2017年05月31日更新

求ム!思いきり失敗できて愚か者であり続けられる才能を:ワイデン+ケネディトウキョウー徒然WORK NEWS(皐月の巻)

(「シゴトゴト」編集長カワジリが、仕事・働き方に関するニュースや思うことなど、思いつくまま気ままに書いていきます)

ワイデン+ケネディという広告会社がある(以下、W+K)。こちらは世界唯一の独立系クリエイティブ・エージェンシーで、ロンドンや上海、アムステルダム、デリー、サンパウロなど世界に8つの支社を持つ。本社はアメリカのポートランド(オレゴン州)。東京にもオフィスがある。

名前にある通り、この会社はワイデンさんとケネディさんが創設した。W+Kは電通や博報堂にようにデカい広告会社ではない。日本では正直そんなに知名度が高いとも言えないが、映像やデザインに携わる人たち、つまりクリエイターと呼ばれる人々からは、世界中でとってもリスペクトされている会社である。

それはなぜなのか?

このサイトを読んでいる多くの方にとって、「なんじゃそれ?」という話でもあると思うので、解説をしながら話を進めている。W+Kという名前は知らなくとも、その会社が作った広告はほとんどの人が見たことがあるはず。ものすごく有名なところで言うとナイキという会社の"Just do it."というコピーと一連のキャンペーン。これは30年くらい前にこの会社の創業者であるワイデンさんが考案したものだ。

「Just do it.」というのは、簡単な単語のようでいてニュアンスまで日本語に訳すのが難しい。言うなれば「やるしかねえだろ!」といった意味だろうか? 私はOSAKA出身なので「いっちょやってみなはれ」とか「はよいてまえよ」みたいな関西弁にするとしっくりくる。

世界でもっともハードな仕事こそ、世界で一番素晴らしい仕事なんだ


ざっくり言うと「挑戦と行動あるのみ」みたいなことである。毎日がたゆまぬチャレンジであるアスリートやスポーツ愛好家を鼓舞する言葉として、これ以上のフレーズはないシンプルで強い言葉だ。

世界トップクラスのアスリートたちを起用するナイキのキャンペーンをはじめ、W+Kが企画制作に関わった数々のグローバルブランドによる広告は、各国で大きな反響を生み出してきた。ロンドンオリンピック以降の五輪シーズンに世界中でオンエアされている、こんなシリーズCMに涙した人もいるかもしれない。

まあ、ちょっと見てみなはれ。



オリンピックでは花形のアスリートにばかり注目が集まりがちだが、その影には彼ら・彼女らの成長をずっと見守り続ける母親たちがいる。洗剤や家庭用品、衛生用品などのメーカーであるP&Gは、その人たちをさらに影から応援したいと思っているよ、というメッセージが伝わるドキュメンタリータッチの長尺CM。

最後に出てくるーー

"The hardest job in the world,is the best job in the world."
「世界でもっともハードな仕事こそ世界で一番素晴らしい仕事なんだ」


ーーというコピーもちょっとグッとくる。

コマーシャルなのに、商品や企業を脇役として描くことに徹しているところに注目したい。というのも、こういったところにW+Kの独特の哲学が感じられるからだ。

広告とか広告業界と言うと世間的には「人に強引にものを売りつけようとするウザい存在」「すぐ広告主のいいなりになる"犬"みたいな人たち」といったイメージもないわけではない。残念ながら半分から70%くらいそれで正解かもしれないが、広い世界には「そうでないレアケースもある」ということだ。

10年くらい前、ある雑誌の特集を作るため、中国、イギリス、アメリカ、日本と、この会社のオフィスを訪ねる世界1周旅行をしたことがある。40名くらいのW+Kの人々に話を聞き、ポートランドの本社では、ダン・ワイデンさんやデイヴィッド・ケネディさんにもお目にかかってインタビューをした(二人で対談してもらった)。とても刺激的で面白かった。

どんな話だったのか、細かいことは忘れてしまった。こちらからの問いかけに、このお二人はほとんどジョークで返していたので、どこまでが本当の話なのかもわからなかったのだが、ひとつはっきりと覚えているのは、ワイデンさんが「広告のコピーは友だちに手紙を書くように書いているんだ」と言ったこと。

テレビのコマーシャルなどは多い場合、何千万人、あるいは何億人が見るものだが、「顔の見えない大勢」を想定して作られたものは結局だれの心にも届かないのかもしれない。しかし、だれも見たことのないような心動くものを作るのは、言うまでもなくそんなに簡単なことではなく、そのためには"Work hard"である必要もある。

