仕事の電話はいまだ得意ではないー徒然WORK NEWS(卯月の巻)

(「シゴトゴト」編集長カワジリが、仕事・働き方に関するニュースや思うことなど、思いつくまま気ままに書いていきます)

仕事の電話って効率いいんだか悪いんだか


最近こんな記事を読んだ。

★「電話に出るのが嫌で会社行きたくねぇ」新入社員の気持ちに激励 「完璧に電話取れるなんて誰も思ってないから安心しろ」(キャリコネニュース/2017.4.21)

近頃の新入社員には「電話に出られない・出たくない」という人も多いようだ。特に見知らぬ人からの電話に応対するのがきついという。で、世間のリアクションとしては、「わかる、その気持ち!」という人と「えっ!なんで?」という人におおよそ二分されるようだ。

前者に共感する。私も電話はぶっちゃけ「あんまり出たくない派」である。もはや新入でもなければ社員でもないのだが、仕事のメール化・ネット化が進んで「いい時代になったものだ」と胸をなでおろしているおっさんの一人だ。

ここ数年では、仕事のやり取りはかなりの部分Facebookのメッセンジャー。こいつは優れもの。非常に快適サクサクだ。「言った・言わない」の揉め事も起きにくい。たかが仕事でむやみに緊張しなくていいのもいい。仕事のやりとりでありながら、多少はムダ話を挟んだりもしやすい。

これは職種にもよるのかもしれないが、時間を見計らったりしながら、出ないかもしれない相手に何度もコールしたり、「書く作業がやっとはかどり始めたぞ!」と思った瞬間コールされてまた仕事が進まなくなったりするのは、正直効率悪いと感じている。その感じはある程度世間で共有され始めているのか、最近では「一方的な電話は先方に対して失礼」と思う人も多くなってるようだ。

むろん、電話でやりとりした方がコミュニケーションがうまくいく&作業が滞りなく進むケースや現場も世の中には多い。「やっぱ電話で話さなきゃ!」と豪語するデキるビズパースンも知っている。そして急ぎのお知らせや「ここは話しとかないとマズいだろう」の場合、相手が年配の方、あるいはテレトーク好きな人の場合など、自分も状況に応じて電話は使うには使う。

電話ならではのメリットもある。用件をいちいち文章化するより話が早く、ニュアンスまで伝えやすい。俗に「話せばわかる」などと言うように、書き言葉(メール)は話し言葉(電話)より冷たい印象を与えやすい。それもわかってはいるのだが、いくつになっても苦手意識が抜けない。効率いいのか悪いのかなかなか結論は出ないのだ。

なので、「電話に出るのが嫌で会社行きたくねえ」という新入社員の気持ちはわかる派だ。コミュニケーションがどんどんネット化されていく時代に成長したデジタルネイティブな世代にはそれを苦痛に思う人も多そうだし、今後はそういう人がもっと増えていくだろう。

実際、打ち合わせなどで、ネット系企業のオフィス等を訪問すると電話がほとんど鳴らないことに驚く。ひとつのフロアに編集部がいくつも入り、そこで何十人も働いていたりするのに、1時間の打ち合わせの中で1度もオフィス電話の音が聞こえないとか。電話のやりとりは各自モバイル等で対応しているのかもしれないが、時代は変わった感がある。

かけるほうはまだしも、出るほうとしては「自分と関係ない(かもしれない)仕事の窓口になんで自分が?」という気持ちもあるのかもしれない。

若手は決して真似してはいけない。究極の職電回避法


ここ10年くらいの話。「メールで失礼します」的な文章から始まるメールはぐっと少なくなり(不思議なもので、それが失礼とされていて、みんなやたらそう書いてくる時代もあった)、逆に若い人たちからは「◯◯時にお電話して良いでしょうか?」みたいな問い合わせがメールで来る。

いや、かけたいならおおよそ何時でもいいのだが、彼らにとって「わざわざ電話する」ということは、すでに「打ち合わせ」に近い感覚なのかもしれない。

しかし、先に挙げたような記事がバズるということは、電話やFAXをコミュニケーションの主力とする職場もまだまだ多いということだろう。そんな場合、「電話に悩める若手」たちはどうすりゃいいのか? 自分がそうだったときのことでも思い出してみよう。

私が社会人デビューした頃(2000年くらい)、世の中はまだかなりの「電話&FAX社会」であった。すでにEメールもあるにはあったが、自分の職場では仕事で使うことはオススメできないとされていた。ある小さな出版社にいたのだが、そういう職場では朝から夕方まで3回線の電話のうちどれかひとつは常時鳴りっぱなし。3つとも鳴っていることも多い。

取材のやり取りだけでなく書店さんからの注文、誌面へのクレーム、スクール事業もやっていたのでそれ関係のお問い合わせetc。全部電話でくるのだが、正直うるさくて仕方がない。電話に出すぎて夕方まで仕事にならないこともよくあった(電話も仕事だが)。しかし、自分の作業は自分の作業で進んでないと怒られてしまう。これは未だにトラウマだ。

たいていの職場でそうであるように、ここでも電話番は新人の仕事だった。耳障りとしか表現しようのないあの「トゥルルルルルッ~!!!」みたいな音が響き始めた瞬間、いち早く受話器をパーンと取り上げて、「はい、◯◯◯◯でございます!」みたいな突撃をかけられる者が上司や職場仲間の信頼をも勝ち取るのである。

しかし私は、まず世話になってない知らない相手に「お世話になってます」が素直に言えないタイプ。それが"社会のお約束"だと知ってはいるので一応言うが、そう言いながらも頭の片隅で「いつかこの人に本当に世話になる日も来るんだろうか?」などと考えてしまう。

