
みちはら
入善町に古くから住む方々の多くは「ここは何もない場所」だと言います。しかし、何もないからこそ「ある」を作りやすいとも言えます。
入善町にある創業75年の老舗、文房具店「みちはら」も、文字通り"何もない"ところからスタートしました。当時の入善町には、日用品などを扱うお店さえほとんどなかったそうです。
「「みちはら」は、今でこそ文房具店を名乗ってますが、その始まりは雑貨店からでした。先代の父と母がリュックサックを背負って汽車に乗り、富山市までに買い付けに行ったものをお店に並べてたんです」
そう話してくれるのは、二代目店主の道原英克さん。昭和から平成へと時代が変わるなか、店舗規模を変え、取り扱う商品を変え、BtoCだけでなくBtoB事業にも取り組み、経営を進めてきたみちはらは、地域密着型の商いを実践しています。
道原さんが大切にしている考え方は「丁度いい商い」。事業を続けるためにも、時代に合わせて商売のかたちを変えながら、お店に足を運んでくれるお客さんや自分の生活も大切にする。そんなバランスをどうやって取り続けるか? 道原さんが取り組んできたのはそんな課題です。
今、「みちはら」は75年の歴史の中でも大きな転換期を迎えています。お店に来てくれるお客さんを増やしたいのです。
地方でも都会でもそうですが、文房具をお店ではなくネット通販で買うことが当たり前になっている今、もう一度お店で文房具を選ぶ人を増やしたい。BtoB事業の基盤ができたからこそ、BtoCの新たな商いへの再挑戦が必要と道原さんは考えています。
その際に大切なのは、既存のやり方に囚われない柔軟な発想力と、入善という町の地域性を踏まえた上で他地域の事例を取り込むチューニング力。ここで生きるのが「若者・よそ者」の視点です。
既存事業は守りながらも、新規事業にも挑戦していく。そのためにも、まずは「町の文房具店がなぜ続いているのか」その経営の裏側を知り、「今の時代だからこそできる新たな文房具店のかたち」について考えることが参加者には求められます。
道原さんは、幼少期から自転車やソリでの商品配達をすることもあったそうですが、家業を本格的に手伝いはじめたのは18歳のとき。2代目として父から引き継いだのは、24歳になってからでした。お店を続けていくなか、地域の変化に合わせて、経営を考えるのは苦難の連続だったと言います。
「昔は、朝の登校時に文房具店に立ち寄る子どもが多かったんです。ただそれが盗難防止を理由に禁止になってしまい、店舗売上もグッと下がりました。その分、学校がまとめて買ってくれるようにはなったのですが…。外商(BtoB)を増やしていったのは、そのときからです」
商いのスタイルが、お客さんへの直接販売から学校や地元企業や、農協などへの納品に変わっていきました。取り扱う商品は事務用品に限らず、インテリアから小中学校で利用される保険・実験用具まで幅広く、「みちはら」の現在の売上は、外商が基盤になっています。そんななか、道原さんの主な業務は、お客さんとの電話やメールのやり取り、納品のための配達です。
「電話でお客さんに呼ばれたらパッと行けるようにいつもしてます。それが、直接仕事の話でなくても(笑)。ちょっとした雑談が、商談につながることもありますしね。友達のような関係性をつくるのは大事ですし、こういう地域での仕事は“顔売り”みたいなところはありますよね。
発注してくれる人のなかには、『同じ地元でがんばってる事業者で、応援したいから』という人もいます。『あなただから買いたい』と思ってもらえるような、そういう人間性みたいなものがなきゃ、ネットショップには敵わないです」
自分が注文を受け、みずから商品を届けに行くところまで関われるのが、この仕事の醍醐味。顔が見えるかたちで納品できるのは、やりがいの一つだと道原さんは話します。「ビビりな性格もあるんですけど、受注から納品まではやはりドキドキします。これまでのお客さんとやり取りが、納品のときに『やっと大成した!』と感じるんです」。
フットワーク軽く、入善町をあちこち動きまわりながら、地域の顔となっているのがまちの文房具店の一面でもあります。
「みちはら」2代目として引き継いでから、少しずつかたちを変えて事業を続けてきた道原さん。これまで、どのような姿勢で仕事と向き合ってきたのでしょうか。
「時代と共に商売のスタイルは変わっていって当然なので、新たな問題が出てきたときは、事業を学んでいくしかないですよね。学び続けること。お店が継続することはもちろんですが、家族と一緒に過ごせる時間をつくったり、自分たちの生活環境が保てる“丁度いい商い”をつくっていけるのが一番いいです」
先にもふれたように、道原さんが一つ気がかりなのは、創業時からずっと一緒に歩んできた店舗が、BtoB事業比率が上がりうまく活用できていないこと。かつてに比べると、お客さんの立ち寄りも大幅に減りました。そのため店舗における次の展開を思案中ですが、そのアイデアに困っていると言います。
「よそから来て、いきなり新しいことを始めるのって大変だと思うんです。ただ、「みちはら」にはこれまでに積み重ねてきた事業があって、それなりに売上もあるわけです。だから、根っこはあるんです。それを基盤にしてもらって、新たな視点を入れ、挑戦してみて、じわじわと変わっていけるといいですよね」
アイデアとしては、「展示方法を変える」「文房具の専門性を高める」「カフェ機能を組み合わせる」など、文房具店としての可能性・選択肢はまだまだ残されているかもしれません。入善町に「まだない」ものを探すことに、新しい事業のヒントが潜んでいるかもしれません。
創業75年の文房具店で、“丁度いい商い”を学びながら事業承継・新規事業立ち上げを目指すよそ者・若者に取り組んでほしいインターン。まずは1日体験からはじめましょう。
募集する職種 | 文房具店店主 |
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おためし転職期間 | 1日(13:00~17:00) ※インターン実施日は、応募後にお互いのスケジュールを考慮しながら調整いたします。 |
給与 | 無し |
任せたい仕事 | 「みちはら」で働く雰囲気をつかむこと ・店長、お客さんとのコミュニケーション ・職場の情報共有(歴史・特徴など) ・外回りへの同行 ・事業アイディアブレスト |
こんな人と働きたい | ・文房具に囲まれて働きたい人 ・町の商店を新規ビジネスで盛り上げたい人 ・老舗文房具店を継ぐ覚悟がある人 |
必須スキル | 無し |
歓迎スキル | 人と接することが好きであること |
採用までの流れ | (書類審査)→(インターン) |
おためし転職参加後は? | (興味のある方は)道原さんと事業承継を前提にお話しを詰めていきます。 ※行政のサポートあり ①起業や新分野進出を支援する実践塾 ②融資や補助金等の資金支援 など |
場所 |
富山県下新川郡入善町入膳3800-6 地図を表示 |