2016年09月26日更新

上下関係なし。役職なし。未来型の会社経営「ホラクラシー」は自由だが痛みも伴う?

階級や役職がないのに会社などの組織がうまく運営され、仕事の能率も高まっていくーー「そんなことってあるんだろうか?」と思うかもしれませんが、広い世界にはそのやり方で成功している企業もあるとか。

そういった組織運営の方法論を「ホラクラシー」と呼ぶそうです。

「ヒエラルキー」とは対照的なコンセプトとして語られる「ホラクラシー」は、従来のトップダウン型とは180°異なる革新的経営スタイルとして、昨年くらいから日本でも論じられることが多くなってきました。

今年に入り、「ホラクラシー」の教科書とも言えそうな書籍『HOLACRACY 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』の翻訳版も出版されたことから、今後さらに注目されるようになっていくかもしれません。

それにしても、なぜ、階級や役職をなくして組織がうまく回るのでしょう? 「こういう組織であれば、自分でもやりたい仕事ができるかもしれない」と思い本書を手にとってみたわけですが、読むと「なるほど!」と思うと同時に、「本当なの?」という面もないわけでもありません。

そもそも、だれもが勝手なことをやり始めて、「会社が空中分解!」 みたいなことにならないのでしょうか。

そういった疑問を整理しながら書籍『HOLACRACY』をご紹介し、未来の働き方についても考えてみたいと思います。

もはやヘッドの指示を待つ必要はない


「ホラクラシー」がいま注目される大きな理由として、「トップダウンやボトムアップ型の組織では、現在の変化のスピードについていけない」というものが挙げられます。「社長→部長→課長→○○(あるいはその逆の流れ)」みたいなプロセスで意思決定していると、ライバルに遅れをとってしまうのかもしれません。

それに代わって「すばやく進化し続ける組織」として、本書の著者であるブライアン・ロバートソン氏が提唱するのがホラクラシーです。

ブライアン氏によると、ホラクラシー型の組織は人の身体にたとえられます。

体内で病原菌への抗体をつくるのも、アドレナリンを分泌するのも、トップとなる「私(脳)」の命令を待ってから行うのでは、手遅れになります。人体では、胃や腎臓、血液など、問題が起こる最前線である「局所」が脳からはある種独立して、それぞれ対応しているそうです。

ブライアン氏は、組織もこれと同じようにあるべきと主張します。

個人個人が、自分の領域や仕事の範囲内で、問題に「局所的に」対処する権力を与えられる必要があるのだ。その際、他のみんなにお伺いを立てたり、権限を授けてくれるようリーダーに許可をとったりしなくてもよいことが大切だ。(『ホラクラシー』p.41より)

つまり、組織のなかの問題や環境の変化にすばやく対応するため、組織に階級や役職は実は妨げになる。代わりに、「メンバー全員に権限を与えるシステムが必要」だと指摘するのが本書です。

では「メンバー全員に権限を与えるシステム」とはどういったものなのでしょう? 権限が全員にあるなんて、「船頭多くして船山に登る」ではありませんが大変なことになってしまいそうです。

『HOLACRACY』はこの問題にも解決策を提示しています。「個人」ではなく「役割」に権限を与えることで、組織はコントロールできるとか。「課長・部長」ではなく、「マーケティング・営業・経理」など、それぞれの仕事の内容に権限が移譲されるわけです。

たとえば「ウェブとSNSを通じた宣伝」という役割を与えられたら、その業務の範囲内では担当者の思い通り、好きにやっていいことになっています。また、宣伝とマーケティングを兼務し、2足、あるいは3足のわらじを履くこともあり得ます。

ここで大事なポイントは、「どんな役割が必要かということも、メンバー全員が決める」ということ。そして、そのための会議である「ガバナンス・ミーティング」を定期的に行う必要があるそうです。

一人一人が日々の仕事をこなしながら感知したひずみに応じて、その構造は絶えず改良され、変化し続けていくのだ。こうして、「最も効果的に仕事するためには、どのような構造にする必要があるだろう?」という問いに対する、私たちの最高の知識が常に反映されることになる。(『ホラクラシー』p.65-66)


全員が「リーダー」であることの意味


しかし、ここでまたひとつ疑問が生じます。メンバー全員が権限を持ち自発的に動くとなると、個人個人がデキる人でなければいけないのでは? 

