鯨本あつこのシゴト旅 vol.2ー仲間は東京、私は沖縄、出張先は離島ー

今回は私の働き方について綴りたい。離島経済新聞社(以下、リトケイ)のオフィスは東京にあって、常勤や非常勤のパートスタッフを含めて5〜6人が出社している。2年前までは私もそこに居たのだが、出産をきっかけに東京を離れ、いまは沖縄本島の那覇市で暮らしながら、東京オフィスや離島地域に出張している。

ご承知の通り、沖縄県は47都道府県のなかで最も南にあり、有人離島もたくさんある。ブーゲンビリアやハイビスカスが一年中咲き誇り、島唄、三線、泡盛、温かな人々の雰囲気、方言、シーサー、真っ青な海など、目にも鮮やかなものごとで溢れている。

そんな沖縄には、この暮らしにあこがれて移住する人も多く、私もそんな人々が感じているだろう土地の魅力を感じていて、厚手のコートを着てブルブル震えていた12月に、Tシャツに薄手のパーカーを羽織って、スーパーまで散歩しながら、近所でごろごろしている猫たちや、庭木として植えられているパパイヤやバナナの熟し具合をながめるような日常を楽しんでいる。


写真:鯨本あつこ氏提供

夫婦で同じ仕事をするということ。仲間とリモートで働くということ


ただ、私たち家族がここに暮らしはじめた理由は、ここが夫のふるさとであり、子育てをしながら仕事を続けるには、私か夫、どちらかの実家のある場所でなければ、健全に暮らせないと思ったからだ。

東京で出会った10歳年上の夫は、那覇育ちで身長190cm。身長80cmの子どもと並ぶ姿は、さながら『モンスターインク』に出てくる青いモンスター。実際、40歳過ぎで生まれた愛娘の笑顔にデレデレおぼれるやさしい子煩悩なので、出産しても働いていたかった自分にとっては、願ったり叶ったりの状況である。

そんな彼は実家の家業に就きながら、リトケイの営業担当としても活動している。夫という人生のパートナーが、仕事とプライベートの両方のパートナーであることを他人に言わせるなら、「いいですね」でもあり「大変ですね」である。

夫婦で同じ仕事をしていれば、生きていくために重要な仕事や、うれしいことや、辛いことを常に共有できるから「仕事の理解がない」ということが起きにくい。一方、家族団らんのリラックスタイムになるはずの時間に、シビアな業務報告で火花を散らしてしまう事態もしばしば……。

だから夫婦で仕事を共同することを可とするか不可とするかは、夫婦の価値観次第として、勧めもしなければ否定もしない。私の場合は、自分の両親を筆頭に、夫婦で仕事をしているお手本が身近にあったので、「大変ですね」をなんとなく乗り越えながら、夫婦でなかよく漁に出かける漁師家庭のようになっていけたらいいなと夢見て、日々の火花を交わしている。

そんなわけで、私たち夫婦は那覇、ほかの仲間たちは東京というリモート環境で仕事をしている。出張のない日の働き方を説明すると、毎朝6時頃に起きて7時45分までに保育園に出かける子どもを送り出したところから仕事がはじまる。

今のところ、私の職場は自宅マンションの一室なので、通勤時間はゼロ。8時頃から業務をスタートし、10時になったら東京オフィスとテレビ電話をつないで朝礼に参加。東京オフィスの仲間たちと顔を合わせ、15分ほどでその日の業務タスクや連絡事項を共有し、18時に子どもが帰ってくるまでの間に、資料を作ったり、電話をしたり、テレビ会議で打ち合わせをしたりしながら、1日の仕事をこなしている。

こんな働き方は、美容師とか大工さんのように、直接自分の手が触れることで価値を生み出している職業になるとさすがに難しいが、私のように、企画を立てたり、原稿を書いたりする仕事なら、大抵のミッションは完了できるので、オフィスに生身を置いておかなくてもどうにかなっている。

リトケイは離島地域を対象に仕事をしているので、東京オフィスの仲間も度々出張に出かけている。それでも業務が止まらないのは、メール、テレビ電話、チャット、情報管理システム、ファイル共有サービスなどのツールをあれやこれやと駆使しているおかげで、インターネット様様である。


写真:鯨本あつこ氏提供

時間のロスを減らすため朝礼はテレビ電話で行っている


最近発行した離島専門新聞『季刊リトケイ』では、「島の暮らしとインターネット」を特集した。このところ離島界隈では、シェアオフィスやコワーキングスペースがつくられる動きが目立っているが、私はそれを「ネットさえあれば島でも仕事ができる」ことの表れだと感じている。

