聞いたことない仕事だらけの『10年後の働き方』。夏休みの読書感想文としてー徒然WORK NEWS 葉月の巻ー

(編集長カワジリが、仕事・働き方に関するニュースや思うことなどその都度ふらっとガツっと書くエッセイ。今回は夏の読書感想文風に)

猫も気になる!? 未来の仕事本


『10年後の働き方ー「こんな仕事、聞いたことない!」からイノベーションの予兆をつかむ』という本を買った。この本の著者の人たちが私がしゃべりをするある勉強会に来てくださり、話を聞いてなんだか気になったので読んでみることにした。

先月出たばかりの本のようだ。それにしても「聞いたことない仕事」ってどんなものだろう?

ご存知の通り、「未来」や「働き方」について語る書籍や記事が鬼のように出ている昨今、「似たようなのばっかで、どれ読んだらいいかわからねえ!」といった問題はあるのだが、それでもこのあたりは気になるテーマ。

拙宅の猫(銀ノ丞♂/職業:パトローラー)も興味を持ったようである。枕にしたいだけかもしれないが…。いずれにせよ、ちょっと毛色の変わった"未来本"として、夏休みの読書に良さげである。

早速ページをめくっていく。

読んでいて、この本が「未来本」「仕事本」として異色だなと思ったのは、いま起きている先進的ビジネスの取り組みを紹介しながら、10年後という近未来をポジティブかつ冷静に受け止め、そして分かりやすく解説しようと努めているところ。

ようは「レポートの姿勢」に徹しているのが好印象。IT系起業のヒントを提供する"プロ仕様"な面もありつつ、飲み会や雑談のネタになりそうでもあり、"未来の暮らしガイド"として読むこともできるのは、このスタンスによるものだろう。

昨今世に出回っている"未来予測コンテンツ"の多くは、「AIに仕事奪われちゃうかもよ?」みたいにやたら恐怖心をあおったかと思うと、逆にスーパー・ドリーミーなバラ色未来をたいした根拠もなく大胆予言したり、意味なく読者を励ましたりして、「なんだか、うさんくせえ?」みたいな読後感が残りがちではあるが(なぜそうなるか? と言うと、そのほうが売れやすいからではあるが)、本書はいま世界で起こっている数々の技術革新や、それらを生かした取り組みの事例を、どこまでも淡々と天気予報のように"お知らせ"してくれる。

その上で、「10年後にこんな仕事もあったらいいね!」くらいのさりげないノリで、「トレーラー型移動農家」「ゲーム療法士」「フィロソフィーデザイナー」「3Dプリント建築家」「健康発電プロデューサー」といった新しい職業の可能性を示す。

新しい技術生まれるところに新しい仕事あり


農業、交通、エネルギー、情報、金融、医療、建築、教育など様々な産業分野をバランスよくカバーしているところもいい。私のようなトラディショナルなアラフォーかつ文系街道まっしぐらな人間でも、「なるほど! 既にこんなことにまでなってきてんのね」とタメになる。

いわゆるテック系記事にもそれなりに目を通しているつもりだったが、こうやってまとめて知る機会は意外とないな、知らないプロジェクトも多いなーーなどと思いながらふんふん読んでいたら、いつの間にかさっきの猫が不敵な表情でこちらをじっと見上げていた。

猫「そんなん知らんの…お前だけちゃうか?」
私「なんやと! お前かて知らんやろ?」
猫「話変わるけどな、オレ、ほんまはユーチューバーなりたいねん」
私「やめとけ。無理やその顔では。コワすぎる。ちびっこの共感が得られん。猫動画ブームも終わってきた」
猫「そっか。まあ、そもそもオレには未来関係ないから。大事なのはいまを生きることや。ほな仕事(パトロール)でも行ってこよか」

この猫は私が仕事、あるいは珍しく読書などしていると、いい感じになってきたところで必ず声がけをするなどして邪魔するのである。本当は何を言っているのか知る由もないが、なかなかのマシンガン・トーカーなので、いつもテキトーに返事をしている。

それはさておき、いや、実際知らなかったよ! 「サンフランシスコーロサンゼルス間の約610kmを30分程度で結び、最高時速は1200km超」みたいな、飛行機より早く総工費もほかの高速鉄道より安い! かもしれない"未来特急"がすでに試運転に成功しているなんて…(実用化・商用化に関しては様々な議論もあるようではあるが)。



