2017年08月26日更新

創業350年・金魚の卸問屋『金魚坂』の女将さん【前編】金魚は気じゃなく手と目を遣う。そんで一緒に遊ぶと丈夫に育つの

「金魚すくい」と言えば、夏祭りの縁日というイメージではないでしょうか。この時期はふと金魚を見たくなることもあるもの。でも、人ごみに行くのは嫌だなあと思い、インターネットで検索していると、東京都文京区は本郷にある「金魚坂」というお店のウェブサイトにたどり着きました。

金魚坂は、創業350年の金魚・錦鯉の卸問屋。金魚の販売をはじめ、常時、金魚すくいもできる模様。また、喫茶店が併設されているようです。

お店の歴史の長さにも驚きでしたが、ウェブサイトに載っていた動く女将さんのチャーミングなアイコンにも強く惹かれました。

女将さんに金魚の魅力を聞きたい、なぜ喫茶店をやっているかも聞きたい、そして、金魚すくいをしたい!という思いで、今回、金魚坂の女将さん・吉田智子(よしだ・ともこ)さんにお話を伺いに出掛けました。

大きな三角屋根が特徴のお店構え。この建物のなかが喫茶店。

金魚は家族の一員だった。だから、エサも手作り。


――金魚すくいに行くつもりが、お話も伺えることになりうれしいです。ところで金魚は昔と今で違ったりするものなんでしょうか。

吉田:金魚自体はねぇ、やっぱり金魚ですからねぇ(笑)。形も、泳ぎ方も、昔と変わりはないんですけれども、育て方が違うんでしょうね。

――昔は鉢で育てたということでしょうか?

吉田:今も鉢でやってますけど、金魚がだんだんペット離れしちゃって、インテリア風になってるんじゃないですかね。まあ、熱帯魚の感覚でしょう。ですけど、昔の人は金魚って鑑賞魚の感覚じゃないんですよ。

あくまでも家族の一員で、ペットなんですよね。金魚を網ですくう人はいなかったんですよ。手ですくって。まあ、私なんか古い人間だから、ちょっと感覚的には古いとこがあるんじゃないですかね? 手ですくったほうが、やっぱり金魚は喜ぶんじゃないかなって思ってるんですけど。金魚を網ですくうと鱗がすれちゃうんです。

――網だとすれてしまう?

吉田:すれますね。でも、爪が伸びていらっしゃれば網と変わらないじゃないですか(笑)。ですからね、私がここへお嫁に来たころは、おじいさん(ご主人)に「爪切んなさい」と、「金魚がかわいそうだから」って言われました。いま、そんなこと言う人いないですよ。なんで切るんだかわかんない人が多いじゃないですか。そういうところも、また変わりましたよね。エサだって、昔は手作りのエサをやってましたよ。いまは、配合のエサですよね。近代化してますよ、やっぱり。

――自分でエサを作るんですか?

吉田:作るんですよ。自分が作ったエサだと、エサによって金魚の色が変わるんだということがわかります。いまのエサだと、みんな同じ色ですよね。その方が簡単だから。でも、昔は自分の家族みたいなものですから、自分が作ったエサを食べさせたんですよ。

――自分で作ったエサをあげると、どのくらいで色が変わるんですしょう?

吉田:変化が出るまでは、数年かかります。その金魚が持ってる色が出るまでには。

水でも色が変わります。だから、東京の金魚と関西の金魚では色が違いまして、尾の厚みも違いますよね。そうやって地金(じきん)もできるんじゃないですかね。うちのおじいさんなんかも、「フスマ(麩)をどのぐらいいれようかな?」とか言って。それで自分の色が出ると、「あぁ!よくできた~」とか言ってね。朝起きるとエサ作ってましたよ。それが金魚の醍醐味ですよね。

それと金魚ってね、泥池でできるんですよ。うちはあくまでも問屋ですから、いろんな種類を置かなきゃなんない。地方発送で全国送ってますから。それで金魚の池を埋めて、コンクリートの叩き使ってますけども、養魚所はみんな泥なんですよ。養魚所の泥の質によっても、金魚ちゃんが違うんです。面白いでしょ?

――面白いですね!

