2016年09月20日更新

「NPOで働く」って実際どうでしょう? 育て上げネット理事長・工藤啓さんに聞いてみた

2010年、あのGoogleやDisneyといった大企業を差し置いて、NPO「Teach For America」が1位に。アメリカの就職ランキングの話です。

AppleやMicrosoftなど、名だたる企業が目白押しのアメリカで「就職したい組織の1位がNPOだった」ということで、このニュースは日本でも取り上げられました。

それから6年。とある日本の希望就職ランキングを見てみると、銀行、飲料会社、航空会社など、なじみある大企業の名前がずらりと並びます。ところがNPOの名前は、ベストテンどころか100位まで探しても出てきません。

日本ではまだまだNPOが就職の選択肢とみなされていない、ということかもしれません。

その一方で大企業からNPOに転職する人や新卒でNPOに就職する人が増えているという話を耳にすることもあります。読者の中にも、「非営利組織で働く」ことに関心を持つ方もいらっしゃると思います。

「NPOで働く」って実際どうなんでしょう?

そこで今回は、無職の若者の就業支援を手がけるNPO「育て上げネット」の理事長を務める工藤啓さんに、NPOでの働き方についてお話をうかがいました。工藤さんは『NPOで働く』という著作も上梓されています。


『NPOで働くー「社会の課題」を解決する仕事』

NPOもベンチャーのように育っていく


「育て上げネット」は、若者の「働く」と「働き続ける」を目指して、就業支援を始めとする活動を展開しているNPO法人です。NPO法人として2004年に創立され、いまではスタッフ160人を超える規模の組織になっています。

『NPOで働く』を読むと、工藤さんが学生時代にNPOを立ち上げたときは、たった一人でのスタート。事業が軌道に乗るにつれ、新たに参加したスタッフひとりひとりが多くの業務を兼任し、成功させていく様子が描かれています。

そこで最初に、皆さんがどういった仕事をしているのか、組織体制についてうかがいました。一人でたくさんの業務を回すオールラウンダーな仕事ぶりなのでしょうか。

「創業メンバーが複数の業務をこなすのは、ベンチャーではよくある話だと思います。僕たちも最初はそうでした。でもいまではスタッフも増えて、だんだん分業が進んできています。対人サービスを受け持つ仕事と、経理や事業戦略を担う部門は分かれているんですよ。

対人サービスを受け持つ専門職は、若者に就労支援を提供する「ジョブトレ」や、子どもの就業について悩んでいる母親を支援する「結」を中心に、専門性を活かして仕事をする場合が多いです。

一方で、事業戦略を担う部門は、マーケティング、広報、営業、新規事業戦略など、経理と対人サービス以外のすべてを担当しています。

そういう意味では、事業戦略部門はいまでも「なんでもやる」ベンチャー的な要素が強いかもしれません。こちらは、楽しいと思う人には楽しいと思いますけど、ひとつのことをじっくりと突き詰めていきたいという人には、あまり向いてないかもしれないですね」(工藤さん)


現在では「育て上げネット」も創立時より分業が進んでいるようです。「NPO」には企業とは異なる独自の働き方があるのだろうと思っていましたが、会社とそれほど大きな違いはないのでは? と感じます。

様々なNPOがあるため一概には言えませんが、事業の進め方やワークスタイルに関しては基本的に、「営利・非営利で大きな違いはないのでは?」といった話もありました。


「ジョブトレ」の講義風景

僕たちは「なくなる」ために働いている


とはいえ、営利組織と非営利組織では事業の目的が異なります。NPOにはどんな人材が向いているのかも聞いてみました。 

「基本的にはだれでもやれると思いますよ。しかし、営利組織との違いがないわけではありません。

まず、考え方の違いは大きいです。非営利組織の目的は「自分たちの消失」です。つまり、組織を成長させるそのこと自体が目的ではなく、課題を解決することが存在意義ですから、最終的に自分たちの仕事がなくなることがゴールなんです。その考えを共有できる人は向いているでしょう。

一方で、安定したサービスを供給し続けるためには一定の収入が必要です。そのためには、NPOの提供するサービスにも適正な価格をつけなければなりません。でも僕らのお客様は、サービスの対価を払えない人もいらっしゃいます。その際にサポートしてくださる「第二の顧客」も大切。

例えば、行政や民間の助成関係者、寄付者やクラウドファンディングの出資者など、さまざまなステークホルダーと関係を結びつつ、その人たちにも満足してもらうためのコミュニケーションが取れるかどうかという意味では、立場の異なる関係者を視野に入れて動ける人材であるかどうか。そこは大切だと思います」(工藤さん)


立場の異なる顧客の満足を上げる仕事は大変なのでは? 日々の業務はかなりハードなのだろうと思い、うかがってみたところ。

「僕、18時頃には帰ってます(笑)。一般的な福利厚生はそれなりに揃っていると思います。育児休暇制度ももちろんありますし、僕自身も三度育休を取得しました。

育て上げネットは『自己犠牲と他者依存をしない』がモットーなので、それぞれの頑張りは必要ですが、頑張れる人がなんでも引き受けて終わればいいということはできる限りなくしていきたいと思います」(工藤さん)


お試しから始めよう


しかし、すべてのNPOが「育て上げネット」のような働き方をしているわけではないでしょう。工藤さんも、「育て上げネットは比較的体制が整っている」とも言います。

では、もしNPOで働くことに興味が合った場合、規模も事業内容も様々なNPOの中から、どのようにして自分に合った組織を探せばいいのでしょう? その質問も工藤さんに聞いてみました。

「NPOって、原則的にはフリーイン・フリーアウト、つまり出るのも入るのも自由で、『問題解決、コノユビトマレ』の世界なんですね。ボランティアやインターンシップ、プロボノなど、まずは何らかの形でお試しをしてみる、というのはひとつの手です。

そのときに気をつけることは、そのNPOが解決したい問題として掲げていることが、自分にドンピシャか。そこはよく考えたほうがいいでしょう。あと、掲げたテーマをそのNPOがきちんと実行しているかもひとつのポイントです。

本当にそのNPOが安定しているかどうかを調べたいときは、財務諸表を見るのも方法です。中小企業と違って、NPOは財務諸表を必ず公開しています」(工藤さん)


財務諸表を見ると同時に、雇用の形態にも注意が必要です。工藤さんによると、「国から受けた事業を担当する契約社員の場合、任期が決まっていることが多い」とのこと。そういったケースがあることも頭に入れておいたほうがよさそうです。


NPO法人 育て上げネット理事長 工藤啓さん

自分にとっての心地よさとは?


最後に、若者の就業支援をしている工藤さんから、NPO、企業を問わず自分らしく仕事を続けていくためには何が必要なのか、うかがってみました。

「個人的には、会社は無数にあるので、しんどいとかつまらないと思った時点で、次の職場に移ればいいのではないかと思ってます。そこで苦しくなってしまった若者の相談をたくさん受けますから。

僕自身は「自分に心地いいことってなんだろう」ということを大前提としてやってきました。大学を途中で辞めているし、留学後も卒業しないで帰ってきているし、就職もしていない。いわゆるストレートパスではないのですが、人と違うことで困ったことはありません」(工藤さん)


「NPOで働く」ことのリアリティが伝わってくるお話でした。「育て上げネット」のようなNPOが育っているいま、日本でもNPOがオーソドックスな就職の選択肢になりつつあるのではないでしょうか。

記事:守屋佳奈子(シゴトゴト編集部)
読みもの&連載もの: 2016年09月20日更新

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