2016年07月25日更新

一年で一番稼げる日に「全店舗休み! しかも有給」にした会社ー「カンヌライオンズ2016」に行ってみたvol.5ー

いきなりですが、まずは以下のコマーシャルをご覧ください(30秒)。



CMでしゃべっているのは、アメリカでアウトドアチェーン店を展開するREI(アール・イー・アイ)という会社の社長さん。オフィス風の部屋から彼はこのように視聴者に語りかけます。

「私はジェリー・ストリスキー。REIのCEOです。今年のブラックフライデーに、143ある全店舗をお休みにします。そして従業員にはアウトドア活動のためのお金を払います。なぜなら、アウトドアのある暮らしは、素晴らしいものだからです」

画面が引いていくと、実はそこは山の上。オフィスは山頂に作られたセットなのでした。話しているうちにエキサイトしてきたのでしょうか? 社長は立ち上がり「11月27日は私たちにジョインしてください。みんなで屋外に出かけましょう。サンクス!」と叫びます。

最後、たまたまやってきた登山者に「ここで何してるんですか?」と聞かれ、「いや、仕事なんだけど…」と答えるあたりはいかにもコマーシャルっぽいオチなのですが、このCMはアメリカで大反響となりました。

なぜなら、「ブラックフライデー」はアメリカの小売業が一年で一番もうかる祝日であり(クリスマス商戦のスタート日でもある)、稼ぎを考えると店を閉めるなんて経営判断はありえないからです。

それをまたテレビで社長みずから宣言している。高い広告費を払ってまでして…。

目先の稼ぎを捨て金で買えない財産を手にした


以前、社長から社員からみんなで頭を下げて値上げを詫びる「ガリガリ君」のCMについての記事を書いたことがありますが、この低姿勢はやはり日本ぽい(それもカンヌライオンズに出品されていたそうです)。堂々と経営者が"上から"語りかけて、しかもそれが山レベル。アメリカだなあと感じます。

★参考記事:「ガリガリ君」値上げCMにジワっと沁みる“その会社”らしさ―社員出演コンテンツを作るときに大切な3つのコト―

しかし考えてみると、アウトドア関連企業に勤めている人たちは、やはりアウトドア愛好者が多いはずです。そういう会社を自分で選んでいるわけですから。

そういう人たちが、せっかくの祝日にあくせく働いて、お客さんたちを屋外活動へと誘っているのは、それが仕事とはいえ不思議な話でもある。自分はやってないのに、人には勧めているわけなので。

REIとしては、自分たちの真のアウトドア魂をカスタマーに知ってほしいという気持ちもあったのかもしれません。

実際この会社は本気でした。さっきのコマーシャルだけなら、「ヘンな会社、ヘンな社長がいるもんだなあ」という感想で終わり、まさに社会のアウトサイダー的な扱いを受けて終わっていたかもしれませんが、「#optoutside(アウトサイドというオプション)」と名付けた特設サイトやSNSも設けて、「外に出よう」とアピールし続けました。http://optoutside.rei.com/

そしてクレイジーが社会に「実はマジーだったの?」と認められる瞬間が来ました。「どんなことを実行し、何が起こったか?」の詳細は以下の解説動画に詳しいです。簡単に言うと、アウトドアに関する様々な情報をネットで丁寧に説明していき、アウトドアの素晴らしさをアピールしていきました。各種ツールも作りこみ、デザインもとてもよくできています。「♪オオオ~ オ〜オオ~」のBGMからしてアウトドア感たっぷりですね。



動画でも触れられているように、結果150以上の企業が「休日は屋外で」というREIの考え方に賛同、自分たちの社員にもアウトドア活動を奨励しました。数百の州立公園がその日は入園料を無料にするという動きも生じ、国全体を巻き込むムーブメントとなったそうです。

そして、このプロジェクトによるメディアインプレッションは67億(SNSで12億)。140万人以上の人々が、実際にアウトドア遊びを楽しんだとされています。目先の稼ぎを捨てることで、お金に変えられない別の財産を手にしたのかもしれません。しかし、ここまでのことになってしまうと、アウトドア用品を買う際には「やっぱREIで買うか?」というふうにもなるのが人というもの。

アメリカという国に関しては、様々な問題点も盛んに報道されているわけですが、こういうアクティブさはなんだかすごい。道理で「ポケモンGO」も大ブレイクするわけです。

ちなみにこのプロジェクト、REIの若い社員の何気ない提案から始まったとか。アウトドア企業だけにオフィスの風通しも良いのかもしれませんね。

記事:河尻亨一(銀河ライター/東北芸術工科大学客員教授/仕事旅行社キュレーター)

(当連載のバックナンバー)

★世界のビッグなアイデア全員集合!クリエイティブ文化祭「カンヌライオンズ2016」に行ってみた vol.1

★人工知能でここまでの“仕事”ができる時代に—「カンヌ・ライオンズ2016」に行ってみたvol.2

★VRで暮らしや働き方はどう変わる?―「カンヌライオンズ2016」に行ってみたvol.3

★社会に力をくれる「新・珍・奇」なアイデアたち―「カンヌライオンズ2016」に行ってみた vol.4―

連載もの: 2016年07月25日更新

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