考えてみれば、商社マンでも、役場の職員でも、なにかしらのツールを使って、遠く離れた同僚や取引先の担当者とコミュニケーションをとりながら仕事をしているわけだ。国としても、東京への人口集中を是正するために地方創生を掲げて地方移住を勧めているわけなので、コミュニケーションとデータの共有で仕事ができる職種なら、リモートワークに踏み切る人も増えるかもしれない。

私が日々の業務でコミュニケーションをとっている相手は、オフィスの仲間、島々に暮らす人、インタビュー対象者、ライター、カメラマン、デザイナー、広告代理店、企業、市町村や都道府県や国の担当者など。CCメールも含めると、毎日やりとりしているメールは、少ない時で数十件、多い時で数百件。未読メールが山になるとクラクラする。

この手の戦いはリモートワークの定めと考えられるが、この辺りに潜む課題も押さえておきたい。

たとえば、メール、チャット、社内システムなどを使ったコミュニケーションが増えると、あちこちのツールを行ったり来たりしなければならないし、どこのタイムラインで話したっけ? みたいな迷子が発生する。

また、デジタルネイティブな若者や、ソリューション好きでない場合、ツールを使いこなせるようになるまでにある程度の時間がかかり、苦手な人の場合、初歩的なミスで連絡が途絶えたりすることがある。

さらに、同じ部屋にいれば10秒で済むような確認ごとを、メールでもらってしまうと、メールに気づくまでの時間と、メールを打ち込む時間がかかってしまい、これが積み重なると膨大な時間ロスになる。

そして、報告や相談ごとをメールで送っても、文面にわかりにくい点があれば「あれってどういう意味?」みたいなコミュニケーションが2周も3周もしてしまい、時間がもったいない。

これらはリモートワークにおける基本的課題の一例。リトケイで行っているテレビ電話の朝礼は、コミュニケーション時間を短縮するための工夫でもある。

テレビ電話なら同じ空間にいるようなコミュニケーションがとれるので、つなぎっぱなしにしておけば「あの資料どこにあるっけ?」みたいな会話も容易。東京オフィスに来たお客さんにモニター越しで挨拶すると、「思いのほか普通ですね」と言われることも多い。

ただ、顔が見えるといっても、正直なところ、すぐそばにいれば感じ取れるはずの仲間の「疲れ」とか「焦り」とか、相手の温度を細かく感じとることは簡単ではない。

ひとりひとりの温度や、チームの温度を確認すべく、月1〜2回は東京オフィスに出社しているものの、いつも対外的な用事でスケジュールが埋まり、時間切れになっているので、来年は定期的にどこかの島へ合宿に行こうと目論んでいる。

会社にしてみれば、ひとつのオフィスで働いてもらったほうが効率的なので、リモートワークはある意味、非効率かもしれない。でも、vol.1で「人生の大部分を当てる仕事なら、大事な人に喜んでもらえることがしたい」と書いたことを叶えるには、仕事の効率だけでなく、プライベートの充実も考えたい。

リトケイの場合、自分が先陣を切ってリモートワークになったから、育児や介護がある仲間が、日によってはオフィスに出社せず、自宅作業で仕事をするようになっていて、それはとてもいいことだなと思っている。

リトケイの働き方は、私が沖縄に移住した頃からガラッと変わった。それから大きな問題なく続けてこられた最大の理由は、仲間の理解と、見えないところでちょこちょこフォローを入れてくれる思いやりがあったからだということを、最後に特筆しておきたい。

と、ここまで書いたところでvol.1で(島の何がよかったのかはvol.2で記します)と書いた内容に辿りつけなかった。次回vol.3にてたっぷり説明します。

当連載のバックナンバーはコチラ→鯨本あつこのシゴト旅 vol.1ーリトケイができるまでー

執筆者プロフィール

鯨本あつこ(いさもと・あつこ)

1982年生まれ。大分県日田市出身。NPO法人離島経済新聞社の有人離島専門メディア『離島経済新聞』、タブロイド紙『季刊リトケイ』統括編集長。一般社団法人石垣島クリエイティブフラッグ理事。地方誌編集者、経済誌の広告ディレクター、イラストレーター等を経て2010年に離島経済新聞社を設立。

編集デザイン領域で、地域メディアのプロデュース、人材育成、広報ディレクションを担当。世田谷区三宿エリアの活性化事業「世田谷パン祭り」、奄美群島のフリーペーパー「奄美群島時々新聞」、石垣島にゆかりのあるクリエイターを掘り起こす「石垣島Creative Flag」等のプロジェクトに携わる。2012年ロハスデザイン大賞ヒト部門受賞。2013年TEDxTokyo登壇。美ら島沖縄大使。『離島経済新聞』

読みもの&連載もの:2016年12月21日

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