2016年12月05日更新

田中翼の「あの人の仕事場に行ってみた日記」vol.1ーこうして僕は仕事旅行をつくったー

仕事旅行社、代表の田中です。「シゴトゴト」で新しく連載を始めることにしました。

ところで僕の趣味は、釣りとディープな酒場めぐり、そして様々な仕事をしている方々のオフィスや仕事場を訪問してお話すること。

言わずもがな3つ目は僕にとっての仕事でもあります。仕事旅行社の立ち上げからすでに5年たちましたが、「見たことない仕事」との出会いはいまも続いており、「世の中にはこんな仕事をしている方もいたんだ!」と驚きの毎日です。

つまり僕自身が仕事旅行を続けており、そこで得た刺激が自分自身、働く大きなモチベーションになっているのです。

そこでこの連載では、僕が日々の仕事の中で訪れた仕事場とそこで働く魅力的な人の横顔を、記事の形でみなさんにシェアしたいと思っています。

長丁場の連載ですから、まずは自己紹介も兼ねて、職業体験を提供する「仕事旅行」という不思議なサービスがなぜ生まれたのか? 当時のことを振り返ることから始めたいと。

内容的には「起業」に関心がある方向けの記事になるかもしれませんが、そうでない方も「世の中にはこんな人もいるんだ」くらいの感じで、気長に気楽におつきあいいただけるとうれしいです。

30代、未経験からの起業。それまでの経験はあまり役に立たなかったが、不思議と不安も無かった


仕事旅行の参加者には、新たな仕事や生き方を始めたい人がいる。そのほとんどが未経験の仕事や異業種への転職を願っている。僕自身もいわゆる異業種転職(起業)を願っていた一人。前職は今の仕事とは直接的な関係はない。

そのためか、「30歳、未経験、転職(起業)」と「リスク」に関して話をすることが多い。そこで、今回僕が仕事旅行を立ち上げに際して、どう不安に対応していたかをまとめてみた。

まず初めに、仕事旅行社を起業したのは32歳のとき。いわゆる世間的には厳しいとされる30歳以上、未経験、転職(起業)でのスタートだった。

ちなみに、前職は金融業。誤解無きよう補足しておくと、銀行や証券や運用会社で、分析とか、経営に役に立ちそうな知識が身につくような仕事をしていたわけでもない。いわゆる営業だったり、資料作成だったりと人を相手にすることの多い仕事だった。仕事旅行で活きるスキルや経験が何なのかと言われると答えにくいが、仮にそういうものがあるとしても、まったくの業界未経験者だった。

つまり、前職の経験は役に立たないところからのスタートだった。

この話をすると、自然な流れで「不安はなかったのか?」という質問をいただく。答えから言ってしまうと、不安はなかった。まったくなかったといえばウソだが、清水の舞台を・・・というほど、大きなものではなかった。その理由をまとめてみると、大まかに三つほどある。

1. 普段の生活にあまりお金が必要なかった。
会社を立ち上げるか立ち上げないかの時期に、東京都内から、地元である神奈川県の端っこのほうに引っ越しをした。起業に向けた準備というよりも、元々大好きだった地元に住みたいという漠然とした思いからだった。

いざ引っ越してみると、ずいぶんと出費が減ったのを覚えている。例えば、家賃は都内に比べて30%くらい低下した。買い物などで過ごしていたのが、釣りだったり、バーベキューだったり、自然の中で遊ぶことが増えた。

結果的に遊び一回あたりに使う金額が一桁くらい変わったんじゃないだろうか? 仕事は変えていなかったので、金銭的にほんの少し余裕が出てくると、少し給料が減っても良いのではないかという気持ちになっていった。

2. 初期投資があまりかからなかった。
会社を興して、店を構えたり、設備投資したり、在庫を持ったりとなれば、初期投資としてそれなりのお金が必要になる。一方で、仕事旅行社の場合は店舗も設備も在庫も必要なかった。固定費は人件費と、オフィスの家賃くらいのもの。

詳細をお伝えすると、仕事旅行の創業時は、メンバー3名全員が仕事を掛け持ちしていた。そのため、給料は、売り上げが出たときだけでOK。シェアオフィスに入っていたので、家賃は月に数万円程度で足りる。当初の資金はほとんど不要だった。

あえて初期にかかった費用を挙げるのであれば、登記費用とロゴデザインくらいのもの。併せて30万でおつりが来たような記憶がある。サラリーマンの預金でも十分に支払える金額でスタートできたため、あまりリスクという感じではなかった。

3. ダメだったら、ほかのことをやればいい。
僕は教員の両親の影響から、教育の世界に興味がある。ちなみに、仕事旅行も教育的なサービスという風に考えている。なので、もし仕事旅行がダメだったら、他のやり方で教育を目指そうと思っていた。

実際に教員免許も持っていたので、ストレートに先生になるという方法もあり得るし、塾の講師をやるというのもありかもしれない。キャリアカウンセラーの資格を勉強して、そっちに進むというのもアリだ。

だからこそ、まずは一番チャレンジングなことをやってみよう、だめだったらそのとき考えようというくらいに考えていた。ほかのメンバーはどう思っているのか詳しく聞いたことはないが、それぞれの他にやりたいことを持っていて、ダメだったらそっちをやればよいと思っているのではないか。

「30歳、未経験、転職(起業)」を背景にした「不安」に関する質問を受けるたび、深く悩み、そしてそれを乗り越えたストーリーを期待されている気もする。ただ、読んでいただいてわかる通り、実はそんなたいそうなものはどこにもない。そもそもあまり不安だと思っていないのだ。

