2016年07月08日更新

VRで暮らしや働き方はどう変わる?―「カンヌライオンズ2016」に行ってみたvol.3

「カンヌライオンズ 2016」レポート3回目です。これまでの話の流れを知りたい方は以下もあわせてお読みください。

★世界のビッグなアイデア全員集合!クリエイティブ文化祭「カンヌライオンズ2016」に行ってみた vol.1
★人工知能でここまでの“仕事”ができる時代に—「カンヌ・ライオンズ2016」に行ってみたvol.2

ダンスするようにアニメを描く


今日はVR(バーチャルリアリティ)のお話を。前回テーマにしたAI(人口知能)と同様、VRに関しても色んなニュースが毎日のように流れてきますね。ついこのあいだも「おもらしの疑似体験ができる装置」が話題になってました。

VRと言えばゲームや映画といったエンタメ分野で活躍する技術というイメージが強いです。ソニーやサムスンなどもVR対応のゲーム機に力を入れているようです。

しかし、昨今では医療をはじめとする様々な生活シーンにこの技術を活用することへの期待も高まっています。「臨場感たっぷりの360度映像を体験できる」だけがVRではない ということですね。

今年のカンヌライオンズでも、そういった意味での興味深いプロジェクトをいくつか見ることができました。少しご紹介してみたいと思います。

お時間のある方はまずこのムービーをご覧になるとよいかも。5分くらいありますが「一見の価値あり」と思います。VRの技術を使うと、こんな風に絵を描けるようになるんですね(冒頭写真)。



カンヌでは、ここに登場するグレン・キーンさんというアニメ作家のトークを聴くことができました(googleセミナー)。「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」といったディズニー映画のキャラクターデザインで知られる著名なアニメーターです。

この動画でも見られるような、VR装置を使って3次元キャラを描くパフォーマンスも現地で披露してくれたのですが、これがとても面白かった。無限の奥行きを持つバーチャル空間が“キャンバス”になっているのです。

VRはアーティスト(画家やイラストレーター、漫画家etc)の制作スタイルやアウトプットも変えていくかもしれません。

グレンさんも言っているように、「平面(主に紙)はそこに表現をするクリエイターにとって、大きな制約」でもあります。「キャラクターになりきって描いて行く作業の中では、ときにそれがフラストレーションになることもある」とか。

しかし、VRはそういった制約から人を解放し「僕たちを自由にしてくれる」とグレンさんは語っています。

約1万5000年前に描かれたラスコー壁画の時代から、人は絵を平面の上に描いてきました。その制約の中で立体感を表現するための様々な技法も編み出してきました。

多くの美術作家や漫画家がPC(デジタルソフト)で絵を描くようになった現在でも、その意味では基本ラスコーの頃とそんなに変わらないとも言えます。

しかし、いまやそんな常識も壊れようとしている。VRは絵画表現を2次元のフレームから解放するかもしれない。そう考えると、なんだかスゴい気もします。


サムスンは会場のVR体験ブースに力を入れていた

臨場感あふれるVRゲームの制作となると、マンパワーや資金もそれなりに必要となるため個人のクリエイターには難しそうだと思えますが、ソフトが改良され体験側の環境がもっと整えば、VR空間に描かれた“漫画”や“絵本”なども増えてくるかもしれません。

いままでなら想像もできないようなスタイルの「ものづくり」が誕生する可能性もあります。

このムービーは、「絵を描くというジャンルにおける働き方がこうなっていくかも?」という未来を示唆するドキュメントとしても興味深く見ることができます。

前半では机に座りペンを持って紙に立ち向かっているのが、後半ではまるで“ダンス”するかのように作家が空間と戯れながら描いて行く。その対比がわかりやすく描かれています。

そしてこういった働き方の変化は、必ずしも「絵描き」だけに起こるのではなく、ほかの業種にも様々な影響を及ぼすのでは? と想像することもできます。

つい20年前まで我々は、PCの前に座ってパチパチやることが「仕事になる」人がこんなに増えるとは思っていませんでした。その意味では働き方や暮らしに再び劇的な変化が起こっても不思議ではないと言えるでしょう。

報道や教育の現場もバーチャル化していく?


冒頭でも述べたように、VRの技術は報道や教育など、様々なジャンルへの応用が考えられているようです。今年のカンヌでも色んなプロジェクトを目にすることができました。

今日はエンタメ以外のもので3つ挙げてみましょう。

簡単な解説をつけますので、関心があるものだけでもご覧いただいて、話のネタにしたり企画など仕事のヒントにしていただければと思います。

★ニューヨークタイムズ「The Displaced」



「ニューヨークタイムズ」によるVRドキュメンタリー。ヘッドマウントがない場合、スマホやPCの画面を色んな方向に動かしながら見てください。ウクライナ、南スーダン、シリアの3人の子供にフォーカスし、故郷を追われた彼らのストーリーを疑似体験することができます。戦闘で破壊された家や援助物資投下のシーンなど、360°映像で見ると一層生々しく浮かび上がって来る世界の現在。


★ロッキードマーティン「‪The Field Trip To Mars」



航空機や宇宙船を製造するロッキードマーティン社は、将来的に人を火星へと送り出す技術を開発したいと思っている。その最初の世代(子供たち)をインスパイアすべく、彼らのスクールバスでVRを用いた火星ショーを行いました。車窓から見える火星の風景に、子供たちが喜んで絶叫しています。VRにつきもののヘッドマウントも不要。


★サムスン「Bed time VR stories」



お母さんが出張などで忙しく、子供と夜一緒にいられないことも多い家庭。絵本を読み聞かせる時間も十分に取れないようです。でも、このVRコンテンツなら、離れた場所にいてもバーチャル空間で一緒に物語を楽しむことができます。


VRを用いた面白いプロジェクト自体は、数年前からちょくちょく目にしていました。ジェットコースターなんてVRでやると酔うほどの体験ですし、「進撃の巨人展」のVRもコワかったですねー。

しかし、今年は「VR元年」とも言われ、世界同時多発的にそっち関連が俄然盛り上がってきたのは、もしかするとこういったエンタメ系以外のプロジェクトも増えてきたからかもしれません。カードボードやハコスコなど、安価で手軽にVR体験ができる“デバイス”も普及してきましたしね。

記事:河尻亨一(仕事旅行社キュレーター/銀河ライター/東北芸術工科大学客員教授)
連載もの: 2016年07月08日更新

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