インターンや学校ではないW+K Tokyoの"求人"


サイコーのものを生み出すためにそうしているのか? W+Kは働く環境も独特のものがある。いまはその場所から引っ越してしまったようだが、ポートランドのオフィスにはバスケットコートやビールサーバーがあった。会社でスポーツをしたり飲んでも良いのである。各オフィスのエントランスを入ったところには、そこで働く人たちのポートレイトが全員分貼り出されており、どんな人がそこで働いているのかわかるようになっている。

「Fail Harder(おもくそ失敗せいよ)」「Walk in stupid(愚か者で行こうや)」なんて言葉もオフィスに掲げられていた(後者はロンドンのオフィス)。「Stay hungry,stay foolish」なんて言葉が流行る前から。ソーシャルな活動や若手の育成にも早い時期から熱心な会社だ。

ところで、その会社の東京オフィスが現在"求人"をしている。W+Kらしく、社員募集ではなくインターン募集でもなく学校でもない変わった"求人"である。こちらは「The Kennedy's」という次世代クリエイティブ増強プログラム。タイトルは創業者の一人であるアートディレクターのケネディさんに由来するものだ。

詳しい情報は告知サイトで確認していただきたいが、私が興味深いと思ったのは「20歳以上の人で、2017年8月から7ヶ月間東京に住める人(&日本語で会話できる)」であれば、職業・国籍を問わずだれでも応募できること。「実際の仕事をスピーディに進めながら学んでいく場」であること。「広告業界での経験は不要」であること、などだ。期間は7ヶ月、募集人数5名に限られるが、採用された人には有給のプログラムでもある。

「The Kennedy's」オフィシャルサイト→http://kennedys.jp


アムステルダムの「Kennedy's」参加者によるワークの事例。作品集(動画)はこちら→https://vimeo.com/130088400

「The Kennedy's」は2011年に同社のアムステルダムオフィスで始まり、ロンドン、サンパウロ、上海でも導入されているという。

もちろんアイデア・表現系の仕事である以上、「ユニークなクリエイティブビジョン」の持ち主である必要はある。それをテストするためにこれまたW+Kという会社らしい10の質問に答える必要もある。だが、表現する力やアイデアを考える力は、必ずしも広告・クリエイティブ業界の人材や美大卒業生だけが持っているわけではない。むしろ本当の才能は、思いがけず遠い場所からやってきたりもするものだ。この記事をお読みの皆さんの中でも、"そういうこと"が好きなのであれば、いっちょやってみなはれ。

ケネディーズの創設者であり、長年W+K アムステルダムのクリエイティブディレクターを務めるアルヴァロ・ソトマヨール氏はこう言ってるらしい。

「このプログラムは世界にとって有益になる新しいもの、アイデアの力を信じる人たちのために作られました。ケネディーズが育つにつれ、さらに多くの才能を発掘し育てられることを楽しみにしている。そしてできれば世界の問題を解決していく素晴らしい人たちを送り出すことができたらと願っています」

ちなみに当編集部でも引き続きインターンを募集中。W+K Tokyo(中目黒)と異なり新橋に本社というか部室みたいな小屋しかないが、インディペンデントであるところと世界の課題を解決したい気持ちは同じ。こちらもご興味ある方は"Just do it"と便乗広告しておこう。

★仕事旅行社「編集部」夏のインターン大募集!(※採用者が決まりつつありますが、もう一人追加募集。2017年5月30日現在)

文:河尻亨一(銀河ライター・シゴトゴト編集長)

当連載のバックナンバー
1:どんだけフリーダムに働いてたんだよ? 昔昔昔の日本人て
2:イマドキの"働きマン"はカメレオン? 星野源『働く男』を読んだ
3:1000人くらいの仕事でスゴい人たちにインタビューしてわかったこと
4:仕事の電話はいまだ得意ではない

プロフィール

河尻亨一(かわじり・こういち)
銀河ライター/東北芸工大客員教授。1974年生まれ。雑誌「広告批評」在籍中に、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。仕事旅行社ではキュレーターを務める。アカデミー賞、グラミー賞なども受賞した伝説のデザイナー石岡瑛子の伝記「TIMELESSー石岡瑛子とその時代」ウェブ連載を2年のときをへて再開。

読みもの&連載もの: 2017年05月31日更新

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