「気軽にお電話ください」という日本語もなんかおかしい。なんで電話に敬語使ってんだか。「おメールください」なんて言ったら明らかにヘンなわけで。そのあたりからしてイラッとくるわけだ。

そんな私が会社に入ってまず鍛えたのは「電話を取るふり」であった。着信するや否や、いかにも「オレが取ります!」な感じのオーラを出しつつ、受話器を取る間際になるとビミョーにスローモーションとなる。すると新入りは私のほかにもいるため、受話器を耳に当てたときにはすでにほかのだれかが対応している。あとは「チキショー、取る気満々だったのに…」みたいな口惜しい感を背中から漂わせながら受話器を置けばお仕事完了である。

だが、このような姑息なスキルがそういつまでも通用するわけがない。この作戦は失敗だった。すぐバレてディスられる。場合によっては職を失いかねないので、良い子のみんなは真似しないほうがいいだろう。結局、嫌でも真面目に取るしかない。

受話器越しに伝わっているのは「声」だけではない


で、これまで書いてきたことといきなり真逆のことを言う。実は電話は面白い。知らない人たちからの電話も慣れると意外と発見もあるものである。

まず、仕事を頑張っている自己満足感に簡単にひたれる。「この電話応対中の自分いいよね」的な。これによって何かが「解決に向かってるぞ」あるいは「動き出してるぞ」みたいなヘンな高揚感もある。

だが、そんなことは些細なこと。電話が真に面白いのは、むしろ相手の人柄まで"見えちゃう"こと。腰の低い人、横柄な人、面白い人、真面目な人、嘘をつく人、謙虚な人etcーーご存知の通り世の中にはいろんな人がいるわけであるが、「声」というのは想像以上にその正体を伝えてしまう。

同じようなことを言っていても、話し方のビミョーなニュアンス等から、「たぶんこういう人なんだろうな」といった言外の情報までなぜかわかってしまうのだ。それで仕事がらみの電話の際には、ワントーン声をあげたり、家族や友だちに話すときとは違う声色にして自分を補正しようとする人が後を絶たないのかもしれない。

しかし、そんな努力は無駄だ。昔、大阪のとあるCM制作会社のプロデューサー(知らない人)にお電話差し上げたとき、「お忙しいところ失礼します」と緊張気味に言う私に対して、その人はこう言い放った。「いや、ひっまでーす」。大阪人ならではのエチケットトークかもしれないが、こういう率直なリアクションのほうが好感持てる。

自分の場合、電話でフツーに話すと、なぜか知り合いからも「70代くらいの高齢者と話しているのかと錯覚する」と言われることが結構あるのだが(会うとそんなこと言われない)、それは私が子供の頃から「達観しすぎててジジ臭い」と言われていた何かと無縁ではない気がする。見た目では伝わらない何かが受話器越しに漏れているのだろう。

電話というものはそのあたりが怖い。SNSなどで自在に人格を調整したり変えることもわりとフツーになってる、つまりいくらでも「自分を作れる&盛れる」時代に、「電話に出るのが嫌で会社行きたくねえ」という人たちが増えている理由のひとつはこの辺にあるのではないだろうか。単に「会話が苦手」みたいなことだけではなくて。

声を介した「一対一」の関係性の中で、自分という存在がネタバレすることに不安感があるのかもしれない。

そういえば随分前、私が電話インタビューさせてもらった、ある世界的に著名な現代音楽の作曲家は、取材は「会う」より「電話」のほうが好きだと言っていた。その理由は「わざわざ会うのがめんどくさいから」というものではなく、電話のほうが相手をよく理解でき、濃密で深いコミュニケーションになると考えているとのお話。"音の達人"が言うことだけに、説得力があった。

一方でもの書き系、つまり"活字の達人"系の仕事の人は「お仕事の依頼はメール or FAXでお願いします」という人も結構多い。

結局、この話は結論が出るようなものではなく、その人や所属する組織の業種、仕事のスタイル、その時々の状況などいろいろ考慮して、電話なのかメールなのかチャット系サービスなのかはたまたFAXあるいはお手紙なのかーーツールを選んで合わせ技で仕事を進めていかないといけないストレスフルな時代である。

さっき「いい時代になったものだ」と書いたがその意味では複雑で面倒でもある。「手紙と会う」しか選択肢がなかった時代には想像もできないことだろう。

となると、その人なりのお仕事やりとりスタイルを確立しないと大変だ。私としては「メール→会う」の組み合わせが好み。なので電話は出ないこともあるかもしれない。その場合は気軽におメールを。というわけで当編集部では引き続き社会人インターンを募集中。「電話は苦手だけど、文章を書いたり読んだり人と会うのは好き」なあなたも歓迎です。↓

★仕事旅行社「編集部」春のインターン引き続き大募集!(※採用者が決まり次第締め切りとなります。2017年4月30日現在)

文:河尻亨一(銀河ライター・シゴトゴト編集長)

当連載のバックナンバー
1:どんだけフリーダムに働いてたんだよ? 昔昔昔の日本人て
2:イマドキの"働きマン"はカメレオン? 星野源『働く男』を読んだ
3:1000人くらいの仕事でスゴい人たちにインタビューしてわかったこと

プロフィール

河尻亨一(かわじり・こういち)
銀河ライター/東北芸工大客員教授。1974年生まれ。雑誌「広告批評」在籍中に、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。仕事旅行社ではキュレーターを務める。アカデミー賞、グラミー賞なども受賞した伝説のデザイナー石岡瑛子の伝記「TIMELESSー石岡瑛子とその時代」をウェブ連載中。
読みもの&連載もの:2017年04月30日

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