仕事に"迷える子羊たち"にもオススメ。映画『3月のライオン』

映画『3月のライオン』を見た。

原作は同タイトルのコミック。「ハチミツとクローバー」などでも知られる羽海野チカ氏による人気作だが、今回の実写化は原作のファンはもちろん、将棋好きも気になるところ。

プロ棋士たちの成長ドラマが描かれる本作からは、彼らの「働き方」も垣間見ることができるのでは? 厳しい勝負の世界に生きる棋士たちの物語には、仕事のヒントもあるのでは? そんな思いでワクワクしながら試写会場へと足を運んだ。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

主人公・桐山零には「仕事だけ」ある


映画では主人公である「17歳のプロ棋士・桐山零」を神木隆之介が演じている。彼は9歳の時に交通事故で両親と妹を失い、父の友人である棋士の幸田に内弟子として引き取られる。

中学でプロ棋士としてデビューした桐山は、中学生で入段した史上5人目の天才ともてはやされるが、幸田家には居場所がない。1年遅れで再編入した高校にも馴染めないでいるーーというのが、ざっくりしたあらすじだ。

居場所どころか彼には、家も、家族もない。義理の姉・幸田香子(有村架純)からは、「得意だもんね、不幸ぶって人ん家に踏みこんで、家族をめちゃくちゃに壊すのが」とまで言われてしまうのである。

「なんもねえってくらい…将棋しかねぇぇぇぇぇんだよ~っ!」と呻くような、それでいてビミョーに情けないような桐山(神木)のボイスを予告編でも聞くことができるが、これには思わずキュン♥となってしまうのである。

映画『3月のライオン』予告編

それにしてもやべえ…。17歳にしてこの運命。ここには仕事のヒントどころか絶望しかないのでは…。どうする? 神木、じゃなかった桐山。

正直言って大変な状況だが、逆に考えると彼には「将棋(仕事)」だけはあるのである。

ちなみに現実世界においてプロ棋士とは、棋士の養成機関「日本将棋連盟付属・新進棋士奨励会」を卒業後、四段に昇段した者を指す。

『プロ棋士という仕事』(青野照市著)という本によると、年にプロになれるのは4人だけ(特例を除く)という狭き門であり、晴れてプロデビューできた場合でも結果を出さなければ、年収もそれほど上がってはいかない。

つまり、エリート中のエリートが持てる才能を惜しげもなく将棋に注ぎまくり、互いにしのぎを削っているのがプロ将棋の世界。そんな"職場"で生きる人々はそれぞれに強烈な個性を持っていそうだが、本作でもキャラの濃い棋士が続々と登場する。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

「大切な何か」はどうすれば見つかる?


しかし、その棋士たちは「自分のエゴ」を満足させるだけでなく、「大切な何か」の存在を背負いながら戦っていたりする。

彼の"心友(ライバル)"である二海堂晴信(染谷将太)は難病を抱えながら「自分の命」を背負って将棋を指している。また、みずからの研究会を主宰している島田開(佐々木蔵之介)は故郷の「期待」を背負っている。後藤正宗(伊藤英明)は入院中の「妻の存在」を背負っている。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会


それぞれの棋士が大切な何かを背負い戦っているのに対して、桐山の「大切な何か」はなかなか見えてこない。ゆくゆく彼は何を背負うことになるのだろう? プロフェッシュナルとしてどう成長していくのか? それが「3月のライオン」の大きな見どころとなっている。

例えば、桐山が重要な対局で対戦相手(山崎順慶)のやり方に怒りを覚え、感情のまま指そうとするシーンがある。もちろん、怒りから最善の一手が打てるわけはない。そのままでは相手の思うツボにはまってしまいそうだ。

取引先とのやり取りなどでも、ありそうな風景。次の一手がビジネスの行方を決する。

その瞬間、桐山の脳裏をよぎったのは、二海堂の「カッコつけんな桐山っっっ!!!  もっと自分の将棋を~、自分を大切にしてくれっっ」という言葉だった。そこで我に返り、最善の一手を指すことができるのだが、これをきっかけに桐山は「自分を大切にすること」を自覚する。

二海堂のセリフの「将棋」を「仕事」に置き換えると、なんだか納得できるものもある。

©2017映画「3月のライオン」製作委員会


「自分を見つめ何かを背負って仕事をする人」と「自分を捨てて仕事だけに打ち込む人」。最後はどちらが勝つのだろう? いや、幸せになれるのだろう? 

映画の途中からはそんな思いでストーリーを追っていた。その意味でこの作品のテーマは、「自分だけでなく周囲の人々も含めた仕事への向き合い方」といったことになるのかもしれない。

映画では先に挙げた登場人物のほか、原作でもおなじみの魅力的なキャラクターやエピソードが楽しめる。

本作のタイトルは、「3月はライオンのように荒々しい気候で始まり、子羊のように穏やかに終わる」というイギリスのことわざにインスピレーションを得て生まれたものとのこと。社会人にとって3月と言えば年度末。「荒々しく」というより「慌ただしく」、早く終えてホッとしたい季節だが、プロ棋士の年度末ってどんな感じなんだろう?

それはともかく、ウサギを狩るにも全力で戦う「ライオン」タイプな人も、自分がどこに行けばよいか? に悩む迷える「子羊」タイプな人も勇気をもらえる2部作だ。

記事:河口茜(シゴトゴト編集部)

(公開情報)

映画『3月のライオン』
【前編】3月18日(土) 【後編】4月22日(土) 2部作連続・全国ロードショー

©2017映画「3月のライオン」製作委員会
配給:東宝=アスミック・エース
公式サイトURL:http://3lion-movie.com


読みもの&連載もの:2017年03月17日

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