Chapter1:ニンゲンなんてむいてけば消える玉ねぎのようなもの
「では、私はその人にひたすら玉ねぎを渡し続けるだけでいいんですね?」
有働あぐりは念を押すようにそう尋ねた。「社長」を名乗るその男は大きくうなずく。若干オーバーなリアクションだ。
「ソデス。是非お願いしますデス。玉ねぎパスする人、今だれもいない。私たちとても困っておりますデス」
ここは新宿にあるインド料理専門店。エスニックや各国料理の激戦区である歌舞伎町界隈でも、それなりに繁盛している店に入るだろう。
あぐりは仕事の面接でここを訪れた。
業務内容は「玉ねぎを超高速で刻む神技職人の補佐」。「シェフに玉ねぎを渡すだけ」とはちょっとありえないようなミッションであるが、世に言う簡単なお仕事のようだ。
彼女はいわゆるフリーターではない。その肩書きは「転職家」。
解説しよ...
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