2016年11月18日更新

ファクトリエ代表・山田敏夫「仕事」を語る(前編)ー仕事が私事になるとき新しい価値が生まれるー

様々なジャンルで、世の中が面白くなるような仕事をしているトップランナーたちが、その人の「仕事を語る」インタビューシリーズ第3弾。今回のゲストは山田敏夫さん(ファクトリエ代表)です。

※バックナンバーはこちら→あの人が語る「仕事論」

山田さんは2012年、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」を立ち上げました。

ファクトリエは現在、高い技術力を誇る全国40以上の工場と提携、それらの工場のタグが入ったアパレル商品をオンラインで販売するだけでなく、フィッティングスペースとして直営店をオープンするなど注目を集めています。

「日本の工場から、世界一流ブランドを作る」ことを目標に仕事を続ける山田さん。ファクトリエの考える「ものづくり」や、「働き方」について聞いてみました。

聞き手:河尻亨一(銀河ライター/仕事旅行社・キュレーター)
撮影:内田靖之(仕事旅行社・旅づくりニスト)※山田氏のポートレイト以外の写真はファクトリエ提供

コスト削減だけが選択肢ではない


ーーそもそも「ファクトリエ」とは? というあたりからうかがってみたいと。ファクトリエは日本の工場で生産した商品を、商社や卸売り業を通さず直販しています。なぜ山田さんは「工場」と「直結」ということに着目したブランドを立ち上げたんでしょう?

山田:危機感ですね。「このままだとメイドインジャパンはなくなってしまうのではないか?」という。

例えばアパレル製品の国産比率は、1990年に50パーセントを超えていたのが、2010年には5パーセントを切っています。20年で10分の1以下に減ってしまったということです。

なぜそうなったか? と言うと100円ショップのコップと職人がろくろを回して作ったコップが、「水を飲む容器」として同じ価値のものだと捉えられるようになったのが大きいと思うんですよね。

ろくろを回した職人に、「なんでこれ1万円もするの?」って聞いてしまう人がいるわけなんですよね? 本当は全然違うものなんですけど、いまってアパレルだけではなく、こういうことがすべてのモノで起こっていると思うんです。



アパレル品国産比率は1990年の50.1%から2009年には4.5%まで減少(経済産業省「繊維・生活用品統計月報2010年」)※グラフはファクトリエのウェブサイトより。

ーーモノの形をつくるデザインなんかもそうですね。根深いデフレマインド。ものだけでなく仕事自体の価値も下がっていると感じます。

山田:そういう時代にものづくりをするなら、選択肢はふたつあると思います。ひとつは「コスト削減」。これが世の中のトレンドです。服で言うならファストファッションですね。

最近はチャイナ・プラス・ワンからもっと広く、ベトナムやミャンマー、バングラディシュなどにも拡大していて、それらの国々の工場で生産すればコストは削減できます。さらに削減しようとすると、服作りに関して言うと次はアフリカ、という状況です。

ただ、あまりにコスト削減を追求すると、その国にものづくりの文化は残らない。これは日本だけでなく先進国全般に言える傾向です。文化を残す方法はないのか? そう考えたとき選択肢はもうひとつあって、それは「価値創造」というものじゃないかと思います。

私達がやろうとしているのはこの「価値創造」です。どの国もそうだと思うのですが、どこかで誰かがそれをやらないと、優れた技術もなくなっていくんです。日本のものづくりの文化をもう一度見直した上で、新しい価値を生み出していく。それがファクトリエの考える「価値創造」です。

実際、私達と提携している工場は、世界の一流メゾンの製品を作っていたりして、海外でも高く評価される技術を持っているんです。それが失われていくのはあまりにもったいない。

とはいえコスト削減を否定しているわけではありません。それも相当な努力を重ねないとできないことですから。マクドナルドがセルフレジを導入したのも理解できます。マクドナルドにマッチしてますよね? 

コスト削減型のビジネスはそうやってどんどん仕事をAIに置き換えたり、アウトソースしていくのですが、私たちは「価値創造」を目指してまた別の努力をするということです。


山田敏夫氏

職人さんが接客するといいことが起こる


ーー「価値創造」と言うとやや抽象的ですが、ファクトリエでは具体的にそれをどうやって形にしていこうとしてるんでしょう? 「工場直結」以外の面で言うと。

山田:そうですね。その考え方って私たちが使う言葉から接客まですべてに宿るものだと思っていて、例えば「店長」なんて言葉は使わず「アンバサダー」と呼んでいたり、「営業」という職種はなくて「アライアンス」と呼んでいたりします。ファクトリエで働く人たちや工場はみんな対等なんですよ。

まずすべてのコミュニケーションが大事で、その一貫性をどれだけ保てるか? が大切だと思うんです。

接客に出る人は接客マイスターの3級まで取ってもらって、知識の豊富な人が担当するようにしていたり、もっと言うと名古屋や横浜の直営店では、週末は職人さんが接客しているんです。

すると、本当にいいことが起きる。通常ファクトリエでは、商品の在庫がなくなったら、予約販売になるんですね。そうすると店頭で、お客様に「このTシャツって、1月下旬なんですか?」なんて聞かれるんです。

