2016年06月17日更新

あなたの仕事ライフにもっと余白を。「はたらける美術館」がオープン

6月1日、西新宿にオープンした「はたらける美術館」。美術館のなかで仕事をするという、今までにない体験ができるコワーキングスペースです。アイデアから運営までを手掛けるのは、東京大学4年生(現在休学中)の岩本美咲さん。

多くの働く人たちのリアルな声から生み出された新しいワークスペースにお邪魔して、事業責任者の岩本さんにお話を伺いました。

記事:島田綾子(シゴトゴト編集部)

美術作品に囲まれると、仕事もはかどる?


西新宿5丁目駅から徒歩数分、白い立て看板には「はたらける美術館」の文字がありました。

なかに入ると、右手には受付スペース。正面には飛び石の敷かれた通路があり、細い木材が張り巡らされたような通路の壁面はモダンな印象を与えます。


飛び石の敷かれた通路

靴を脱いで石の上を進んだ先にあるのが、個室コワーキングスペース。8名ほど座れそうな和室に入ると、まず目に入ってきたのは「これはなんだろう?」と思わせる絵画でした。

通常の和室といえば床の間に掛け軸というイメージですが、ここには掛け軸に加えて漆喰の壁に5枚ほどの絵が飾られています。しかも和室でありながら、どことなく西洋的な配色の不思議な絵、流れる鳥のさえずりのBGM。

机や椅子が並んだコワーキングスペースをなんとなく想像していた私にとって、旅館の一室のような様子は新鮮な光景です。

今回お話をうかがったのは、事業責任者でもある岩本美咲さん。オープンしたばかりの「はたらける美術館」で、立ち上げのきっかけや場にこめられた思いを語ってくれました。


岩本美咲さん

「多くの人に、日常的に美術にふれる機会を持ってほしいというのが、もともとの思いでした。だから“はたらける”っていうのはメインではなく、日本のほとんどの人が働いているから、いちばん身近なところを考えての“働く”なんです」(岩本さん)

はたらける美術館は“Everyone’s Private Museum”をコンセプトにした「専有できる」美術館でもあります。仕事はもちろん、それ以外の用途にも自由に使うことができます。

コワーキングスペースというより、プライベートルームに近いかもしれません。ただ、特徴的なのは「美術館」の言葉もあるように様々な美術作品が飾られていること。

岩本さんは、なぜ「美術館のなかで働く」ことに着目したのでしょう?

もともと芸術鑑賞が好きだった岩本さんは、ヨーロッパを旅行中に訪れた美術館で、絵を鑑賞するだけではなく模写する人の姿を頻繁に目にしました。そこから「観る以外にも、美術館でできることがある」と考えたそう。

さらに大学生になったとき、とあるきっかけで美術業界の現状を垣間見たことが岩本さんを動かしました。

「2年前にある銀座の画廊さんに出会って、日本の美術市場が縮小していることを知りました。海外では家に美術作品があるけれど、日本では美術館に観に行くもので、興味を持つきかっけがなければそもそも行きません。

購入者の減少や高齢化に対して、何らかの方法で美術業界を活性化させたいという画廊さんと意気投合して、ご一緒することになりました」(岩本さん)


働いたことがないから、働く人に根掘り葉掘り聞いてみた


こうして「美術館のなかでお仕事しよう」というイメージはできたものの、岩本さん自身に社会人として働いた経験はありません。そこで事前にワークショップやインタビュー調査を行い、リアルな仕事事情とニーズを知ることにしました。

まず、「あなたが働くならどんな空間をプロデュースしたいか?」というテーマをもとにイベントを主催し、200名以上の参加者とのディスカッションを通して、理想の働く空間について、明らかにしていきました。これによって、人々がオフィス空間に求めるのは「刺激」や「癒し」だということが明らかになったといいます。

オフィスでは大勢の人がいるので、整然としたデスクの配置に無音といった“五感を刺激できない空間”になってしまいがちです。

しかし多くの人々は、仕事スペースに「自然」や「刺激」を求めており、煮詰まってしまうために刺激を求めてカフェなど普段と異なる環境に足を運ぶということが分かりました。脳科学においても、五感を刺激して脳の働きを活性化させることが大事とされているようです。