ここは著者であるブライアンも認めているところ。

誰もがこうした役割を果たせるようになるためには、個人の優れた整理術が必要になる。手の届くあらゆる選択肢の中から、どんな時も最も適切な行動を意識して選べるようになる、軽くて柔軟な習慣を見につけることが必要だ。(『ホラクラシー』p.147)

さらっと書かれていますが、実行するとなると難しそうでもありますね。人類にそれがすんなりできれば、古代ローマも帝政に移行する必要なかったかもしれません! 「どんな時も適切な行動を意識して選ぶ」と言いますが、その適切さはだれがジャッジするんでしょう…。

それもやっぱり合議制? その際のコントロールはだれが?

も、もしかするとAI?

いや、そこまでいかなくとも「インターネット」や「先端テクノロジー」の力で、個人の意思を集約し、効果を判断しやすくなっているということなんでしょうか?

実際、こういったある種の”クラウド型ワーク”が成功しているのは、現状デジタル・IT・ネット系企業が多いようです。「ホラクラシー」という言い方こそしていませんが、以下の記事を読むとプログラミングなどでは、ヒエラルキー型の仕事の進め方はむしろ作業の邪魔になりかねないということがわかります。

参考記事:「GitHub」の働き方革命は何がスゴいのか?ーアップル、LINEが採用した「未来の働き方」ー (「東洋経済オンライン」より)

一方で昨年ホラクラシーを導入したことで話題になったアパレル通販のザッポスでは、組織改編の発表から数ヶ月で14%の社員が会社を去ったと言います(約1500人中210名)。導入企業の中には結局うまくいかず1年以内に断念する会社も多いようですね。

参考記事:上司不在の組織「ホラクラシー」はうまくいくか (「THE WALL STREET JOURNAL」より)

しかし、一層のデジタル化・AI化が進むと予想されるこれからの時代において、「ホラクラシー」はエンジニアや開発者だけの独特の働き方なんて言ってられない日が来るかもしれません。

上記記事内でザッポスCEOのトニー・シェイ氏はこう語っています。 

「別の見方をすれば86%が『楽に稼ぐ』ことと決別し、会社に残ることを決めた」
「ザッポスがホラクラシーへの移行を完了するまでには2年から5年かかる」

導入後にCEOを名乗っていることへの「?」はさておき、相当な覚悟で取り組んでいるようです。同記事では本書の著者であるブライアン氏も次のようにコメントしています。

「影響が大きく痛みを伴う変化――ホラクラシーがまさに影響が大きく痛みを伴う変化だが――を取り入れる際には、たとえそれがもっともな理由からであったとしても、人が最初に経験するのは痛みだ」

「何もそこまで…」と思わなくもないのですが、経営者やビジョナリーは「そこまでしなければ組織が生き残れない」シビアな未来の市場環境を想定しているのでしょう。

そう言えば、台湾からやって来たシャープの戴正呉新社長が役員報酬を返上し、築30年の社員寮に寝泊まりしているというニュースが近頃話題になっていました。社内外に向けたパフォーマンスの意味合いもあるのかもしれませんが、この一事を考えてもリーダーというのは権限はあるとはいえなかなか大変なもの。

ある意味、全員が”リーダー”でもあるホラクラシーでは、そういったヘヴィなミッションまで自分で決めてみずから動き、責任もストレートに個人に来ると思うと、自由でフレキシブルな働き方が可能になるとはいえ、やはり苦楽の両面から考えてみる必要はありそうです。

いずれにせよ「ヒエラルキー的なもの」と「ホラクラシー的なもの」とのせめぎ合いが起こっているのが、いまという時代なのかもしれません。

そして本書の中で次の一節がもっとも印象に残りました。

権限分配型のモデルに移行するにつれて、目的はあらゆるレベル、あらゆる活動分野において意思決定の拠り所となる。(中略)ホラクラシーの真の狙いは、組織がその目的をより良く表現できるようにすることにある。(『ホラクラシー』p.61)

「目的」が大切なのは、ホラクラシーであれヒエラルキーであれ同じこと。しかし、大きなピラミッド型組織の中で与えられた仕事を何となくこなしていると、やはり「目的」は見失いがちなもの。そういった現状へのラディカルな提言と受け止めた上で、一度ホラクラシー的組織論を考えてみることには意味があると感じました。

記事:シゴトゴト編集部
読みもの&連載もの: 2016年09月26日更新

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