2016年08月29日更新

シン・ゴジラから考察する、肩書きと仕事の話

公開から約1ヶ月たった映画「シン・ゴジラ」が、平成以降のゴジラシリーズ14作中最高の興行成績を更新しています。ヒットの理由は各所で憶測されていますが、これまでのゴジラファンの以外の人々の関心も集めている様子。

話題の本作を観てみたところ、描かれていたのは意外にも怪獣“ゴジラ”ではなく、ゴジラと戦う“人間たち”の姿だったように思います。突如襲い掛かるゴジラに、日本はどう立ち向かうのか。それは、有事の事態に日本のトップ(=政府)がどう動くのか、という問いに通じるものがありそうです。

今回は「シン・ゴジラ」を観て考えた、「肩書きと仕事」の話をしてみます。

ゴジラvs日本のトップ


ヒットとなっている、この「ゴジラ」とはいったい何なのでしょう。名前には馴染みがありながら、「なんとなくしか知らない」という人も多いのではないでしょうか。

シン・ゴジラはこれまでのゴジラシリーズを知らない人でも楽しめる、独立したストーリーとなっています。現代の東京を舞台に、突如現れる巨大不明生物「ゴジラ」と、それを駆除せんと悪戦苦闘する国の中枢の人間(=官僚)たちの姿が描かれます。

主要キャストが演じるのは、階級も判断しづらいほど漢字が羅列された肩書きを持つ官僚や大臣役。この国が有事のときに対応するのは、どこからか現れるヒーローではなく、勇敢な少年や少女でもなく、「政府」という国のトップたちなのだということに気づかされます。

トップたちはこの非常事態にいかに立ち向かったのか? 印象的だったシーンを抜粋してご紹介しましょう。

学者や専門家より、変わり者のほうが日本を救うかも


物語の序盤、東京湾羽田沖で大量の水蒸気が噴出、同時に海底を通る東京湾アクアラインでもトンネル崩落事故が発生します。

海底火山の活動などが原因として憶測されるなか、多摩川河口から突如現れた巨大不明生物。政府の緊急会議では、生物の特定を急いて専門家を招集します。

集められたのは生物学教授、古代生物学者に海洋生物学者の3名。長年にわたる研究が生かされそうな肩書きの老人たちですが、「この映像だけでは判断しかねる」の一点張り。

いっぽう変わりモノだが生物に詳しいスタッフとして、環境省自然環境局野生生物課長補佐の尾頭ヒロミ(市川実日子)に声がかかります。

尾頭は巨大不明生物の上陸を映した動画から二足歩行、つまり上陸の可能性を予測しますが、内閣総理大臣をはじめとする官僚たちはその見解を根拠もなく一蹴。

国民への会見で「上陸の可能性はない」と断言した直後、皮肉にもゴジラは蒲田より上陸を始めるのでした…。

こうした流れから実感するのは、「年齢や肩書きにとらわれるべからず」ということではないでしょうか。有識者たちは「学者」として大きな期待を寄せられて集められますが、政府は何のヒントも得られずに終わります。

いっぽうで、研究者の世界では「無名」に等しい尾頭の見解が、結局正しかったということも明らかになります。

彼女は繰り返し動画を見て分析、その知識を持って予測をしましたが、その予測は根拠なく発せられた専門外の年配者の意見によってかき消されてしまいました。

学者といった肩書や年齢で意見を判断しては、すでにある真実をも見逃してしまう。肩書きなどはその人の経験や知識を示す指標のひとつにすぎず、万能の証でもなんでもない。――そんな印象を受けるシーンが続きます。「肩書き・年功序列」を重視する日本社会のリアルな様子が描かれていました。

「人事査定に影響はない、好きにやってくれ!」


100名以上の死者・行方不明者を出した最初の巨大不明生物襲来後、「巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)」が編成されます。事務局長となるのは、本作品の主人公的立ち位置で描かれる内閣官房副長官・政務担当の矢口蘭堂(長谷川博己)。

巨災対本部のメンバーには尾頭をはじめ、変わり者としてやっかまれてきた経済産業省や資源エネルギー庁、大学院准教授などの面々が集められます。そこで発せられた矢口の言葉がこちら。

「…巨災対事務局長の矢口だ。本対策室の中では、どう動いても人事査定に影響はない。なので、役職・年次・省庁間の縦割りを気にせず、ここでは自由に発言してほしい。

そもそも出世に無縁な霞が関の はぐれもの、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児…そういった人間の集まりだ。気にせず好きにやってくれ!」(矢口蘭堂)


政府の縦割り組織や役職・年功序列体制、それによる判断と対応の遅れが被害の拡大につながりました。

多くの人が空気を読んで、いかにもヤバそうで関わったところでなんら得することがないこの案件を避ける中、それぞれの組織で変人扱いされていた人材が集結するシーンです。

肩書きの力とあっけなさ


その後矢口をはじめとする巨災対本部メンバーたちが、「ゴジラ」と名付けられた危険不明生物に対して、研究と作戦立案を急ぐ過程で、「肩書き」や「働き方」について考えさせられる様々なシーンを見ることができました。

ゴジラ2回目の上陸の際、ゴジラの放った謎の光線によって総理大臣含む現職内閣の大臣たちはほぼ全滅。巷では「内閣総辞職ビーム」とも称されるこの反撃後、生存する官僚たちに招集がかかり新たな臨時内閣が結成されます。その報道を見た矢口の、自虐めいたひとこと。

「新しいリーダーがすぐに見つかるのがこの国の良いところだな」


さらに、臨時の内閣総理大臣に就任した里見元農林水産大臣のつぶやき。

「こんなことで、歴史に名を残したくはなかったなぁ…」


貧乏クジを引かされるような形で臨時内閣総理大臣となったからには、今後の作戦遂行などによって生じる影響の責任をとる形での辞職は目に見えていますが、こんな非常事態においても、みずからの体面とポジションしか考えていないことがうかがえるひと言です。

再び行先が不安になる展開ですが、ネタバレになりますので見所の紹介はこのあたりまでで。興味がある方はぜひ映画館へ。

いずれにせよ、シン・ゴジラに描かれた働く人々の姿は、「肩書き」が持つ「人を動かす力」と「あっけなさ」の両面を見せてくれたような気がします。

肩書きには代わりも見つかるし、肩書きがあるからといって優れている証明になるとは限りません。肩書きにこだわらなければ、人は普段以上の秘めた力を発揮することもあるのでしょう。

しかしいっぽうで、肩書きが功を奏することもあるはずです。個人としてではなく、ある肩書きをもってするからこそ、大きな力になることもーー。そんな奇妙で扱いづらい「肩書き」について考えさせられる、働く人々の映画として鑑賞しても面白いと思いました。

記事:島田綾子(シゴトゴト編集部)
参考・画像:映画「シン・ゴジラ」公式サイト
読みもの&連載もの: 2016年08月29日更新

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