2017年09月04日更新

同じ釜の仕事ゴハン。スプーン「水曜食堂」のまかない飯はジーンとくる"ものづくり"の味がした

忙しく働く毎日の中で、ついおろそかになりやすいのが「食」というもの。

ですが、食べることをテキトーにしていると、イライラしたり、作業能率も落ちたり。そんな生活が長く続くと、元気に働き続けることも難しくなるのでは? 食は職に直結しています。

そういったことから、"まかない"を出したりすることで、社員やスタッフの「よく食べる」をサポートしている会社もあります。CMや映像、ウェブなどを制作する「Spoon」もそんな会社のひとつ。

CM・映像と言えば「仕事がハード!」というイメージもある業界ですが、Spoonではどんな工夫をしているのでしょう? まかないの日にお邪魔してゴハンもご一緒してきました。

水曜だけオープンする社食


Spoonが毎週実施しているのが「スプーン水曜食堂」というランチまかない。この試みは5年前から続けているそうです。

8月のとある水曜日、朝9時頃。

外苑前にあるオフィスを訪問すると、大きなキッチンとテーブルのあるスペースで、3人の女性が野菜や肉と格闘していました。ときおり「給湯室でおしゃべりしている感じですね」と和やかな笑顔を見せながらもテキパキと調理しています。



「水曜食堂」のチーフは杉山直子さん(写真左)。『杉山さんちのおいしい食卓』という本を出されるなど(玉川泉氏との共著)、料理研究家・翻訳家として仕事をされています。この日、杉山さんをサポートしていたのは、スプーン社員の井上ますみさん(写真右)と宮下亜紀子さん(写真奥)です。

その日のメニューは沖縄ごはん。メインのゴーヤチャンプルーに副菜の人参しりしり、クーブイリチー(昆布炒め)、そして江戸菜のお味噌汁を作りますが、50人分ともなると使用する食材もゴーヤー(18本)、豚の塊(5㎏)、お米30合となかなかの量。


ゴーヤのスライスを試させてもらいましたが、とても気持ちよく切れる包丁でした

映像制作は料理に似ている?


実はこのSpoonという会社はこれまで30年近くにわたり、お茶の間でおなじみのCMをたくさん世に送り出してきた名プロダクションです。

最近ではサントリー「金麦」やファミリーマート「ファミチキ先輩」、資生堂のCMなどを制作していますが、「味にうるさく、料理好き!」な社員が多いことでも知られます。男性社員もみずから厨房に立つタイプの人が多いとか。スプーンという社名もそのあたりから来ているんでしょうか?

映像でも料理でも「自分で作る」こと、とことん「こだわる」ことが好きな会社なのかもしれません。メニューのプレートも手作りです。



よって、まかない飯もまったく手が抜けません。包丁やまな板など調理器具も本格派の逸品が揃っており、塩は広島産の藻塩から南仏はプロバンス産まで数種類をストック、出汁を取るカツオや昆布も料理店で用いられるようなそれーーという具合に随所にこだわりを感じさせます。

11時になると下ごしらえの作業もひと段落。3年前から「水曜食堂」を担当している杉山さんにお話うかがいました。

「最近の新入社員はおとなしいタイプの人が多いんです。色んなメニューを試しながら好きな食べ物を知る中で、少しずつ心を開いてくれますね。自分の子供と同じ年くらいですから、ついお母さん気分になっちゃいます(笑)。若い人たちだけでなく、舌の肥えたベテランたちも満足できるよう、大人の素材や味付けをちょっと加えるところがポイントです。

季節感や旬の食材も考えながらいろんな料理を作ってきましたが、いまや定番メニューになっているのが、出汁を取った後の煮干しにお酢をかけたシンプルな和え物。

酸っぱい料理をパクパク食べている若い人がいると、『暑くて疲れも溜まってるのかな?』なんて思ったり、食べることを通じていろんなことが見えてきます。今日のお味噌汁にも隠し味に焼き梅を使っていますが、香ばしさと風味が出て夏場は特にオススメですよ」(杉山直子さん)