といいつつも、仕事旅行の構想を始めてから、実際に立ち上がるまでは2年間もかかっている。いま振り返ってみると、立ち上げを妨げていたのは、「不安」よりも「行動力」や「思い切り」の無さだったような気がする。

世の中には楽しくて儲かってる会社もある。これはいったいどういうことなんだろう?
では、なぜ「職業体験」に着目したのか? 2006年にオープンしたキッザニア東京はすでに話題になってはいたが、5年前はいまと異なり、「仕事」や「働く」ことに軸足を置いた大人向けの体験サービスはほぼなかったのではないかと思う。

仕事旅行の着想は、とあるベンチャーを訪問したことがきっかけだった。おかたい金融の仕事をしていた自分にとって、自由な空気というのだろうか? そこで働く人たちが心底楽しそうに仕事をしている風景はまさにカルチャーショックだった。しかも話を聞くと、その会社の事業は着実に成長している。「どういうことなんだろう?」と思った。

世の中には「仕事とは楽しくない」もの「お金を稼ぐために仕方なくやるもの」という固定概念のようなものがある。僕自身、そう考えていたきらいもあった。しかし、この会社を訪問することで、それまでの常識はどこかに吹っ飛んでしまった。

僕と同じような体験をすることで、刺激を受けたり、視野が広くなったり、新しいビジネスを興そうと考える人もいるのではないか? 少なくとも「仕事を楽しんでいいんだ」と思える人が増えるのでは? 世の中に大きなニーズがあると考え、ウキウキしながら当時一緒に働いていた同僚に話をした。

「新しい仕事」を始めるときは、それを否定する人と距離をとる。伝わるコミュニティへと引っ越しする


しかし、同僚から返ってきた反応は、極めて冷たいものだった。

「自分の仕事でいっぱいいっぱいなのに、別の仕事に興味はない。」

・・・恐らく自分の口では魅力をうまく説明できていなかったんだろう。

だったら、一度文章にまとめてみようと考えた僕はネットや書籍を頼りに、書いたこともない企画書を作ってみた。

「なんでわざわざ自分の時間を削って、さらに仕事しなきゃいけないの?」

またしても撃沈。

・・・僕のアイディアがそもそも間違っているんだろうか。

でも、自分が体験した限りでは、視野が広がったし、価値があったけれど。

企画書がまずかったのかなと考え、再度練り直し、今度はほかの同僚数人に話をしてみる。
「お金を払って、人の仕事を体験する? そんなのだれがやりたいの?」

やっぱりネガティブな反応。再び、練り直す。人を変える(×10回)。

・・・結局反応はほとんど変わらず。さすがに凹んだ。

そんな中、とある大人向けの学校に参加した。懲りない僕は、そこでも再び企画書を発表する。

どうせまた否定されるんだろうと思っていた僕は、再び衝撃を受けた。

「面白そう!」「やってみたい」「手伝いたい!」と今までとは180度違う意見が返ってきたからだ。肯定的な意見をもらうばかりか、中には一緒に企画書を作ってくれる人も出てきた。

当時は「やっと認めてもらえた!」としか考えていなかったが、いま振り返ってみると、当たり前の結果だったのかもしれない。

僕が最初に話を持ち掛けていた前職の同僚は、黙々と仕事をこなすタイプのいわゆる会社員。仕事に不安や不満は持っていても、基本は現状に満足している。一方で、大人向けの学校に通っていたメンバーは、自分でもイベントを運営したり、なかには会社を立ち上げたり、新しい企画が大好きな面子。

会社でかかわっている人と、大人向けの学校に通うメンバーは、まったく別のコミュニティに属していた。コミュニティが違えば、反応も違う。結局、周りの反応の違いは、企画の良し悪しではなかった。

この経験から僕は「新しい仕事」を始めるときは否定する人と距離をとるということを学んだ。度胸のいることだが覚悟を決めて、自分から新天地へ引っ越す必要があるのだと思う。

そこからはとんとん拍子で話が進んだ。一緒に企画を練ってくれたり、好意的に意見をくれたりする仲間ができた。言うまでもなく、その後しばらく前職の同僚たちに意見を求めなくなった。

もちろんネガティブな意見を否定しているのではない。ある程度具体化してから、企画を多くの人に受けるようにしようと思えば多くの人の意見を聞くことは大事。でも立ち上げ段階の右も左もわからない状況で、否定意見は不要だ。

否定ばかりされている中で行動するのは、相当の自信や確固たる根拠が必要。でも、これからやろうとしていることに、そんな自信や根拠なんて持てるはずはない。だから、何か新しいことを始めたいのなら、認めてくれる人の中に自分の身を置くことが大切。でないと、企画そのものが立ち消えになってしまう。

最初はこんなに長く続くとは思っていなかったが、仕事旅行を5年やってみて気づいたことがある。同僚からは完全否定されたが、世の中には思いのほか多く、自分の居場所と感じられる働き方のコミュニティを求めている人が多くいるものだ。

それと同時に、自分たちのコミュニティにフィットする仲間との出会いを求めている会社や人もたくさん存在する。

そして、数多くの職場を訪問し500以上の職業体験ツアーを企画することで確信したことがある。仕事旅行は職業体験というきっかけを通じて、人を普段は行けない場所へと誘う、世にも珍しい「旅行会社」なのだと。

こんな会社がひとつくらいあってもいいと思っている。

執筆者Profile

田中翼(たなか・つばさ)。仕事旅行社代表。
連載もの: 2016年12月05日更新

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