻めるこの字は、聞けばどれも辻さんが「家でA4の紙に筆ペンで書いてる」んだとか。
もうやんカレーのシゴト着で目を引くサロン(前掛け)にも、当然あの味わいのある字で「も」があります。
でも、よーく見てください。何か違和感に気づきませんか?
「も」が違う!
最初の、部分の筆の入り方、2本の横線の角度・長さ・距離感、そして最後のハネ。見れば見るほど「も」がゲシュタルト崩壊してきますが、同じ人が書いた「も」にしては違いがありすぎる気も。
そこのところどうなんですか? もうやんさん。
「うん。実はサロンに描いてある『もうやんカレー』の『も』だけは、僕が書いたんじゃないんだよね。」
やっぱり! だとすると、いったい誰の「も」なんですか?
「このサロンを作ったおっちゃんの『も』なんですよ。おっちゃんが僕の『も』を見て、『俺の方が上手く書ける』って言ったから、書いてもらったんです。で、いい感じだったから採用。まぁ、確かにおっちゃんの方が男性的だけど、僕の『も』も女性的なラインがあっていいでしょ?」
もうやんカレーのファンは数知れず。ですが、「も」の違いを語れる酔狂なファンはどれほどいるでしょう。気になるあの子をもうやんカレーに誘って、「知ってる? あの『も』って別の人が書いたんだぜ」なんてウンチクを披露すれば、「すごい、物知り!」とイチコロになるとか、ならないとか。
サロンは必殺“もうやん結び”で締める
さらにサロンには別の秘密も。それがこちら!
そう、これが世に言う(?)“もうやん結び”!
「僕ね、もうやんカレーを始める前にカレー屋で修行してたんですよ。その時にもサロンをしてたんだけど、蝶々結びだと紐が垂れちゃって、汚れてビチャビチャになっちゃう。それで考案したのが“もうやん結び”です。これなら紐が垂れないから汚れないでしょ」
ギュッと固く結ばれていて、なおかつ紐が垂れないもうやん結びは、どうやらもうやんカレーのスタッフにとって欠かせないもののよう。紐の結び方ひとつをとってみても、こだわりが光ります。
汗かくと止まっちゃう、もうやん時計
さてここからは番外編。普段お店ではなかなか見ることができないもうやんカレーアイテムをご紹介します。
まずはこちら。もうやんシャツ。
「自転車ジャージのブランド『チャンピオンシステム』に作ってもらったTシャツです。僕はマラソンにこれを着て出ていますよ。お腹に描かれたアボカドカレーから出てる炎は、アメリカのモーターパーツブランド『ムーンアイズ』のイメージです」
ちなみに、もう皆さんお気付きですね? そう、こちらの「も」はサロン屋のおっちゃんの筆によるものです。
そしてこちらはお馴染み(?)のもうやん時計。
「もうやんカレー」の字を文字盤にあしらうというオリジナルなデザイン。なのに、どこかで見たことあるようなこの時計(税抜5000円)は、もうやんカレーのファンに大人気で、お店にもほとんど在庫がないのだとか。新作の発表が待たれます。
この時計について、辻さんの一言。
「『完全非防水』って裏に書いてあるけど、腕に汗かくとほんとに止まっちゃうんだよね(笑)」
最後に、もうやんさんは今の夢を教えてくれました。
「もうやんカレーって、実はカレーじゃないんですよ。カレーの作り方は無視してる。というか、欧風カレーの作り方とかは一切知らないし。もともとは僕自身が健康のために作っていた、スパイス入りの鍋なんです」
「だからこそね、『味噌ラーメン』とか『カレーうどん』みたいに、『もうやんカレー』をひとつの新しいジャンルにしたい。うちの会社じゃなくても、『もうやんカレー』を出すお店が出てきたらいいなぁ、と思ってるんです」
一度食べると病みつきになってしまう、もうやんカレー。その裏に、もうやんさんの隠されたこだわりと熱い夢があることを、シゴト着を通して感じていただけたでしょうか?
カレーの仕込みから完成まで約2週間もかけたり、わざわざ手書きでメニューを書いたり、紐の結び方にもこだわったり。これだけ効率化が叫ばれる世の中で、もうやんカレーがあえて手間をかける背景には、「お客さんに喜んでもらいたい」というホスピタリティがあるのだと、私には思えました。
でもやっぱり、もうやんカレーの魅力は一度味わってみてこそわかるもの。ぜひ皆さん、お店に足を運んでみては?
執筆:山中康司(働きかた編集者)
撮影:浅井睦
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