ただ、この超特急、狭くて外も見えずトイレもないことなどから、乗車中の人に与える圧迫感はかなりのものになりそうとのこと。そこで本書では、じゃあ、この狭苦しい客室内で快適に過ごすための解決策を提案できる「超高速移動プロデューサー」は仕事としてアリかもね? と未来の職業予報をしている。

こんな感じで50個くらいの"仕事"が紹介されていくのだ。先に挙げた新しい職業たちがそれぞれどんなものなのか? は読んでみてのお楽しみというやつだが、ポイントは技術の進歩で消えていく仕事やビジネス、スキルがある一方で、新しく生まれるそれも確実に存在するということ。

例えばつい5年くらい前まで、Youtuberといったものが(うまくやれば)お金の稼げる"職業"になるなんて、あんまりだれも想像してなかったと思うが、一部の人は「面白いかも? いけるかも?」と直感して、情報も集めて日々せっせと努力(行動)していたのである。

未来は結局、現在から生まれる


この本の著者も前書きで、「大事なのはイノベーションの予兆を見逃さないこと」と述べているが、もし、そういった新しい分野で活躍したいのなら、みんなが知る前に知ってリスクも取って1歩か半歩くらい先に動く必要がありそうだ。

そうやって実際に「やりたいことがなければ自分で作ればいいという発想」で、いま活動している人たちのチャレンジの一端を知ることができるのが、実は本書の一番の"読みどころ"かもしれない。

その意味では未来というより現在進行形の"仕事づくり"がテーマとも言えそうだ。

自分が今働いている業界から読み始めても、これから転身したいと考えている業界からページを開いてみても結構です。(中略)

10年後の働き方や、各章の冒頭にある架空のストーリー「未来レポート」を書くために、国内外の数あるスタートアップ(急成長を目指す新興企業)やムーブメントの中心人物から、人類が直面している課題に対して意外なアプローチの解決策を提示している人を探し出します。彼らの発想や行動の共通点を見つけたら、そこに少しの想像を加えて、未来像を作り上げています。(「はじめに」より)


この本を書いたのは「未来予報株式会社」。この仕事(会社)自体ちょっと不思議だが、そこに所属する二人の著者(曽我浩太郎氏・宮川麻衣子氏)は、世界最大級のビジネスイベント「サウス・バイ・サウス・ウェスト(SXSW)」を毎年取材し、自主的に活発に情報発信しているそうだ。

本書に収録されているネタの多くは、そこで得られたもののようである。まるでお天気ニュースのように「淡々と未来を予報できる」のは、過去の膨大なプロジェクト事例とデータから確度の高い選りすぐりをセレクトして、構成をしっかり練っているからだろう。

SXSWは音楽と映像、ITがごちゃまぜになったなんだか楽しげな祭で、例えばTwitterなどのサービスはここで注目されてから俄然メジャーになったという話もよく耳にする。

日本からの参加者も年々増えているようだが、その実態はまだそれほど知られているとも言い難い。会場となるテキサス州オースティンに生々しく漂っているであろう世界のアツい空気に、小生のようなテックに疎い人でも猫でもアクセスできるよう、こうやってコンパクトにまとめてくれているのは重宝である。

ありそうでないタイプの「働き方」本としてオススメ。網羅的内容ではあるので、気になるプロジェクトについてはgoogle先生に質問するなどして自分で深堀りすると、さらに大きな気づきが得られるだろう。

本書に書かれている以外にも、まだまだネタはありそうだ。未来予報さんも「このコーナーで何か書いてくれるとうれしいな! ひょっとしたら書いてくれるんじゃないかな?」と最後に勝手に予報しておきます。

文:河尻亨一(銀河ライター)

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当連載のバックナンバー
1:どんだけフリーダムに働いてたんだよ? 昔昔昔の日本人て
2:イマドキの"働きマン"はカメレオン? 星野源『働く男』を読んだ
3:1000人くらいの仕事でスゴい人たちにインタビューしてわかったこと
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5:求ム!思いきり失敗できて愚か者であり続けられる才能を:ワイデン+ケネディトウキョウ
6:今日のGoogleロゴの人・石岡瑛子の「私」をつらぬく働き方

プロフィール

河尻亨一(かわじり・こういち)
銀河ライター/東北芸工大客員教授。1974年生まれ。雑誌「広告批評」在籍中に、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。仕事旅行社ではキュレーターを務める。アカデミー賞、グラミー賞なども受賞した伝説のデザイナー石岡瑛子の伝記「TIMELESSー石岡瑛子とその時代」をウェブ連載中。
読みもの&連載もの:2017年08月10日

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