吉田:昔ですと、養魚所は「ここはランチュウの養魚所だわ」とかね、「ここは和金の養魚所」「ここは流金の養魚所」って、ある程度決まってたんですよ。うちはランチュウの養魚所を持っていたんです。だけど、そう決まってたから、一軒の養魚所では(いろんな種類の金魚に)対応できないので、問屋というものが間に入って、いろんなのを集めては、各地方に送って仕事してたんですよ。

ランチュウ

10年経ったら、金魚の健康状態が手でわかるようになった。


――女将さんは、こちらに嫁がれたんですね。

吉田:そうなんです。嫁いだばかりの頃は、まだエサ小屋でエサを練る役やってました。それでね、池の周りに、焙烙(ほうろく:素焼きの平たい土鍋)が下がってるんですよ。金魚はそれに入れて歩いてました。

焙烙に入れて見ると、金魚が締りが良くなって丈夫だとかね、ちょっとエサが悪かったから少しブクブクだってことが分かります。金魚って固い方が丈夫なんです。ブクブクになってるのも悪いことはないけど、どっちが元気かって言うと、やっぱり固い方がいい。そうやって金魚数えると、「あ、この金魚丈夫だな」ってこともわかるの。手で数えているから。

――分かるようになるには、どのくらいかかりましたか?

吉田:そうね、10年かかったかなぁ。周りの人たちに言われて、言われて。

――では、徐々に金魚屋さんでのお仕事の幅を広げていった?

吉田:うちで作ったエサをここで売って、他の種類はよそから買ってっていうね。ランチュウの産地じゃないところで流金を買ったり、関西から変わりものが来たり、鯉は新潟から来たり。そういう風にして、ここはなんでも揃ったんですよ。そうそう、金魚送るのは、今は酸素入れてダンボール入れて送るでしょ? 昔は、桶で送ったんですよ。

――桶でどうやって送るんでしょう?

吉田:桶のなかに漆が塗ってあるんです。漆が塗ってあると、冬はあったかいの。夏は冷えるってことはないけど、あったまらない。風が通るように、何段も金魚の桶を積んでくんですよ、五段くらいにね。そうやって金魚を輸送したんです。だけど、うちは南は九州、北は北海道まで送りますから、そうやって送ってると時間もかかるので、金魚が可哀想ってことになって。それで考えだしたのが、空輸なんです。空輸で送るようになったら、「空飛ぶ金魚」なんて新聞に出たりして。

――「空飛ぶ金魚」!その頃は、まだ空輸で送っているところはなかったんですか?

吉田:送ってなかった。空輸は全然なかったんですよ。うちの主人(先代)がいろいろ研究してそれやり始めて、飛行機で送るようになったんです。そうすると40~50時間はもつの。だから今はどこまでも送れるんです。

生け簀で泳ぐ金魚たち

器と金魚とお水だけ。眺めて遊ぶのも、楽しみのひとつになる。


――金魚の飼い方から運び方まで昔と今では全然違っているんですね。

吉田:買うところも違うでしょ? 「きんぎょ~きんぎょ~」って道で売ってんの見たことないでしょ?

――見たことないですね。買おうと思ったら、ホームセンターに行きます。

吉田:そうでしょ? 昔は、金魚屋の金魚って振り売りですよ。そいで、「金屋さーーん!」って呼びこんで買いますでしょ。昭和40年代のね、終わりぐらいまでやってましたかね。そう思うと今は楽ですよね、扱い方が。振り売りから買わないで、ホームセンター行けば買えますから。その代わり専門で、金魚を「こうやって飼うといい」ってことを、教える人がいなくなったんじゃないですか。

今はね、そういう人がいなくなって、なんでも機械で、薬買ってきたりね。本当は金魚って水に対して比数が合ってれば、ポンプなんていらないんですよ。エアーもなんにもいらないの。器と金魚とお水だけあれば。

たくさん入れて綺麗に飾ろう、目で見て綺麗に飾ろうと、たくさん金魚を入れるもんですからエアーが必要になってるんですけど、水が多めで金魚が少なめだったら死なないの。あと、こんな暑いときにはエサはやらない。冬は冬眠。

――金魚って、冬眠するんですか?

