2017年09月25日更新

ポートランドに学ぶ未来の働き方ー未来予報コラム②|10年後、あたらしくできる仕事を見に行く

前回はアメリカテキサス州オースティンという街で行われている世界最大のクリエイティブ・ビジネス・カンファレンス&フェスティバルのSXSW<サウス・バイ・サウスウエスト>での出来事を中心にお伝えしました。


★この連載のバックナンバー→SXSWに集まる未来の予兆ー未来予報コラム①
★関連記事(書評)→聞いたことない仕事だらけの『10年後の働き方』

今回は、著書の中ではあまり細かく説明できなかった、同じ米国の都市でも少し様相が違う都市で行われたクリエイターのお祭りから”10年後の働き方”を考えていきたいと思います。

インディペンデントな仕事人に愛されるポートランドと未来の働き方


昨年の9月、私たち未来予報は、米国オレゴン州ポートランドに出張していました。


全米住みたい街ランキング1位ポートランド。公共交通も非常にスマートだ

ポートランドは皆さんの中でどんなイメージですか? コーヒー? ビール? アウトドアブランド? エコ?いろいろなイメージがあるかと思います。

もちろん私たちもビールやコーヒーを堪能し、夏フェスの定番靴で有名なKEENの本店に物色しに行きましたが(笑)、ポートランドに行った目的は【XOXO Festival (エクスオー・エクスオー・フェスティバル)】という、インターネット時代のインデペンデントクリエイター(企業に属さず独立して自由に活動するクリエイター)のお祭りに参加するためです。



XOXO Festival のメイン会場となる1906に建てられた高校の講堂を改装した”レボリューションホール”。朝から夜までカンファレンスやライブ、ミートアップが行われる。

私達は、10年後には「一つの会社・一つの肩書き・一つの仕事」で生活する人は稀になっていると予報しています。実際に、私たち未来予報株式会社のルーツはサラリーマンの放課後活動にありますし、現在も業務の中で複数の肩書きや役割(リサーチャー・デザイナー・プランナー・プロデューサー・プロジェクトマネジャー・ディレクター・エディター・ライター・カメラマンなどなどなど)を交差するような仕事をあえて行うようにしています。また、会社の業務以外の顔を持つことも大推奨しており、共同代表の宮川は歌手活動もしているくらいです。

このような複数の顔を持って自由に働くことを予報しているのは、私たちだけではありません。

経済産業省も平成28年より「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」を設置し、パラレル・キャリア※を応援する動きが始まっていますし、厚生労働省の報告書「働き方の未来2035」には、下記のように未来が予測されていました。

・個人事業主と従業員との境がますます曖昧になっていく。
・組織に所属することの意味が今とは変わり、複数の組織に多層的に所属することも出てくる。
・プロジェクトの中には、非営利なものも、社会貢献を目指すものや自己実現を中心としたものもある。


このような時代に、私たちはどんな仕事 / 働き方をしたいと思うのでしょうか?

ポートランドは個人事業主や地域のローカルなお店が多く、そのような人々を応援する風土が強くある街です。そんな場所で世界からインディペンデントクリエイターが集まるお祭りで、自分たちが作っている「SFとドキュメンタリーの間のコンテンツ」はどう映るのか? また、未来の働き方を実践する変な人や、それを支える仕組みの種があるのではないか?という想いを胸に、日本を後にしました。

※「パラレルキャリア」とは、経営学者ピータードラッカーの「明日の支配するもの(1999)」の中で、「個人の寿命が企業の寿命より長くなった今、人は組織のみに頼らず、それとは別に第2のキャリアを並行して始め、新しい世界を切り開いていくべき」という趣旨で使用されているが、この研究会の提言においては、主として第二のキャリアを「創業・起業等」を想定して使用している。(中小企業庁 資料「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業 研究会提言 ~ パラレルキャリア・ジャパンを目指して ~」より)


ポートランドには個人の作家を取り扱うショップやスパイスショップなど様々な個人商店が並ぶ(記事冒頭写真も)

