原動力はものづくりへの「愛」
今でこそさまざまな種類のフィッシュレザーを生み出し、業界を超えて注目を集めるtototoですが、魚の皮をフィッシュレザーに加工する技術を確立するまでには、実に3年以上の年月がかかりました。
前例のない「素材」を作るというのは想像を遥かに超えた難しさが伴うもの。魚の生臭さが抜けなかったり、しなやかな質感が出なかったりと、幾度となく失敗を繰り返してきました。
しかし、野口さんは決して諦めることなく、ついにフィッシュレザーの開発に成功します。その原動力には、「ものづくりへの愛」があるといいます。
小さい頃から図工や美術の時間が大好きだったという野口さん。商品の見た目やクオリティはもちろん大事だけれど、野口さんを惹きつけるのは作っている過程の楽しさだといいます。
まだ誰もやっていないことを見つけ、何度も試行錯誤と試作を繰り返す。そしてそれがついに出来上がったときの達成感は昔から変わることがありません。
「今までにやってなかったことをやりたくて、学生の頃からずっと考えたり試したりを繰り返しています。フィッシュレザーの製作が続いているのは、ひとつとして同じ皮がないから。制作の過程でどうしてもコントロールしきれない部分があるので、そこに毎回少しずつ試行錯誤が必要なんです。」
自分の「好き」を仕事にしているがゆえに、モチベーションが下がったり燃え尽きたりすることもないといいます。その好奇心と探究心があったからこそ、何度失敗してもまた立ち上がり、他にはない「価値」を生み出すことができたのです。
今回の体験では、「好き」を原動力に制作を続ける野口さんの元で、新たな価値を生み出すものづくりのエッセンスを学ぶことができます。
人間以外にも配慮したものづくりを
小学生の頃に熱帯魚に心を奪われて以来、魚を鑑賞するのはもちろん、釣りに行ったり、魚を丸ごと捌いたりと、魚との関係を深めていった野口さん。
学生時代から革の研究やものづくりを行なっていた野口さんが、数ある素材の中から「魚の皮」に目をつけたのは必然でした。
他方で、川の土手が工事されて魚がとれなくなったり、大量のゴミが捨てられていたために釣りができなかったりと、魚をめぐるネガティブな経験が積み重なることで、野口さんは人間を中心としたものの考え方に違和感を抱くようになっていったといいます。
そうした「さかな愛」と人間中心主義への違和感は、「人のために作られるものではなく、人以外の要素に配慮したものづくり」というtototoの精神に結実します。
tototoが特に大切にしているのは、ものづくりの製造プロセス。野口さんがまだ魚の皮を研究していた頃、革のなめし加工はとても化学的だという事実に辿り着いたことがきっかけでした。
革の工場や研究所に行って加工の話を聞いていると、基本的に勧められるのは硫酸やクロムなどのいわゆる劇薬。効率もいいし、簡単に作ることができるため、現在でも8割近くの革メーカーはこの方法を採用しているそうです。
しかし、化学薬品でなめした革製品は、焼却すると酸素と結びついて有害物質を排出してしまう。そこで、野口さんは見せかけではなく、本当の意味で環境にやさしい製造プロセスを自分自身で見つけることを決意。苦心の末、可能な限り環境負荷の少ない自然由来の製法でフィッシュレザーを完成させるに至りました。
その後、SDGsやサスティナビリティへの世界的な関心の高まりが追い風となり、その誠実なものづくりがメディアや他の企業から注目されることが増えてきたといいます。まさに時代がtototoに追いついて来たといえるでしょう。
「私にとって“良いプロダクト”は、長く使ってもらえるもの、そして捨てられた先のことまで考えられているものです。」
誠実な態度で「持続可能なものづくり」を行うtototoで、これからの時代に求められるものづくりへの考え方を学びましょう。
男性 にしだ