1000人くらいの仕事でスゴい人たちにインタビューしてわかったことー徒然WORK NEWS(弥生の巻)ー

(「シゴトゴト」編集長カワジリが、仕事・働き方に関するニュースや思うことなど、思いつくまま気ままに書いていきます)

編集者、この浮き草な稼業にも根っこが必要だ


連載1回目、2回目は「働き方」についての本の紹介だったが、ここで自己紹介がてら「自分の仕事」の話を書いてみたい。

私の職業は「編集者」というものである。しかし、この仕事の内容を他人に説明するのはちょっと難しい。特に最近では本や雑誌を作るだけが編集者の仕事ではなくなってきており、"情報のなんでも屋さん"みたいなところもある。

なのでときには「銀河ライター」、ときには「キュレーター」、ときには「大学客員教授」の肩書きを名乗っていたり、それらを組み合わせたりしている。

直近1カ月に関わった仕事を思い起こしてもーーなぜかドローン映像を石垣島で撮影したり、地域の野外音楽フェスにクリエイターを招いてハイテクな装置でパフォーマンスしてもらう段取りを整えたり。かと思えば、都心に新しくオープンした飲食店街で10店ほど一気に食べ歩いたり、「仕事旅行」のエイプリル・フール企画を考えたりーーなどしていた。

なかには本や雑誌どころかネットの記事づくりさえ関係ない仕事もあって、自分でも「なんだっけ?本業」とちょっと迷子な気持ちになることも。人様からは「遊んでるだけじゃね?」と生温かい視線を浴びながら〆切には追われ、ヒーヒー言いながら1個1個片付けていくヘンな商売でもある。

そもそも編集者が「仕事旅行」のようなベンチャー企業に週一で通って、ネット記事作りを手伝うのはまだしも、商品の打ち出し方や新規事業の作戦を一緒に練ったりしているのも不思議と言えば不思議な光景だ。

"情報のなんでも屋さん"である私の日々は結構雑然と散らかっていて、人様に到底お見せできるようなものではない。カッコいいオフィスや工房、コスチューム等があるわけではなく、納品物もほとんど「モノ」ではなく「コト」と「コトバ」なので、そもそも見せるブツ自体が少ない。商売道具はパソコンとスマホのみ。ホントにそれだけ。あとは人がいればいい。

世に「浮き草稼業」という言葉があるが、まさにそんな感じかもしれない。しかし、浮き草とてフラフラと漂うだけでは枯れてしまう。どこかに根が必要だ。そして自分が仕事をする上でひとつ、ここだけは大事にしたいと思っている"根っこ"がある。

それは「インタビュー」というプロセスだ。インタビューの面白さ、難しさについては書き始めるとキリがないので短めにするが、これはとにかく重要。「話を聞くこと」「そこで出てきたネタをほかのネタと組み合わせること」は、自分にとってすべての仕事の出発点であるとさえ言える。

私にとって「打ち合わせ」も変形型のインタビューである。その場をご一緒している人々の話の中に、課題を解決するヒント(情報)は実はいっぱいある。あとは「①その中から使えるものを拾えるかどうか?」「②拾った情報の断片をパズル的に組み合わせて玉を作れるか?」「③その玉をシュートまで持っていけるかどうか?」である。

言うまでもなく③が一番難しい。これは「本気で実行するかどうか?」という話であるから。

この仕事の進め方は編集者じゃない人にもオススメだが(というか、無意識にはだれもがやっていることでもあるが)、そういった仕事術的なこととは関係なく、あるテーマ設定の元、そのことに詳しい人から話を聞き出すのは、単純に勉強と刺激になって面白い。

インタビュー1000人できるかな?


この仕事を始めたのが2000年なのだが、話を聞いた人の数はすでに1000人とか? 公開のトークショーなども入れるともっと多いかも。「クリエイター」と呼ばれる方々を中心に色んな職業の人々の話を聞いてきたが、それだけやっても飽きることがない。

で、この仕事を15年以上していて、ちょっとだけわかったことがある。それは「世界には色んな人がいて、色んなモノの見方がある」という超シンプルな事実だ。その人たちが悩んだり楽しんだりしながら、それぞれ一生懸命に毎日何かを頑張っている。当たり前のことに思えて、そのことはわかればわかるほど感動的ですらある。

というわけでトークショーの司会などの仕事もすぐ引き受けてしまうのだが、別にイベントごとが好きなのではなく、人の話を聞いてその場にいる人たちに"生の面白味”をおすそ分けするのが好きなのだ。公開トークでない場合は記事とか雑誌とか本のコンテンツになる。

その場合、話を聞いたあとに「書く」という工程が入るわけだが、こっちはなかなかツラい。取材対象者の数だけ書いていると考えると、記事も1000個以上やっているはずだが、「書く」のは慣れるということがまったくない(取材も慣れることはないが)。

何回やっても時間・手間暇超かかる。「書く」というのは基本的に、「話の内容(情報)」を企画や文字数などの諸条件に合うように、整理して読みやすく物語化していく作業だが、取材の場にあった空気のようなものまで「いかに活字で再現するか?」のテクが大切になる。