10年前のSXSW Interactiveとも言われたXOXO Festival


XOXO Festivalは、2011年にKickstarter(クラウドファンディング)から始まったプロジェクトです。



「XOXOには10年前のSXSWの真の姿がある」「ビジネス関係なく新しいクリエイティビティの可能性が溢れてる」「2007年のSXSWはTwitterを広げ、2015年のXOXOはSlack(人気チャットツール)を広げた」などと米国のギークメディアで数年前から話題にあがっており、友人起業家から教えてもらったのが参加のきっかけになりました。

クラウドファンディングやSNSなどインターネット・テクノロジーを通じて偉業を成し遂げたインデペンデントクリエイターによる講演や、ユニークなポッドキャスターやミュージシャン達の生のライブを共有し、見たことがない(法律的に販売されないであろう)インディーズゲーム、そしてポートランドのコーヒーやビールを楽しみながら語り合う4日間のお祭りです。もともとコンテンツ畑の人間且つオルタナティブな「はみ出し者」が大好きの私たちにとっては最高に楽しい4日間でした。

2016年のハイライトは映像でまとめられています。



私たちが出席をした2016年を最後に、XOXOはお祭りという形態では一旦終了、オンライン(招待制のチャット※slackグループ)とオフライン(ポートランドにある大工場を改装したクリエイティブスペース)を中心とするクリエイターコミュニティにその形を変えています。


参加者にはパスとともに様々なグッズが配られるが全部かっこいい...

このお祭りのユニークな点は3つあります。

1. 参加者を1000人以下に限定する

XOXOは、チケットを買えば参加できるものではありません。事前のアンケートの内容をもとに招待されます。アーティスト・作家・デザイナー・起業家・ハッカーなど「インディペンデントな環境で物事を作り出す人」が最優先で招待され、その後に彼らをサポートする役目の人が招待される仕組みです。

周辺でビジネスする人を選別することで、より当事者同士が活発に議論できる環境づくりを徹底してコミュニティの生態系をデザインしていました。





クロージングリマークでは、孤独と思われがちのインデペンデントクリエイターこそ助け合うこと、そしてコミュニティが重要であるとデザイナーのFrank Chimeroがプレゼンテーションをしてスタンディングオベーションが湧き上がりました。

2. 徹底的に多様性を確保する信念

XOXOは、子どもや保護者はカンファレンス以外は無料で参加できます。託児所も用意されているため、パートナーとともにポートランドに訪れるクリエイターもいます。また、全てのカンファレンスはAD(米国障害者法)準拠され、リアルタイムにテキスト化され生配信されるため聴覚障害があっても参加できますし、トイレもジェンダーフリーのものもありどんな人にもフラットで開かれたものになっています。

もともと参加者の80%が白人男性だったため、人種・性別・障害・セクシャルマイノリティなど、参加しづらい境遇の人には積極的に参加の補助金を出す仕組みをあります。新しい物事は凝り固まった場所からは生まれないという強い意思を持って行動していました。


すべての講演はリアルタイムに速記される誰にも開かれている議論の場

3. ポートランドという開催地への恩返し

ポートランドに住む人たちは地産地消の意識が強いと言われています。大手のチェーンレストランは街にそこまで多くなく、地元のレストランを好んで足を運ぶそうです(何よりそっちの方が新鮮で美味しい!)。住民全体が支えあう意識があるポートランドは、ポートランド以外から集まったXOXO参加者の憧れでもあります。

XOXOの主催者であるAndy達は、fintechサービスのTilt(現在airbnbに買収)を使い、ポートランドで深刻な問題であるホームレス問題への支援金を期間中に募りました。目標金額を大幅に上回る金額が集まり、最終日のクロージングセッションでは大きな歓声が湧きました。


最終的に$ 50,722という目標金額の10倍以上の支援金が集まりました

これだけでも、だいぶ未来のイベントだなーという感じもしますが、具体的にどんなクリエイター達がいたのかを見ていきましょう。

新たなジャンルを作り出すクリエイター達と彼らを支える新しいサービス


今年のXOXOでは、映像や音楽、ゲームやポッドキャストを作るコンテンツクリエイターが多く講演しました。著書の中に入ってない新たな職業もせっかくなんで予報してみます。

・”VRトークショーモデレーター”(仮想空間の中で行われるトークショーを盛り上げる職業)



