2017年04月26日更新

デンマーク流・フォルケホイスコーレでの自己理解の深め方

30代半ばにして会社を辞め「大人のギャップイヤー」と称してキャリアと人生の“再編集”中の筆者が(詳しくはコチラ)この再編集期間の総仕上げとして向かったのは、北欧はデンマークの成人教育機関・ フォルケホイスコーレ

デンマークでは「人生の学校」と呼ばれ、自分や他人、そして社会と向き合い将来の道を模索するための時間を過ごすために設置されています。デンマーク人はここでどうやって自己理解を深めるのでしょうか?

まだ今月から通い始めたばかりではありますが、ここまでのレポートをお届けしようと思います。(尚、フォルケは学校によって独自の雰囲気があるので、あくまで私の通っている学校の例としてお伝えします。)

Hvad drømmer du om?~あなたの夢はなんですか?


「Hvad drømmer du om?」とはデンマーク語で「あなたの夢はなんですか?」(英語で言うとWhat do you dream about?)という意味。

まさに、この自分探しのフォルケにおける真骨頂な質問です。そしてなんと空撮で見ると、そんな直球ど真ん中な質問を学校の屋根から投げかけているのが私の通っている Brandbjerg Højskole(ブランビャオ・ホイスコーレ)です。


*Brandbjerg Højskoleは、コペンハーゲンから電車で約2時間半ほどの都市・Vejleの近くに位置する雄大な自然にあふれた歴史あるホイスコーレ。Brandbjergとは、「火山」という意味。
(※写真提供:Brandbjerg Højskole


デンマークには70校ほどフォルケがありますが、スタンダードなものから音楽・芸術・デザイン・体育など様々な得意分野があります。

多くのフォルケはデンマーク語のみの学校が多いため、とりあえず“英語で授業があること”や今回留学したかった“時期”や、日本人がビザなしで滞在可能な上限である90日以内といった)“期間”などの条件で絞った結果数校残りましたが、ここにした決め手はこの「Hvad drommer du om?」というド直球な標語や、揃えている授業(自分を内観するためのKompasという独自で開発した科目がある)を見て、「最も自分のイメージする“人生の学校”に近いな」というインスピレーションを得たからでした。

生徒の大半は二十歳前後のデンマーク人が圧倒的に多く、次いでシリア等から来ている難民の若者と、私のような国外から来た留学生や年配の方、仕事を辞めて来た20代後半~40代の元社会人などが混じり、全体で80名程度でこれからの3ケ月を過ごしていきます。

大学で勉強したいことや仕事の方向性を見つけたい」「試験勉強や仕事に疲れた」「デンマーク語や英語を学びたい」そんな人々が自分を「ゆるめに」、そしてやりたいことを見つけるべく「色んな事に挑戦する」ために来る場所と言っていいと思います。

学校の校舎に入ると、受付のすぐ横には生徒の写真とこの「あなたの夢はなんですか?」という問いに対する答えが、プロフィールカードとして張り出されています。「大統領になる」だったり「大西洋一周航海」といったいかにも“夢”らしいものもありますが、やっぱり「自分の行きたい道を探すこと」と答えている人が多いです。


*学校の受付の壁にずらりと並んだプロフィールカード。入学時にはみんなでおそろいのパーカーと文房具・バッグなども配られ、なんだか外国の大学っぽい雰囲気。(意外と朝晩が寒いのでパーカーはとても役に立ちます)

自己理解は“コンビニで買える”ものじゃない。じゃあどうやって深めていくの?


デンマークに来る前から抱いていた「フォルケでどうして自己理解が深まるのか?」という疑問。

が、どうやら「自己理解を深める」ということは「悟りを開く」ものに近く、思ってもないときに急に降ってきたりする類のものであり、一朝一夕に得られるものではなさそうです。

すなわち「●●と××をしたから、自分を理解できた!」という黄金律はなく、また「ちょっと自己理解足りないから買ってこよう」っとコンビニに行けば必ず手に入るような手軽さと確実性とは縁遠いものなのかも、と。ある人は1日で深まることもあれば、1年経っても深まらないことだってあるかもしれない、という感覚を持ちました。

そんなわけで私はまだ通い始めて約1ヵ月の初心者なので、あくまでまだ短い経験を基にしたものではありますが、きっと「こうやって深まっていくのかも」と思う事を以下3つ、挙げてみます。

■フォルケ流・自己理解を深める3つのポイント
①:いろんなことを試しにチャレンジしてみることができる。
②:日常から離れ、同じ目的を持った仲間と寝食共にすることにより、集中して自己理解を深める時間が持てる。
➂:徹底した「対話」の機会を与えてくれる。