さらに岩本さんは60人以上の働く人々にライフマップを書いてもらいながら、働き方や気持ちの変化を根掘り葉掘り聞くインタビューを重ねてきました。

移動でタクシーに乗り一人の時間を作って眠る人、帰宅前に公園に立ち寄り家庭モードに切り替える人など、人によって違う仕事スタイルが明らかに。

そういったプロセスをへて「はたらける美術館」のイメージが固まっていったそうです。






はたらける美術館・内部

「インタビューを重ねるうちにわかってきたのは、日本には自宅(ファーストプレイス)とオフィス(セカンドプレイス)以外に、自分の場所と言えるスペースが実はあまりないということ。

スターバックスなどのカフェがサードプレイスとして活用されるケースは増えていますが、もっとプライベートな空間でかつ上質な“自分を大事にするスペース”があってもいいのでは? と考えました」(岩本さん)


高校、大学と留学経験のある岩本さんからは、アーティストとコラボしてプロデュースされた創造性を刺激するのにぴったりという海外のオフィスの話もありました。社会人として働いた経験はない学生の立場でありながら、数々の美術がある空間を見てきたからこそ、自由な発想で今までにない空間を生み出せたのかもしれません。

就活をしながら感じた「なぜなんだろう」


インタビューしながらも、岩本さんからは「自分が良いと思うからやっていきたい!」というエネルギーを強く感じます。しかしお話を伺っていくと”好き”の熱意だけではなく、エネルギーの根底にはアート業界を取り巻く環境への危機感もあるようでした。

「アーティストさんたちがすごいなと思うのが、多くの人がアートだけでは食べていけないのに、素敵な作品を生み出し続けているところ。一方でサラリーマンになると自動的にお金が入ってきます。就職活動をする中で、『このギャップってなんなんだろう?』と思いました」(岩本さん)

アートに限らず好きなものをつきつめ、いいものを生み出そうとするほど、お金にはなりにくい世の中。そんな現状をなんとかしたいという熱意を語ってくれました。

これからはWEB上に芸術作品のプラットフォームを作りたい、眠れる美術館や、ラッピングトレインのような移動できる美術館もやってみたい、など“美術”を身近にするためのアイデアはまだまだ尽きないようです。

美術に関心がある人はもちろん、むしろそうでない人にこそ使ってみてほしいという思いが伝わってきます。

今は価値を感じないものだって、自分の人生を大きく変えるかもしれない



はたらける美術館・内部

学生の起業支援事業などを手掛けるGOB Incubation Partners株式会社の協力を得ながら、画廊や建築家などと共にこの空間を作り上げた岩本さん。私が個人的に印象に残ったのは、「無駄なものこそ、自分を変えてくれると思うんです」という言葉でした。

「もともと小さい頃から、私は非日常を大切にしないというか、すごく効率的で余白のない人生を歩んできた気がして。でも、大学で演劇や文化人類学を面白いと思うようになり、無駄なものと自分が勝手に思い込んでいたものが、『自分を変えてくれる』体験を何回もしました。そのことがきっかけとなり、今の自分にとって“無駄”に思えるものでも、ゆくゆくは価値ある宝物になるのでは? と思い始めました」(岩本さん)

必要としていなかったものでも、新たな気づきや出会いを与えてくれるもの。美術のように“よく分からない”ものでも、一度ふれてみることで感じる何かに出会えるかもしれません。

はたらける美術館 概要
■料 金  個人利用 1時間:1,500円(オープン特別価格。定価2,000円)
      グループ利用 1時間:5,000円(オープン特別価格。定価7,000円)
■アクセス 都営地下鉄大江戸線「西新宿5丁目」駅 A2番出口より徒歩6分
■住 所  東京都渋谷区本町4-41-13
■開館時間 平日・土日の7時~20時 (火曜日のみ休館)
■TEL  03-6276-1715
■利用方法 Webによる事前予約可
■詳 細  はたらける美術館 http://art-housee.com/yoyogi/
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