これをやったことない人は「インタビュー記事っていうのは人の話書き写してるだけでしょ?」と思いがちだが、答えはノンノン。「話された言葉」をそのまま活字化すると、言葉というものはなぜか勢いを失い、解像度も低くなり、伝わりが悪くなる。その人が「何を言いたかったのか?」のピントがぼやけてしまうのだ。

断片的な「情報」は、編まれ、文脈(物語)になって初めて人の心にすっと入る何か、つまりは「知見」になる。

つまり「書く」作業も、聞いた言葉という素材を組み合わせて美味しい料理に仕上げる「編集」という行為だが、この作業はなかなか注意が必要。やりようによっては読者の誤解を生んだり、意図的にヘンな箇所のみピックアップして、話した人が悪者であるかのように仕上げることだって簡単だから。

比喩としていうと、高級割烹風に編集することも、ファーストフード風に話を編集することもできる。中華風、フレンチ風もあるだろう。私はイタリアンな感じが得意である。

そう考えると、人の話を中途半端に編集するくらいなら、読む側のストレスが高くなるにせよ、まだ「全文おこし」のほうがいいとも言える。それは刺身にさえなっていない生の魚の切り身のようなものだ。「料理は読者のほうでやってね!」という話である。

政治家の発言や多くの人が関心を持つ社会問題の記者会見記録などは、面白さより正確さが大事なので、むしろ全文が望ましいケースも多い。ただ、それでは読み物としての上質感が出ない。

人によってはインタビューのみ、つまり素材の仕入れだけをやる編集者もいるが、私はできるだけ書くこと、つまり料理まで自分で作る。 

パソコンに向かって書いていると、硬い木を彫刻刀でちょっとずつ削りながら何らかの姿・形目指して掘り上げていくときの気分になる(彫刻やったことないが)。木の中にどんな形が埋まっているか? は掘ってみるまで実はよくわからない。ツラがりながらも書き進めて行き、ある一線を越えるとなぜか脳から気持ちよくなる系の天然物質が出始める。

そのあたり編集者は"情報職人"でもある。

いずれにせよ、いつも天国(飽きることなきインタビュー)と地獄(慣れることなき執筆)のあいだを行き来しているような感じ。なので書くときは「自分だけの"教科書"を作ってる!」みたいな気持ちに心を強引に持って行って、気持ち良さが出てくるまでコツコツやっていく。こちらは地味な作業である。

で、地獄を過ぎると、性懲りもなくまたノコノコとインタビューへと出かけていく。内仕事と外仕事のバランスがいい職業でもある。

「聞く」と「書く」。この2つがやれている限り「何とか食っていけるのでは?」という根拠ない自信はある。ちなみに私の場合、インタビューものではないこういう文章も、「自分にインタビュー」しながら書いている。

仕事欲が強い人からは濃い言葉のダシが出る


インタビューは面白い。話を聞く相手が「デキるな、おぬし…」という場合は滋養たっぷりのエキス(=高解像度な生情報)がたっぷり摂れる。一方で「絞っても絞っても全然果汁が出てこねえ!」とか「なんだか苦い汁出てきちゃいました…」みたいなケースもないわけではないが、それはそれで面白い。

なぜだか理由はよく分からないが、饒舌な人より寡黙な人のほうが書いてみたら記事としてジワッと読み応えあるものになった、みたいなこともよく経験するのだ。

インタビューの際「相手が有名人であるかどうか?」は本質的には関係ない(記事のPVとかには関係ある)。子供の話でも興味深い。その意味では人間は全員すごい。しかし、有名であれ無名であれ、仕事で面白いことをやれている人たちや何かをやりたい欲望が強い人たちは、やっぱり話の中から「取れるダシも深くて美味い!」という傾向はある。

その人しか言えないこと、熟成された「言葉」がジュワッと沁みてくる。「日常会話」だとそんなことないかもしれないが「インタビュー」になった瞬間、ほとんどの人は本気出す。普段よりワンレイヤー高いステージでの「おしゃべり」になるから、話の養分も濃い。

ひとつ注意なのは、"インタビュー"と"アンケート"は似て非なるということ。アンケートは質問に対する答えを得るもの。一方、インタビューは英語で「Inter-view」と書くように、言葉のキャッチボールの中から「視点」を発見・共有するもの。話し手と聞き手が一緒に作っていくところがあって、何と言ってもそれが醍醐味だ。アンケートとインタビューの真ん中くらいにあるのが「ヒアリング」というものかもしれない。

相手から「こんなこと考えてたなんて、自分でも初めて気づきました」と言われたとき、そのインタビューはうまくいったと思う。「話が盛り上がった=成功」ではない。

ちなみに私がいま担当している連載モノのロングインタビュー企画は2つ。ひとつは「賢者の仕事、賢者の健康」というもの。こちらは「働く男たち」に向けた第一三共ヘルスケアさんの情報サイト「おれカラ」で読める。私のほかにドランクドラゴンの鈴木拓氏、『孤独のグルメ』の原作者・久住昌之氏も連載している。