それでは、それぞれ詳しく見て行きましょう。

①:いろんなことを試しにチャレンジしてみることができる。


私のいるフォルケでは、1学期(3ヶ月)で1つの主要科目(Main)と2つの選択科目(Elective)を取るのですが、面白いのは科目の途中変更が許されるということ。「これかと思ってやってみたけど違った」ということが、容認されているわけです。(もちろんどうして変えたいのか?という相談は念入りに行われます。)

主要科目については、70校あるフォルケの中で、大体音楽やアート、スポーツ系など得意分野が分かれています。そんな中で私の学校ではOutdoor(アウトドア)Soundhouse(音楽)・私の取っているEventLab(イベント企画などのプロジェクトマネジメント)・そしてKompasの4つから選ぶことが出来ます。このKompasというのはこの学校にしかない独自の教科であり、2時間半もかかる首都・コペンハーゲン方面からもこのために来たという人が多々いました。


*瞑想やヨガなどを行いながら内省を深め、自身の向かう方向(=羅針盤)を引き出していくこの学校独自の教科・Kompas。長年教師を務めるJesper氏により創設された「どんな授業かを一言で説明するのが非常に難しい」科目であると言われ、フォルケに来る若者たちには大変人気な教科。(尚、授業はデンマーク語のみ)

また、この他にも選択科目では多彩な科目から自分が好きなものを2つ、選ぶことができます。

Adventure Sport…アウトドアスポーツのクラス。とにかく童心に帰ったように楽しくたくさん身体を動かす。
Body & Voice…人間の体を楽器に見立て、身体を実践的に使い様々な音を出しながら音と身体の関係について理解を深めていく。
Art, Creativity and process…絵や写真、ストリートアートなど、自分の表現したいことを上手い下手ではなく様々な形で実現する方法を教える。
Meditation & Philosophy…瞑想と哲学について学ぶクラス。東洋と西洋の瞑想の違いなど、様々な知識を学び実践する。
Political Activism…政治活動について学ぶクラス。デンマークの民主主義に則り、政治的活動を起こしたい時はどのように考え、行動に移していくかなどを学ぶ。
Organic Design…デンマークのみならず世界各国でエコ活動を行ってきた方が講師として付き、みんなで楽しみながらエコ活動を実際に行っていく。
Bandhouse…みんなで演奏する「バンド」という形態に焦点を置いて、音楽演奏を学ぶクラス。
Jagt & Nature…デンマークの大自然をハンター(狩猟者)の視点で学ぶクラス。フィールドワークに出かけて自然の生態系を学んだり、実際の狩猟現場を見学することが出来る。
Filmperler og TV Series…映画やTVシリーズのドラマを観て、登場人物の気持ちや作者の意図などをみんなで語り合うクラス。
Danish for foreign Students…外国人向けのデンマーク語クラス。

私も最初は映画や政治系の科目かな~と思っていたのですが、授業の説明会で先生の熱のこもったプレゼンがあまりに面白く、気が付いたらそれまで全く興味のなかったBody & Voiceの音楽クラスと、Jagt & Natureのハンティングクラスを選択していました(笑)。

でも、こういった“思いがけないところから興味を抱く”というのは、まさに「計画された偶然」のようで、すごく新鮮で楽しい出会いだと思います。

②:日常から離れ、同じ目的を持った仲間と寝食共にすることにより、集中して自己理解を深める時間が持てる。


フォルケは必ず全寮制。全寮制ってどうなんだろう?と私なりに考えてみました。

私もこの「大人のギャップイヤー」を始めた際、最初は自由な身になったことが嬉しくてただひたすら解放感しか感じていませんでしたが、だんだん社会的身分が無かったりやりたいことを探しているという状態に対して不安感が出始めました。(自分で選んだ道にも関わらず…)

その当時はまだ東京のど真ん中で一人暮らし。その数か月後に一旦実家に戻った時、改めて家族という「寝食共にして日々あったことや思ったことを受け止めてくれる存在のありがたさ」を痛感しました。きっとそんな不安定な状態の時だったからこそ、より一層強く思ったのだと思います。


*食事も必ずみんなで一緒に取り、授業がない時間でも様々なアクティビティのお誘いがFacebookグループ上で活発に飛び交います。

おそらくそんなイメージで、フォルケという場所は家族的な要素を持ったものなのかもしれません。

流れで行くと、毎日色んな授業や寝食を共にしたり色んな一面を見ることで、自分もそして相手のことも段々理解が深まって来る→思った事や感じた事を話したりそれについて意見をくれたり、応援したり協力したりして濃い関係が築かれて行く→関係性が近づくことで煩わしさや意見の衝突ももちろん出てくるものの、それも含めた上で一緒に時間を過ごす。というような感じです。