VR空間の中で行われるトークショー”Foo Show”を始めているのがWill Smith氏。 Foo Showは、VRヘッドセットを装着し、ゲームの世界にゲストとともに入り込んだ状態で展開される新しいスタイルのトークショーです。XOXOフェスティバルの講演中に初めての公開番組収録が行われました。現在その様子はエピソード・ワンとして世界中に配信されています。

今までのゲーム解説は、その人のゲームプレイの様子を見ながら解説されました。VRゲームの場合、解説者と同じ空間にいく”ツアー”のようなトークショーがピッタリです。これはゲームだけでなく、スポーツや音楽、旅行やドキュメンタリーなど、VRコンテンツすべてに言えるフォーマットのため、新たな職業が生まれるかもしれないと感じました。

参考動画→https://www.kickstarter.com/projects/willsmith/go-inside-your-favorite-video-games-with-the-foo-s

新しいジャンルで活躍するクリエイターが増えてくると、その人たちをサポートするサービスも生まれるはずです。こんな職業もできるかもしれません。

・インデペンデントクリエイター投資家(クリエイターと直接つながって毎月支援する職業)

個人クリエイターが抱える自分の弱さとの向き合い方を優しく、そして勇気をもって会場にプレゼンテーションしたのは、Lucy Bellwoodという元々の船乗りのイラストレーター女性です。

参考動画→https://www.kickstarter.com/projects/lucybellwood/100-demon-dialogues-book-and-plushie

彼女は船乗りの体験をイラストで書いていました。その出版のためにクラウドファンディングサイトKickstarterをはじめ、現在まで110,000米ドル(約1200万円)を調達しています。もともと低所得者向けの国策支援制度を利用していた彼女は、インターネットの力を使って大量の支援金を得ることで本を出版することができました。

すでに米国では、インデペンデントクリエイターを支えるプラットフォームが充実しています。Patreonはその一つで、ミュージシャンやビデオグラファー、ポッドキャスターや絵本作家など...個人のクリエイターのパトロンになることができ、金額に応じてクリエイターからリワード(報酬)が送られくるサービスです。毎月そのクリエイターに支援金が課金されていくクラウドファンディングのようなものだと考えるとわかりやすいですね。



LucyもPatreonを通じ、311人のパトロンから毎月1,365ドル(約15万円)の支援を受けています。彼女はこのシステムのおかげで生活のために行う受託のイラストを書く時間をより漫画の制作にあてられるようになったと話しています。

「私はとても創作活動になんて...」という人も、漫画家やミュージシャンなど好きな作家さんがいる人が多いと思います。直接その作家さんと繋がり、創作活動を毎月100円から支援する...そんなことがなぜ今までできなかったのか!という、新たなクリエイター支援の仕組みが浸透しはじめているのです。

10年後までに必要なのは「自分のテーマ作り」。ネットはやりたいことまで見つけてはくれない


XOXO Festivalで出会ったたくさんのインデペンデントクリエイター達。彼 / 彼女らと出会って思ったのは「自分が実現したいテーマ」をどう見つけるか?ということでした。

インターネットなどツールは「何が欲しいか?」を与えてはくれないのです。


ルーシーをはじめXOXOに出ていたクリエイター達からは”あなたは何でこの時代に好きなことをやらないのか?”という希望に満ち溢れた想いを受け取りました

より貪欲に、世の中の変化に目を凝らし、楽しそうだなーという隣の青い芝生にズケズケと入っていきながら改めて自分の未来を予報する...私たちは10年後の働き方に向けてこれが必要だと考えて著書を書き始めました。

私たちの著書はこのようなものが詰まっています。

・50個の新しくできるかもしれない職業
・8つの産業のSFストーリー
・SFストーリーのベースとなっているイノベーター達の未来を作る活動


ここから未来のヒントと熱気を受け取ってもらい、未来に向けて背中を押す一歩になっていただければ、それ以上の嬉しいことはありません。ぜひ、読んでみてください!!!

『10年後の働き方「こんな仕事、聞いたことない!」からイノベーションの予兆をつかむ』
Amazonリンク→https://www.amazon.co.jp/dp/4295001929

記事:曽我浩太郎(未来予報株式会社)
読みもの&連載もの: 2017年09月25日更新

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