吉田:冬眠するの。そういう風にして飼う人がいなくなったんですよ。容器のなかに、藻草をこう入れといてやれば、藻草の陰で寝てるんです。で、藻草に適宜バクテリアが湧いてくるから、薬も何にもいらない。でも、エサは食べさせなきゃだめですよ。少しあったかい日は食べてんです。

夏、暑いとき、私たちだって、「ああ、今日は食べたくないなー」っていうときは、金魚も食べたくないんですよ。だから、エサやらない。でも、みんな(飼っている人)は、金魚が上にあがってくるとエサが欲しいんじゃないかと思って、エサあげるみたいなの。そうすると、消化不良起こすんですよ。

毎日、こう覗いてやると様子がわかりますから。上あがってくれば、エサが欲しいっていうのは嘘なのよ。白いフンが出ても、知らん顔して、まだあげてるから死んじゃうんです。

大事なのはよく見て、可愛がってあげること。それで我がペットにすれば、名前呼べばあがってきますから。人間が近づけば、向こうも近づいてくるし。何ちゃんって呼べば、出てくるし。そうなると、やっぱり可愛いから覗き込んで、しばらくは金魚眺めて遊んじゃうんですよ(笑)。それも、楽しみのひとつになるから。だから、金魚は気を遣わないで、目を使ってやればいいの。

――気を遣わないで、目を使う!

吉田:そうなんですよ。で、あんまり食べ過ぎないで、様子だけ見てやればね、いつまでも生きてるんですよ。きれーにお水洗うから、バクテリアがいなくなっちゃって、死んじゃうんだけど。

琉金

どうも私、商売は下手なの(笑)


――今は、インテリアとしての意識が強いので、水槽もすごく綺麗にします。

吉田:綺麗でしょ? あの飼い方。でも、いけないんですよ。金魚、一生懸命苦しんでるんですから。それはね、今のやり方。「インテリア」としてのね。昔のやり方は、「金魚と遊ぶ」。これなんですよ。

――金魚と遊ぶという発想がありませんでした。

吉田:まあ、金魚屋の私があれも使わないでいい、これも使わないでいいって、お店で怒られちゃう(笑)。だから色々使いたい方はね、どうぞおやりくださいって。

でも、黙って見てるのも面白いんですよ。なるべく風通しの良いところで、ベランダに出してやれば、海外旅行1か月置いておいても、自分が留守にしても、1か月そこにいますよ。たくさんエサあげなくても。その代わり、エサあげない日が続いたときは、帰ってきて、ほらエサあげよ!ってこれはダメなの。少しずつあげないと。いっぺんにこんなお腹ふくれちゃって、胃腸壊しちゃう。ちょっとずつ始めればね、旅行も平気。

鉢や水槽じゃなく、池に入れとけば、何年でもね、目だけかけてるだけですよ。昔はそうやって金魚飼ってましたからね、気軽に金魚を丈夫に飼えたの。今は手かけすぎるから、気軽に飼えないの。あれもやんなきゃなんない、これもやんなきゃなんないって、金魚がいるから留守にできないって。それは、嘘。

――金魚すくいの金魚は家に連れてきたら、すぐエサをあげなくてはという気持ちになってしまいます。

吉田:だから、死んじゃうの。売ってる人がね、金魚を理解してれば、そういうことを教えてくれるかんだけど。すくって持って帰ろうとしたら、「持って帰ってもすぐエサやんないでねー!」って。黙って持って帰ったちゃったら、エサあげちゃいますよね。で、水もすぐ綺麗にしてあげちゃうでしょ。それみんな死ぬ条件なんですよ。

あと、急激な温度変化もよくないんです。急に寒くなったときは、ダンボールの蓋でもかけてあげれば、だいぶ違います。暑いときには、ちょっと日陰にもってってやるとかね。まず経験してみるとわかりますよ。ですから、「金魚、初めて飼うんだ!」って言って、最初から高い金魚買うお客さんに会うと、「これはダメよ」って言うのね。「はじめはすくいですくった小赤の安いのから慣れて、それから大きいの飼ってね」って。どうも私、商売は下手なの(笑)。

金魚買ってく人の顔を見ると、「こうやって飼えば、この金魚も長生きするし、飼ってくれる人もね、愛情が湧いてきていいだろうなあ」って思って、つい追いかけていって「こうやって飼ってね~!」なんて言っちゃうのよ(笑)。

記事後編はコチラから→創業350年・金魚の卸問屋『金魚坂』の女将さんー私、あんまり苦労しないのね。みんなが助けてくれるからー

喫茶店の入り口では、金魚グッズを販売している

金魚坂 創業350年 金魚・錦鯉の卸問屋
WEBサイト http://www.kingyozaka.com/


記事・写真:河口茜(シゴトゴト編集部)
ロングインタビュー: 2017年08月26日更新

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