もう1年くらい続いているのでこのタイミングで振り返ってみると、月二更新(前編・後編)で計14名の方のお話うかがっていた。

1.スタジオジブリ・鈴木敏夫氏:「我慢しない。負けたくない。それが僕の健康の秘訣かな?」
2.脳科学者・澤口俊之氏:「あまり信用しなくていいんですよ、脳科学の話なんて」
3.放送作家・倉本美津留氏:「ひとことで言うと、この歳になってもアホなんです」
4.サッカー選手・中村憲剛氏:「サッカーって“毎秒がプレゼン”みたいなとこあるんですよ」
5.作家・椎名誠氏:「そもそも『あやしい探検隊』には人事部なんてありませんから
6.経済評論家・勝間和代氏:「汚部屋から脱出すると“気持ちの健康”を取り戻せる」
7.俳優・藤本隆宏氏:「不器用なんでしょうね。自分がいるのは周りの方々のおかげです」
8.元マラソンランナー・有森裕子氏:「無理なく、楽しく、気持ち良く。有森流トレーニングのすすめ」
9.俳優、司会者・谷原章介氏:「毎日の繰り返しの中に、とても大事な気づきがある」
10.脚本家、映画監督・北川悦吏子氏:「私の書くものって、本当にラブストーリーなんですかね?」
11.弁護士・北村晴男氏 「弁護士というのは、“ストレス請負業”ですから」
12.料理人・陳建一氏:「大事なのは『この人のために作るんだよ』と思えるかどうか」
13.ファイナンシャルプランナー・熊谷周一郎氏:「働く男も活用したい!セルフメディケーション税制」
14. 陸上競技部監督・苅部俊二氏:「仕事を成功させる日本の"パスワーク"」


「賢者の仕事」は仕事旅行の主なユーザー層より少し上の世代を意識した読み物にしているが、様々なジャンルで活躍する人たちの仕事観がよくわかる。ゲストそれぞれの物語や才能は多彩でありつつ、仕事の"賢者たち"に共通しているのは、「仕事とは楽しいもの」と思っていることと「思ったことは率直に言う、そして"やる"」の2点。

いまのところ、そうじゃない人は一人もいなかった。もちろん、「活躍してる人」前提のインタビューで仕事のことを聞かれて「楽しくない」とは言いにくいだろうが、好きなことに全力で打ち込めることを「才能」と呼ぶのだ、ということはわかる。

もうひとつの連載はココ。「仕事旅行」サイトでの1万字インタビュー「あの人が語る仕事論」。こちらもほぼ月二で更新。お笑い芸人から伝統技術ディレクターまで、すでに6名の方のお話うかがった。

いずれの連載も「働き方」のヒントがてんこ盛りだ。興味ある方は"読む仕事旅行"としてご活用いただければ幸い。ここまで読んでくださった方は、いままでと少し違う心持ちでインタビュー記事も楽しめるようになるかもしれない。同じ人の話でも書く人が違うと、中身もまるで変わってくるのである。

100%他人の話なのに「私はこう聞いた」という解釈が必ずどこかに忍び込む。それが我々にとっての"表現"だ。

で、私のようなヒネくれた編集者の場合、記事の読了者率なども予想しつつ、お宝情報や炎上リスクも伴う刺激的な情報は読んでくれた読者へのサービスとして、あえて最後に持ってくることもある。

ネットでは「ユーザーが記事をどのあたりまで読んでいるか?」といったことまでデータでわかるのだが、このように原稿用紙10枚もある記事を最後まで読み通す人はかなり少ない。スマホで読んでいるならなかなか大変だろう。つまり、ここまで読んでいる段階で、その人はすでに何かのハードルをクリアしている。

そういう人は「編集者になれる」可能性が高い! こういったことに興味があるわけなので。

そして、ここで思いっきり宣伝であります。仕事旅行社「編集部」では社会人インターンを大募集中(※週一水曜勤務。リモート作業も多少あり)。今日ここで書いたような「"天国と地獄"を行き来する仕事で揉まれてみたい!」方は、以下よりお申し込みを。本採用になるとアルバイト料もお支払いいたします。キツいお仕事ではありますが、「やりがい」と「面白み」には恵まれています。

仕事旅行社「編集部」春のインターン大募集!(※採用者が決まり次第締め切りとなります。2017年3月8日現在)

文:河尻亨一(銀河ライター・シゴトゴト編集長)

当連載のバックナンバー
1:どんだけフリーダムに働いてたんだよ? 昔昔昔の日本人て
2:イマドキの"働きマン"はカメレオン? 星野源『働く男』を読んだ

プロフィール

河尻亨一(かわじり・こういち)
銀河ライター/東北芸工大客員教授。1974年生まれ。雑誌「広告批評」在籍中に、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。仕事旅行社ではキュレーターを務める。アカデミー賞、グラミー賞なども受賞した伝説のデザイナー石岡瑛子の伝記「TIMELESSー石岡瑛子とその時代」をウェブ連載中。


読みもの&連載もの:2017年03月08日

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