2017年02月06日更新

「大間のマグロ一本釣り」をめぐる3つのバトルースキマな仕事から見える世界 vol.14ー

年が明けると築地の「マグロの初セリ」が話題になりますね。縁起物でもある大マグロを、「だれがどれくらいの価格で落札するのか?」に注目が集まるわけですが、最高値のマグロは今年も「すしざんまい」などのチェーン店を展開する喜代村が6年連続で落札。

1匹のお値段は7420万円でした(212キロ)。ちなみに1キロあたりの価格は前年の5倍となる35万円です。

★参考記事:マグロ初セリ、最高値は前年5倍の7420万円(「日経新聞」より)

築地の初セリと言えばなんと言っても「大間産のクロマグロ」。大間のマグロ漁の模様を紹介する特番も人気ですね。そこで今回は巨大マグロと格闘する漁師の仕事について調べてみました。

大物との仕事は格闘である


まず大間とは、本州の最北端に位置している青森県の大間町(大間岬)のこと。ここで獲れる「クロマグロ」(別名「ホンマグロ」)は、マグロの中で最も大型の種類。なかでも大間産はこの時期高値が付き、「黒いダイヤ」と呼ばれることも。

大間のマグロと言えば「一本釣り」をイメージしますが、そもそも「マグロの一本釣り」とはどんなものなのか? 大間町のウェブサイトに詳しい解説がありました。一部引用してみましょう。

「針の先に、いかやブリの幼魚などの生餌や、大間の漁師秘伝の死んだサンマやトビウオなどを生きているかのように見せる仕掛、疑似餌を海に投げ入れ、マグロのヒットを待つ。かかったら、基本的には手で引いて巻き上げる。(巻揚機を使用している人が多い。)

最近では船の近くまで来たら、電気ショッカーというものを使うことにより、マグロを一時的に感電、失神させて容易に水揚ができるようになり、マグロが一番暴れる船際で取り逃がすことは少なくなっている。そして最後にモリをマグロの急所であるエラ付近に刺しとどめを刺し勝負は終わる」(大間町ウェブサイト「マグロの情報」より


「とどめを刺し勝負は終わる」という締めくくりがなんだかリアル。大間町では一本釣りのほか延縄漁法も行われているようですが、この仕事はまさにマグロとの格闘なのでしょう。ヘミングウェイの小説「老人と海」を思い出します。

「老人と海」ではキューバの老漁師サンチャゴが、なんと4日間にわたり巨大な一匹のカジキと死闘を繰り広げます。4日というのはさすがに物語ならではの脚色も含まれているのかもしれませんが、大物をモノにするには体力だけでなく、熟練の技や粘り強さが求められるということでしょう。

大間のマグロ漁でも一匹を釣り上げるまでに数時間を要することもあるそうです。ヒットしてからも一瞬のスキが命取りとなるためまったく気を抜けません。

釣り上げたら終わりというわけでもありません。マグロの鮮度をキープするため、船上で血抜き中〆作業を施します。スピーディさが求められ、カラダとアタマをフル回転させる現場です。

ちなみにひとつの目安として、100キロを超えるマグロが大物とされるよう。このクラスでは体長も2mを超えてくるそうです。


参考写真

世の中に釣る人、そして釣られる人


「大物を釣り上げたい!」という思いは、マグロに取り組む漁師たちにとって共通のもの。それを実現するため、日頃から漁のスキルを磨き、工夫を重ね、餌へのこだわりもすごいようで、前述のサイトによれば「エサにするトビウオを買い付けに富山県まで出向く漁師もいる」とのこと。

テレビ番組でも「秘伝」とされる仕掛けの部分にはボカシが入り、漁具を映されることに難色を示す漁師さんも出てきましたね。

そう考えると、マグロの一本釣りという仕事はある種の"格闘技"であり"職人芸"の側面も強いのかもしれません。その一方でコンピュータ制御の巻揚機の導入など新しいテクノロジーを取り入れていくところは"エンジニア"的でもあります。古来より続く「マグロを釣る」というシンプルにも思える仕事に、「心・技・体」の様々な要素が濃縮されているのではないでしょうか。

そして、その年で一番の大物を釣り上げた漁師はまさにヒーロー。水揚げ金額によって上位の漁師は表彰されるそうですし、釣ったマグロが高値で取引されれば収入も上がるでしょう。

しかし、並大抵でない努力をしても魚相手の商売ですから、思うような大物が常にヒットするとは限りません。しかも大間でマグロ漁ができるのは、およそ8月から翌年1月までの5ヶ月ほど。何年も大物に恵まれず、不遇の時期を過ごす漁師さんもいるなど、運に左右される仕事でもあります。

そういった「仕事にかける漁師の人間ドラマ」はいつの時代も人々の共感を呼ぶようで、大間のマグロ漁をめぐっては過去から現在に至るまで、数々のテレビ番組、映画、小説などが制作されてきました。近頃ではインターネットで、まるで"タレント"のようにもてはやされる人気漁師もいます。

テレビ朝日とテレビ東京による密着ドキュメンタリーもいまや恒例となっていますね。

この年末年始もテレビ東京では「巨大マグロ戦争2016」、テレビ朝日では「マグロに賭けた男たち2017」を放送していました。両局の番組は出演する漁師や企画など、同じ大間のマグロ漁に取材していても、番組としてフォーカスする部分がかなり異なり、以下のようなレビュー記事が書かれるほど。

★参考記事:恒例マグロ対決を検証。テレ朝マグロとテレ東マグロ、今季はどっちが凄かったか(「exciteニュース」より)

漁師たちとマグロのバトルの向こうでテレビ局の熾烈なバトルも繰り広げられていると考えると、何かがグッとこみあげてきます。たとえ漁師さんに怒られることがあろうとも、「いい絵」「いい話」を狙って密着を続ける撮影クルー。

そこに「いくらで競り落とすか?」という寿司屋さん同士のバトルも加わり、ある意味「互いのスキマにどう入りこむか?」の三つ巴の争いとさえ言えそうです。

漁師はマグロを釣り、テレビ局は視聴率を釣り上げたいと思い、セリで釣り上がるマグロの値をにらみつつ話題性も考慮して、イキと縁起のいいネタでお客さんを釣りたい寿司屋さん。

思わず「すべての仕事はフィッシングである」との名言(?)も脳裏に浮かびます。かくして日本の年末年始はマグロで大いに盛り上がり、その"ネタ元"である大間産マグロが「ダイヤ」に例えられるのもなんだかうなずけます。

記事:シゴトゴト編集部
読みもの&連載もの: 2017年02月06日更新

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