例えば、最初はなんだか攻撃的で苦手だな…と思った子でも、食事準備の当番を一緒にやってみたら思いのほかすごい優しく助けてくれたりする。そして、家族についての対話になった時にこれまでの過去で家庭内での立ち位置などの関係で攻撃的な態度を取って自分を守らざるを得なかったことなどを聞いたりすると「ああ、だからそうなのか」とより深く知ることでその子という存在を理解し受け入れやすくなることを実感したりしました。


*学校の近くには、“Shelter”と呼ばれるキャンプ場のような場所がたくさんあります。たき火を囲んでSnobrødと呼ばれるパンの生地を持参し焼いて食べました。

一方で、そうなるともちろん「人と距離が近い生活」が苦手な人には多少しんどい環境であるとも言えるでしょう。かくいう私も37歳なので、ルームシェアや元気一杯なアクティビティとかは難しかったりします。でも、シングルルームも選べるし、アクティビティも強制では全く以てないので、付き合い方はみんな自分でコントロールしているみたいです。

そして、元々家族以外で人との距離が近い生活を円滑に過ごすのが得意ではない私は、ここ数年は長いこと人間関係が“近いようで遠い”東京砂漠にどっぷりと浸かっていました。が、やっぱり「煩わしくとも近い人間関係から得られる何か」というのはとても重要であることも、頭のどこかで分かり始めていました。

「濃い人間関係」について、どちらかと言えばその煩わしさが強調されがちな昨今ではありますが、やっぱり「人は人との関係の中でしか見いだせない何かがある」というのは強く思うところです。

➂:徹底した「対話」の機会を与えてくれる。


「あなたの夢はなんですか?」という問いかけから始まり、学校では様々な質問を、仲間と共に語り合う時間が本当にたくさん持たれます。

対話の仕方も様々で、ある時は質問が書かれたカードを持って3人組で森に散歩に行きながらカードを引いて質問に答えてみたり、この方法はデートが盛り上がらない時に使える!という結論に至ったり(笑)。


*学校の周りはひたすら緑の平地が広がる山のないデンマークらしい環境。座るだけじゃなく外の空気を感じ歩いて対話することでまた違ったものが見えて来ることも。

ある時は10人くらいでそれぞれ「自分にとって大切なもの」を持ってきて毛布の下に隠し、ランダムに取り出してそれが誰のものかを当てながら、最終的に「それがどうして自分にとって大切なのか」をみんなに説明する、というものもありました。

そこでよく話したことがある子がIKEAのカップを持ってきて「自分がスェーデン人とのハーフであることが大切なアイデンティティである」ということをその時初めて知ったり、その他の人ではすごく辛かった時期に持っていたものを持ってきて、その頃の体験を話してくれたり。

不思議なもので「大切に思っていること」というのは相手に伝わりやすくて、すごくその人らしさを表す質問であるように感じました。

また、哲学だったりジェンダーだったり、ある時は「この音についてどう思う?」だったりとこれまで自分が考えたこともなかった様々な切り口で「あなたはどう感じて、どう思いますか?」を問われることは、とても新しい経験です。


*とある晴れた日の日曜日の中庭の風景。競争のない環境と仲間と共に過ごすこの穏やかな解放された空気感はフォルケ独特なもののようです。

フォルケの創始者・グルントヴィ氏は、19世紀の時代にまともに教育を受けることもなく貴族に搾取され人生を終える農民の層に向けて、「どんな人でも教育を受ける権利がある」という理念の元に、入学や卒業試験などが一切なく全ての民衆に開かれたこのフォルケホイスコーレという学校をスタートさせました。

そしてこのフォルケが、これまで「自分の人生」というもの振り返って考える暇もなくただ農業に勤しんでいた農民たちに、自分たちの権利を意識させより豊かに生きていくために立ち上がらせる原動力になった、ともいわれています。(ちなみにその話を聞いた時、当時の農民たちとこれまでの社会人生活で馬車馬のように朝から晩まで働いていた自分とが、うっかり重なって見えたことはここだけの秘密です(笑))

まだまだ始まったばかりのこのフォルケ生活。卒業するころには、果たして私の自己理解はどんな風に深まっているのでしょうか?たった3ケ月、されど3か月。後悔しないように走り抜けたいと思います。

プロフィール

寺崎 倫代(てらさき・みちよ)
早稲田大学商学部卒。幼い頃より「国が違えば価値観も常識も異なる」ことから視野を広げてくれる海外に憧れ、大学在学中に米国ワシントン大学のインターンシッププログラムで留学。卒業後は、フランス系の商社やインターネット広告代理店などを経てBBC(英国放送協会)の国際放送における広告部門にて6年間勤務。2017年4月より、かねてより憧れだったデンマークの成人向け教育機関・フォルケホイスコーレへ留学中。
読みもの&連載もの: 2017年04月26日更新

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