廃れさせないために、発信する。
そもそも左官の魅力って、どんなところにあるのでしょうか。
大きくはその機能性とデザイン性にあると、原田さんは話してくれました。
漆喰や土壁は塗ると壁自体が湿気を吸ったり、空気を綺麗にするなど、
室内環境を整えてくれる効果があると言います。
そしてデザイン面の大きなポイントは、人の手でつくられること。
職人自らが技を駆使して模様をつけることで、
既製品にはないオリジナルな壁に仕上げられるといった利点があります。
最近でこそ、手仕事の魅力が再注目されてきていますが、
一時期はクロスやパネルにその座を奪われてしまったと言います。
「左官の技術は覚えるのに時間がかかる。覚えることだけに一生懸命で10年経っても、
その技術はいらなくなったよという可能性もあるわけです。
そうならないために、自分から良さをPRすることが大事だし、
昔ながらの漆喰をこんな風に変えたら
今のインテリアにも合うんじゃないかと提案することも大事。
覚えた技術をどう活かすかがこれからの職人にとって必要だと思います。」
その言葉を裏付けるように、
原田左官工業所では他業種とのコラボレーションなども意欲的に行っています。
音響に対して良い効果があると言われる漆喰を使った
「漆喰スピーカー」もその中のひとつ。
オーディオの設計制作を行う会社とのコラボレーションから生まれました。
技術×個性が、職人としての強みになる。
これからの職人に求められるのは
「スペシャリティな人材であること」だと原田さんは語ります。
そのために必要なのは技術の「幅」と「深さ」。
左官の中でもセメントや漆喰といった一通りの仕事に対応ができ、
かつ「この分野なら他の人に負けない」という秀でた部分を持つことで、
現場やお客様から求められる職人になれると、原田さんは考えています。
伝統の技術に自身のバックボーンや個性を掛け合わせることで、
変えの利かない人材になる。
もちろん、職人としての仕事の質を保つことは大前提のハナシ。
これだけ聞くと、思わず「大変そう…」と尻込みしそうになりますが、
先輩職人の方々にリアルな話を聞けば、実践するための糸口が見つかるかもしれません。
原田左官工業所には60名ほどの職人さんがおり、別業種からの転職の方も多いのだとか。
そんな中でも、デザイン学校出身の人は壁を塗る際のデザインセンスに優れていたり、
出版業界で勤めていた経歴を持つ人はお客様との対応に定評があったりと、
職人さんごとに得意分野があると言います。
また「女性の感性を生かした仕事をしてもらえば活躍の場は沢山ある」という考えから、
原田左官工業所では積極的に女性の職人さんを採用してきました。
女性視点で口紅を材料に加えた漆喰を開発したり、
ハラダサカンレディースという女性左官チームをつくったりと精力的に活躍されています。
先輩職人の実際の働き方について気になることはどんどん質問しながら、
個性を活かした働き方のリアルにふれてみましょう。
体を動かして知る、職人仕事の魅力と奥深さ。
今回の旅のスタートは、左官塗り体験から。
建築現場でも使われる左官材料を塗って、直して、こねて。
実際の職人さん達の練習用の壁を使い、壁ができていく様子を体感しながら、
左官の面白さと一人前になるまで10年はかかると言われる
職人技の奥深さを知ることができます。
その後は、左官の技術とこれからの左官についての話を伺えます。
手仕事を身につけ、自分の個性とどう掛け合わせていくか。
そしてどうPRしていくか。
伝統を継承しながら、枠にとらわれない提案を続けてきた原田左官工業所ならではの話は、
きっとどの分野で働く方にも響くことがあるはずです。
体験スケジュール及び内容
時間 | 行程 | 体験内容 |
12:50 | 原田左官工業所集合 | |
13:00 | 仕事体験
(左官体験/下地作り) | ・手順の説明
・養生・材料準備
・下地作り |
14:00 | 仕事体験
(左官体験/仕上げ) | ・手順の説明
・仕上げ作業 |
15:00 | 仕事の説明 | 左官の技術と現代の左官について
・これからも左官を続けていくために
・スペシャリティ人材になる方法 |
16:00 | ディスカッション | これからの時代の左官について
・手仕事を身に付けたうえでどう生きるか
・自らPRすることが大事 |
17:00 | 仕事旅行終了! | |