杉山さんの著書。水曜食堂の歴代メニューをまとめた"写真集"もあり

杉山さんは健康に気づかったメニューを考えるだけではなく、所属する45名ほぼ全メンバーの食べ物の好き嫌いを把握しているそうです。

社外の人も胃袋つかまれてます


その後は食材を炒めたり、煮たり。12時頃に準備完了となると、社内の内線からそれぞれのフロアへ「ゴハンですよ~」の電話が入ります。食欲を刺激するため、完成したゴハンの写真もメールで送られます。

するとお腹を空かせた人たちが、一人また一人とやってきました。まかないを出す会社には、全員集合してからみんなで「いただきます!」というところもあるようですが、spoonは社員それぞれが、バラバラのスケジュールで仕事を進めている映像プロダクション。現場に出ているスタッフも多いため、その日の都合に合わせて15時くらいまで食べられるとのことでした。


完成!

では、いただきます! 我々もご一緒しましたが、丁寧に作った家庭料理のようなランチを会社で食べられるのはなんともありがたい。しみじみと沁みる味がします。若手の社員さんたちにお話を聞いてみると。

「一人暮らしじゃ食べられない手作りの揚げ物や汁物を食べるとジーンときますね」
「感想やリクエストを書くと、応えてくれることもあってテンション上がる」などなど。

食べた人は帰り際、感想ノートにひと言コメントする掟になっており、「アジアンなメニューお願いします!!」だったり、「今日は悲しい気持ちでしたが、ごはんを食べて元気がでました☺」といったほっこりフレーズがたくさん書いてあります。



「社員も、社外の人も、みんなで胃袋つかまれてます」というコメントも印象に残りました。

長く続ける中でこの"食堂"の存在が、取引先にも徐々に知られるようになっており、ミーティングの前後に「ランチでもいかがでしょう?」といったケースも多いようです。見ると社員のみなさんに混じって、スタイリスト界のレジェンド、高橋靖子さんの姿もありました。

同じ釜のゴハンから生まれる目に見えない効果


Spoonでは、なぜ水曜食堂の取り組みを始めたのでしょう? スタッフに混じってランチをしていた代表取締役社長の大桑仁さんを、食事後に直撃してみるとーー


代表の大桑仁さんもかなりの料理好き。大桑さんはプロデューサーとして、漫画家・井上雄彦氏による「スラムダンク1億冊感謝記念キャンペーン」など数々のヒット広告を手がけている

「この業界の仕事は正直なかなかハード。ほっておくと3食全部コンビニのゴハンで済ませようとする若者もいたりするんですね。でも、それだとカラダがもたないんじゃないか? と。

あとCMや映像の制作は、各プロデューサーがそれぞれに仕事をいただいて、プロジェクトごとに進めますから、隣の人がいま何をしているか意外とわからないんです。だから、『最近、どんな仕事やってるの?』といった話を気楽にできる場がほしいと前々から思ってもいました。

で、テラスのある最上階にキッチンを作ったらどうだろう?と。この会社の創業メンバーはみんな食べることが大好きですからね(笑)。

広告制作は人とのコミュニケーションがなにより大事。社外の人との打ち上げをここでやることもあります。テラスのバーベキューグリルで肉を焼いて、神宮の花火大会を一緒に見たり。すると外でお店を借りるのとはまた違う、距離の近いイベントになります。お客様を会社に招くことで、社員の『おもてなしスキル』も上がります。



キッチン隣のBBQグリル。写真はカツオの藁焼き作りのひとコマ

水曜食堂をやることで何が変わったか?を言葉にするのは難しいのですが、明らかにいい影響を会社にもたらしていると思います」(大桑仁さん)

取材を通じて感じたのは、会社や組織には「見えるもの」だけじゃなく、「見えないもの」も大切なのでは? ということ。見えないものから見えるものを生み出す、ものづくりやクリエイティブの職種では特に、"同じ釜のゴハン"が仕事の肥やしになるものかもしれません。見ている人がジーンとくる映像を作るためには、ジーンとくる味も知っておいたほうが良さそうです。


「スプーン水曜食堂」の歴代メニューの一部。和・洋・中・エスニックとバランスもいい

シゴトゴトでは引き続き、切っても切り離せない「職と食」の関わりにフォーカスする記事をつくっていきたいと思っています。

取材・文:寺崎倫代(シゴトゴト編集部)+銀河ライター
読みもの&連載もの: 2017年09月04日更新

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