すると職人さんは「もっと早く納品してあげたい」って気持ちになりますし、Tシャツは首のところがヨレないつくりにしたほうがいいとか、丈はもうちょっと長いほうがお客さんに喜んでもらえるとか、色んなことに気がつくわけです。

ーー小さな気づきの積み重ねから、より良いものを丁寧に作っていくことを大事にしているんですね。

山田:結局「お客様が見えているか?」だと思います。中間業者を含めて服づくりには7つの買い手があるんですけど、工場の人には最後の買い手、つまりお客さんが見えないわけですね。でも、根本はお客さんが喜ばないと意味なくて、その意味では膨大な無駄が発生しています。

例えば、お客さんに直に接していると、シャツの色はやっぱり白やネイビーに着地するわけですけど、「いまのトレンドカラーはピンクです」なんて言われると、その言葉を真に受けてしまうこともあるんです。

ーーそれはマス・マーケティングが陥りやすい罠ですね。

山田:いずれにせよ「本質的なお客様がだれなのか?」を考えるところから始めないと価値は生まれないですから。その意味では私たちは単なる洋服の通販サイトであってはいけないんです。工場の就活イベントも毎年やって採用につなげるなど、色々な取り組みを行っています。

就活支援も続けてきて、今年の4月から多くの工場で新卒を2人以上とれるようになりました。次は就職した人たちが定着してもらうための教育制度や工場の環境をどうしよう? といったことを考えているところです。


ファクトリエが全国に展開する工場とそこで作られる商品の一部。ファクトリエのサイトでは提携工場や作り手を紹介する多くの記事も公開されている

「社員」ではなく「仲間」と呼びたい


ーーファクトリエも人が増えてきていると思うのですが、皆さんどんな働き方をしているんですか。

山田:いまは全部で30人ですが、だれもが、できることを、なんでもやる体制で働いています。エンジニアが接客することもありますし、デザイナーも横浜の店舗に一日中いたり。ゴミ捨ても皿洗いも掃除も朝から全員でやりますし、一人何役もやるのが当たり前です。

理念や思いに共感してファクトリエに来ていますから、様々なバックグラウンドの人がいます。例えば、いま64歳の人が仲間の一人として働いているんですけど、彼は生産管理で30年のキャリアがあって、中国でも服を作っていた経験がある方なんですね。私達にとってその経験はすごく必要なものです。早期退職されたのですが、朝は家庭菜園をやってお昼から来てくれています。

そもそもファクトリエでは、メンバーを「社員」とは呼ばないんです。「仲間」だと思ってますから。新卒・中途、社員・契約社員、アルバイト、業務委託なんて分け方は私にとってはどうでもいいことで、仲間集めのときに一番大切にしているのは、ファクトリエの考え方に共感してもらえるか、私達が共感できるか? ということです。

ーー互いの共感はどうやって確かめるんでしょう?

山田:一緒に働きたいと希望してくれた人には必ず、ファクトリエに入って「やらなければいけないこと」「やりたいこと」「できること」の3つについてプレゼンしてもらい、社員全員が参加して話し合います。その人の人生の歩み方とファクトリエの軌跡が重なるかどうかが大事だからです。

いま日本人の平均寿命って84歳くらいなんですが、いつまで働けるかは別として、最期に人生を振り返ったときに、人生幸せだったと思ってほしいし、私もそう思いたい。

ですから「どんな人生を歩みたいですか?」ということは最終面接で必ず質問します。仕事は「事に仕える」と書きますが、それだけだと“お金の奴隷”になりかねないと私は思っています。やるからにはやっぱり「私事」にしたいですよね。

「私事」が「仕事」に重なり合っていれば、週5日が人生の楽しみになるわけですよね。週末の2日だけが人生を楽しむ日ではなく。それができる人をファクトリエの仲間として迎えたいとおもっているんです。

ーーバランスも重要なんでしょうね、「仕事」と「私事」の。だれしも悩ましいところかもしれませんが。

山田:そうなんです。バランスで言うなら「資本性」と「社会性」のバランスも大事です。

例えば、仕事に社会性を強く求める人はNPOに行ったり、たとえボランティアであってもそれをやりたいという方もいるわけですけど、ファクトリエは営利の事業です。でも、あまりに資本性が強いといまの現状を招いてしまった今までの業界と変わらなくなってしまいます。資本性と社会性、この両輪をうまく回していかないと、私達の考える「価値創造」は実現できないんです。

(後編に続く※11月28日公開予定)

Profile

山田敏夫(やまだ・としお)
1982年:熊本生まれ。1917年創業の老舗婦人服店の息子として、日本製の上質で豊かな色合いのメイドインジャパン製品に囲まれて育つ。
2003年: 大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務。
2012年1月:ライフスタイルアクセント株式会社を設立し、「ファクトリエ」をスタート。
2014年4月:中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員。
2015年2月:経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」受託者

Interviewer

河尻亨一(かわじり・こういち)
銀河ライター/東北芸工大客員教授。雑誌「広告批評」在籍中に、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。仕事旅行社ではキュレーターを務める。

あの人が語る仕事論: 2016年11月18日更新

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